テキサス州防衛隊

テキサス州防衛隊
Texas State Guard
テキサス州防衛隊の部隊章
創設1871年
上級部隊テキサス州軍(英語版)
基地アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 テキサス州オースティンキャンプ・マブリー(英語版)
モットー「やり遂げる」(Equal To The Task)
最高司令官たる州知事、グレッグ・アボット

テキサス州防衛隊(Texas State Guard, TXSG)は、テキサス州軍(英語版)(Texas Military Forces)を構成する3つの部門のうちの1つである。他の2部門(テキサス陸軍州兵(英語版)テキサス空軍州兵(英語版))と同様、防衛隊はテキサス州知事の指揮下にあり、また知事が任命した州兵総監 (State adjutant generalにより監督される。

防衛隊の任務は、有事の際に州当局および地方自治体に即応可能な軍事力を提供すること、行政当局に対する防衛援護の一環として国土安全保障および社会奉仕を担うこと、必要に応じて陸軍州兵および空軍州兵を増強することである。

本部はテキサス州オースティンのキャンプ・マブリー(英語版)内に設置されている。合衆国法典第32編およびテキサス州政府法典第431章のもと、防衛隊は州民兵(state militia)として活動している。

概要

テキサス州防衛隊は、アメリカ合衆国における州防衛軍の1つである。有事におけるテキサス州軍および行政当局への支援・増強、および平時における州兵組織および地方自治体に対する支援を任務とする。防衛隊は連邦軍の指揮系統から完全に切り離されており、連邦政府の指揮下に入ることがない純粋な州政府機関である。

防衛隊は6個民事連隊(Civil Affairs Regiment)、2個航空隊(Air Wing)、1個医務旅団(Medical Brigade)、1個水上連隊(Maritime Regiment)から構成される。

入隊時の階級は連邦軍勤務時の階級のほか、民間で受けた教育の程度によって決定される。軍での勤務や予備役将校訓練課程への参加経験がない場合、入隊時に基礎適応訓練(Basic Orientation Training, BOT)を受ける必要がある。防衛隊員の日給は階級に関わらず一定で、州知事の命令による出動および2008年以降開始された必須訓練への参加日数に対し支払われる。

基本的な組織構造や階級等の制度はいずれも連邦軍と同様である。任務に当たる際には各部門の規定に従いテキサス州軍の制服を着用する。陸軍および空軍州兵の隊員と同様、防衛隊員にも州政府による勲章・記章等を受章する権利がある。例えば、2005年のハリケーン・カトリーナおよびハリケーン・リタ上陸に際し出動した防衛隊員は州知事殊勲部隊章(Governor's Unit Citation)を受章している。

歴史

テキサス州防衛隊の起源は、スティーブン・オースティンが発足させた植民地民兵まで遡ることができる。1823年2月18日、メキシコ帝国皇帝アグスティン1世は、最初の非スペイン系入植指導者となったオースティンに対し民兵組織の結成を許可した[1]。オースティンには中佐の階級が与えられ、その他の士官は入植者らによる投票で選出した。この直後、かねてより敵対的で入植者らとの小競り合いも起こしていたインディアン部族との戦闘があった。1827年、フレドニアンの反乱(英語版)が勃発すると、オースティンの民兵隊はメキシコ政府からの招集に応じて鎮圧に参加した。

1835年、テキサス各地に存在した全ての民兵組織はサミュエル・ヒューストン将軍のもとテキサス共和国暫定政府指揮下の軍組織として統合された。1836年に共和国が独立すると、この軍組織は正式にテキサス共和国陸軍(Army of the Republic of Texas)として整理された。1845年のテキサス併合を経て共和国はテキサス州となり、共和国陸軍はアメリカ陸軍に合流した。ただし、この時に一部の民兵組織は別途活動を続けた。1861年、テキサス州がアメリカ連合国に与すると、活動を続けていた民兵組織に加えて新たに結成された民兵連隊などが結集し、連合国軍に加わり戦った。

1871年、いわゆるレコンストラクションの過程において、テキサス州各地で個別に活動を続けていた民兵組織が防衛隊(State Guard)として統合・再編される。1903年には連邦政府の指揮下にあるテキサス陸軍州兵(英語版)が設置され、従来の民兵組織の役割を引き継いだ[2]第一次世界大戦中に州兵の動員が進められた際にも、州兵に代わる州軍組織の設置を必要とする意見が連邦議会に提出されたことがある。これにより戦時中は自衛のための軍組織を結成することが認められた。テキサス州議会でもこれに備えた法案を通過させたものの、結局この時点では軍組織の設置自体は行わなかった。

防衛隊の再結成は、第二次世界大戦勃発後の1941年のことであった。同年2月10日、テキサス州議会は防衛法(Defense Act, HB 45)を承認し、知事による署名が行われた。これにより再結成された防衛隊は州軍務局長J.ワット・ページ陸軍准将(J. Watt Page)の指揮下に入った。同年中に防衛隊の規模は17,497名まで拡大し、これに先立ち連邦政府が招集した陸軍州兵の規模(11,633名)を上回った。防衛隊には50個独立大隊が所属し、各大隊は本部と複数の中隊から構成された。中隊数は一定ではなかった。

民兵組織の活動を認める連邦法は1947年7月25日に失効した。同年、テキサス州議会は戦力保持のためにテキサス州防衛隊予備隊(Texas State Guard Reserve Corps)を発足させた。予備隊は1948年1月から業務を開始し、1955年に連邦議会が防衛隊の活動を改めて認めた後も10年間維持された。1965年8月30日、第59回州議会にて防衛隊を再建するための法案が通過し、これに伴い予備隊は解散した。

当初、防衛隊の編成上の基本単位は独立大隊だったが、後には連隊を基本単位として再編成され、旅団級部隊もいくつか編成されるようになった。また、当初は歩兵および国内保安部隊が主な編成だったが、1970年代初頭からは憲兵組織として再編成が行われた。その後、6個憲兵隊(Military Police Group)が設置され、州公安局(Texas Department of Public Safety)が定めた管区を担当した。

1979年、第7憲兵隊が設置され、州東部に展開する大隊の指揮統制に割り当てられた。1980年には再編成が行われ、第8憲兵隊(サンアントニオ)と第9憲兵隊(ダラス)が設置された。当初の6個憲兵隊はフォートワースヒューストンリオグランデバレー(英語版)、ミッドランド、ラボック、オースティンにそれぞれ本部を置いていた。

1993年、防衛隊は連隊を基本単位とする新編成に移行し、これに伴い従来の部隊名は全て消滅した。第1連隊(サンアントニオ)、第2連隊(オースティン)、第4連隊(フォートワース)、第8連隊(ヒューストン)、第19連隊(ダラス)、第39連隊(ラボック)の6個連隊が設置された。1993年7月、キリーンで催された州防衛協会(Texas State Guard Association)の大会において、防衛隊の新たな連隊旗が発表された。連隊が独自の記章類を制定したのは第二次世界大戦以来のことであった。1995年3月、第39連隊から抽出した戦力によって7つ目の連隊となる第9連隊がエルパソに設置されたが、1999年には第39連隊に再統合されている[3]

制服

防衛隊員が主に着用する州軍の制服はおおむねアメリカ陸軍のACU野戦服と同様だが、徽章類など細部が異なる。水上連隊においてはアメリカ海兵隊で採用されているMARPAT(英語版)デザートパターンの迷彩が施された野戦服を着用する。航空隊員はアメリカ空軍ABU野戦服(英語版)を着用する。医務旅団の将兵も州軍の制服を着用するが、任務上の必要に応じて連邦軍の指揮下に入ることが認められており、その場合は連邦軍将兵と同様の制服を着用する。

  • 医務旅団所属の少佐。左胸に防衛隊への所属を示すネームテープを着用している。また、右腕には州旗の記章を取り付けている。
    医務旅団所属の少佐。左胸に防衛隊への所属を示すネームテープを着用している。また、右腕には州旗の記章を取り付けている。
  • 左の下士官はACU野戦服、左の下士官はABU野戦服を着用している。
    左の下士官はACU野戦服、左の下士官はABU野戦服を着用している。
  • 水上連隊の隊員。MARPATデザートパターン迷彩の野戦服を着用している。
    水上連隊の隊員。MARPATデザートパターン迷彩の野戦服を着用している。
  • 正装した防衛隊参謀長チャールズ・ミラー准将(右)。隣は民間航空パトロールテキサス飛行隊(英語版)のドナルド・プリンス大佐。
    正装した防衛隊参謀長チャールズ・ミラー准将(右)。隣は民間航空パトロールテキサス飛行隊(英語版)のドナルド・プリンス大佐。
  • 防衛隊のベレーフラッシュ。
    防衛隊のベレーフラッシュ。

部隊章

  • 防衛隊本部
    防衛隊本部
  • 第1連隊
    第1連隊
  • 第2連隊
    第2連隊
  • 第4連隊
    第4連隊
  • 第8連隊
    第8連隊
  • 第19連隊
    第19連隊
  • 第39連隊
    第39連隊
  • 医務旅団
    医務旅団

編成

演習中の防衛隊第4連隊第3大隊。先頭はゲイリー・シャーマン少佐(Gary Sherman)
洪水によって水源地が汚染された際、無料飲料水の配布を行う防衛隊員
ブランコ川付近で捜索活動を行う防衛隊員

指導部(Command Group)

  • テキサス州防衛隊本部(Texas State Guard Headquarter)

工兵隊(Engineer Group)

  • 本部付工兵隊(HQ Engineer Group)

陸軍部隊(Army Component)

  • 本部付陸軍部隊(HQ Army Component)
  • 第1連隊「アラモ・ガーズ」(1st Regiment (Alamo Guards))
  • 第2連隊「トラヴィス・ライフルズ」(2nd Regiment (Travis Rifles))
  • 第4連隊「パンサーシティー・フェンシブルス」(4th Regiment (Panther City Fencibles) )
  • 第8連隊「テリーズ・テキサス・レンジャーズ」(8th Regiment (Terry's Texas Rangers))
  • 第19連隊「パーソンズ・ブリゲード」(19th Regiment (Parson's Brigade))
  • 第39混成連隊「ラフネックス」(39th Composite Regiment (Roughnecks))

空軍部隊(Air Component)

防衛隊の空軍部隊は1996年に編成された。空軍州兵および行政当局への支援を行う[4]

  • 本部付航空司令部(HQ Air Component Command)
  • 本部付第4航空隊(HQ 4th Air Wing)
    • 第417航空支援グループ(417th Air Support Group)
    • 第454航空支援グループ(454th Air Support Group)
    • 第436航空支援グループ(436th Air Support Group)
    • 第482航空支援グループ(482d Air Support Group)
  • 本部付第5航空隊(HQ 5th Air Wing)
第401航空支援グループ(401st Air Support Group)
第447航空支援グループ(447th Air Support Group)
第449航空支援グループ(449th Air Support Group)

医務旅団(Medical Brigade)

  • 本部付テキサス州防衛隊医務旅団「テキサス・メディカル・レンジャーズ」(HQ Texas State Guard Medical Brigade (Texas Medical Rangers))[5]
  • オースティン医務中隊(Austin Medical Company)
  • コンロー医務支隊(Conroe Medical Detachment)
  • コーパスクリスティ医務中隊(Corpus Christi Medical Company)
  • ダラス・フォートワース医務対応グループ(Dallas-Fort Worth Medical Response Group)
  • ガルベストン医務対応グループ(Galveston Medical Response Group)
  • ヒル・カントリー医務中隊(Hill Country Medical Company)
  • ヒューストン医務対応グループ(Houston Medical Response Group)
  • リオグランデバレー医務グループ(Rio Grande Valley Medical Group)
  • サンアントニオ・アラモ医務対応グループ(San Antonio - Alamo Medical Response Group)
  • テンプル医務対応グループ(Temple Medical Response Group)
  • タイラー医務対応グループ(Tyler Medical Response Group)
  • ウィチタフォールズ医務中隊(Wichita Falls Medical Company)

水上連隊(Maritime Regiment)

沿岸部や河川部での支援活動を行うべく2006年に設置された。狩猟監視員や沿岸警備隊の活動も支援している[6]

  • 連隊本部(Regimental Headquarter)
  • 第1大隊(1st Battalion)
  • 第2大隊(2nd Battalion)
  • 第3大隊(3rd Battalion)
  • 混成工兵隊(Combined Engineering Command)
  • 連隊軍楽隊(Regimental Band)

脚注

  1. ^ Bruce L. Brager. “The Texas Militia: National and Local Implications”. Institute of Land Warfare. 2016年1月30日閲覧。
  2. ^ “TEXAS NATIONAL GUARD”. Texas State Historical Association. 2016年1月30日閲覧。
  3. ^ “Brief History of the Texas State Guard”. The Texas State Guard Nonprofit Association. 2016年1月30日閲覧。
  4. ^ “Texas State Guard Fact Sheet No. 04-11”. Texas State Guard. 2016年1月30日閲覧。
  5. ^ “Texas State Guard Fact Sheet No. 05-11”. Texas State Guard. 2016年1月30日閲覧。
  6. ^ “Texas State Guard Fact Sheet No. 06-11”. Texas State Guard. 2016年1月30日閲覧。

外部リンク

  • Texas State Guard - テキサス州防衛隊公式サイト
  • Texas Military Department - テキサス州軍公式サイト
典拠管理データベース ウィキデータを編集
全般
  • VIAF
国立図書館
  • アメリカ