南海11000系電車

曖昧さ回避 この項目では、南海高野線用の特急形車両について説明しています。南海本線用の特急・急行形車両については「南海11001系電車」をご覧ください。
南海11000系電車
11000系電車(新今宮駅にて)
基本情報
運用者 南海電気鉄道
製造所 東急車輛製造
製造年 1992年
製造数 1編成4両
運用開始 1992年11月10日
投入先 高野線(難波 - 橋本間)・泉北高速鉄道線
主要諸元
編成 4両編成(全電動車
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1500V 架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 248人
車体 普通鋼
台車 S型ミンデン式ダイレクトマウント空気ばね台車
住友金属工業製FS-552形
主電動機 直流直巻電動機
MB-3072-B 375V
主電動機出力 145kW×4
駆動方式 WNドライブ
歯車比 83:18 (4.61)
編成出力 2,320 kW
制御装置 抵抗制御
日立製作所製VMC-HTB-20H形
制動装置 発電ブレーキ併用全電気指令式電磁直通空気ブレーキ
保安装置 南海型ATS
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南海11000系電車(なんかい11000けいでんしゃ)は、1992年平成4年)11月10日に営業運転を開始した南海電気鉄道特急形車両である。

車両概説

1992年11月10日に運行を開始した高野線難波駅 - 橋本駅間の特急りんかん」用の車両として4両編成1本が東急車輛製造で製造された。10000系4次車(特急「サザン」増結用中間車)をベースとしている。2015年12月5日からは難波駅 - 泉北高速鉄道和泉中央駅間を結ぶ特急「泉北ライナー」としても運転されている。

車体

10000系を基本とした20m級の普通鋼製車体で、前頭部は同系のデザインを踏襲しつつ半流線形とし、スピード感を持たせている。前面貫通扉は非常用であったが、1999年(平成11年)の31000系登場に合わせて、橋本方先頭車(モハ11201形)に幌取り付けアダプターを設置し、31000系との併結時のみ車内からの通り抜けが可能となった[1]。側面窓は大型複層ガラスで、連続窓風としている。乗降扉は折り戸で、各車片側1か所備える。行先・種別表示器2000系と同型の種別行先個別タイプで、各車の乗降扉寄りに設置している。

落成当初のカラーデザインは、10000系に準じたメタリックシルバー塗装にオレンジと青の帯()であった。その後の変遷については後述する。

なお2021年1月には、前照灯シールドビームからLEDに変更している[2]

車内

車内

客室照明はスリット入り半間接照明で、荷棚下には南海伝統の読書灯を備えている。座席はフリーストップ式回転リクライニングシートで、センターアームレスト(中ひじ掛け)やひじ掛け内蔵テーブルのほか、足元には跳ね上げ式フットレストを備えている。座席間隔(シートピッチ)は30000系より30mm拡大した1,030mmとしている。車内案内表示装置は10000系と同型の3色LED式、自動案内放送は「りんかん」運用時のみで、「泉北ライナー」には対応していないため車掌による肉声での放送となる。

モハ11301形には車椅子スペース、モハ11101形にはトイレと洗面所を設けている。編成中間にはフリースペース及びサービスコーナーがあり、かつては公衆電話や喫煙ルームが設けられていたが現在は撤去・閉鎖されている。

2014年以降には、天井照明と読書灯を昼白色LEDに変更し、サービスレベルの向上が図られている[2]

主要機器

制御装置は30000系と同等の抵抗制御日立製作所製 VMC-HTB-20H)、ブレーキ装置は電気指令式台車S型ミンデン式空気ばね台車を採用している。電動機出力は145kWで全電動車編成を組んでいるが、ズームカーではないため橋本駅以南の高野線山岳区間には入線できない。

補助電源装置には、絶縁形GTOコンバータ/トランジスタインバータ装置(出力75kVA)を採用している。システムはDC-DCコンバータ部とインバータ部で構成され、コンバータ部で直流1500Vから安定した直流330Vを出力、インバータ部で直流330Vを三相交流220Vに変換する。冷房装置は、コンバータからの直流330Vを入力する、インバータ制御方式のユニットクーラーを各車3基ずつ搭載している[注 1]

このほか警笛類は、本系列より従来の空気式に加え、電気式の警笛も併設された[注 2]

1999年には30000系・31000系との併結対応改造として、制御装置の特性を変更している[1]

車両カラーデザインの変遷

この節ではを扱っています。閲覧環境によっては、色が適切に表示されていない場合があります。
  • 1999年(平成11年):31000系デビューに合わせて、白地に赤帯()の塗装に変更。「りんかん」8両編成運転に備え、高野線特急車の塗装を統一。
  • 2016年(平成28年):「泉北ライナー」用として、赤帯部分を金色にラッピング()。ロゴ部分はグラデーションとした[3]
  • 2017年(平成29年)
    • 1月:「泉北ライナー」運用から一時撤退。「りんかん」運用復帰に伴い、ラッピングを剥離()。
    • 8月:「泉北ライナー」増発に伴い、泉北12000系に準じた金色ベースの2代目ラッピング()を貼り付け[4]
  • 2018年(平成30年)
    • 1月:30000系の検査入場による「りんかん」運用復帰に伴い、ラッピングを剥離()。
    • 2月:30000系30001編成の営業運転復帰に伴い、デザインを一部変更した「泉北ライナー」3代目ラッピング()を貼り付け。2代目ラッピングと比べ、前面や側面の青帯と泉北ライナーロゴが省略されているなどの差異が見られる[5]
以降、毎年1月から2月の「りんかん」運用時(高野線特急車の定期検査時)には「泉北ライナー」ラッピングを剥離。
  • 2022年(令和4年)
    • 11月3日:50000系の「泉北ライナー」運用開始による「りんかん」運用復帰に伴い、ラッピングを剥離([6]
  • 2023年(令和5年)
    • 10月1日:「泉北ライナー」運用に50000系と入れ替わり復帰。ラッピングは省略され、扉横に識別ステッカーのみを貼り付け([7]
  • 登場時の塗装 (社章・「NANKAI」文字はロゴ制定前のもの)
    登場時の塗装
    (社章・「NANKAI」文字はロゴ制定前のもの)
  • 高野線特急車塗装
    高野線特急車塗装
  • 「泉北ライナー」運用開始当初(ロゴ入り小型ステッカーを貼り付け)
    「泉北ライナー」運用開始当初(ロゴ入り小型ステッカーを貼り付け)
  • 「泉北ライナー」初代ラッピング
    「泉北ライナー」初代ラッピング
  • 「泉北ライナー」2代目ラッピング
    「泉北ライナー」2代目ラッピング
  • 「泉北ライナー」3代目ラッピング
    「泉北ライナー」3代目ラッピング

形式・編成

電動車方式で、難波方先頭車がモハ11001形、難波方中間車がモハ11301形、橋本方中間車がモハ11101形、橋本方先頭車がモハ11201形となっている。

編成は以下の通り。

 
← 難波
橋本・和泉中央 →
 
  ◆   ◆      
形式 モハ11001
(Mc1)
モハ11301
(M2)
モハ11101
(M1)
モハ11201
(Mc2)
竣工[8]
車両番号 11001 11301 11101 11201 1992年8月31日
定員 60人 64人 64人 60人
設備   車椅子スペース
サービスコーナー
トイレ・洗面所
  • モハ11001形
    モハ11001形
  • モハ11301形
    モハ11301形
  • モハ11101形
    モハ11101形
  • モハ11201形
    モハ11201形

運用

本系列は高野線山岳区間に乗り入れ可能なズームカーではないため、高野線平坦区間の難波 - 橋本間を結ぶ特急「りんかん」(一部は「こうや」と併結)に長らく運用されてきた。

2015年12月5日のダイヤ改正からは難波駅 - 泉北高速鉄道和泉中央駅間を結ぶ特急「泉北ライナー」が新設され、本系列が運用されるようになった。その後、泉北高速鉄道が自社発注の特急車12000系(20番台)を導入したことから、2017年1月27日より一旦「りんかん」運用に戻っていたが、同年8月26日のダイヤ改正で「泉北ライナー」が増発され2編成運用体制となることから、再び「泉北ライナー」に運用されるようになった。

これ以降、毎年1月から2月の冬季閑散期の車両定期検査期間中には、本系列が「りんかん」運用に復帰し、「泉北ライナー」運用を南海12000系(サザン・プレミアム)で代走するのが通例となった。なお、11000系の検査時には「りんかん」に30000系・31000系を充当する。

南海本線には原則入線しない。ただし、営業運転開始前に性能試運転のため入線した実績がある。

30000系の脱線事故に伴い、2022年11月3日から本系列は「りんかん」運用に復帰した。「泉北ライナー」運用へは、予備編成に余裕のあった50000系が投入された[6]。30000系の復帰後も暫く代走体制が継続されたが、2023年10月1日より本系列による「泉北ライナー」運用が再開されている[9]

参考文献

  • 『私鉄車両年鑑2018』
    イカロス出版(2018年5月21日)pp116
  • 南海電鉄車両部車両課「新車ガイド 南海11000系」『鉄道ファン』1992年12月号(通巻380号)、交友社、1992年、78-82頁。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ これは同時期に登場した1000系と共通のシステムである。
  2. ^ これは本系列以降に製造された特急車にも装備されるようになり、30000系についても1999年の更新工事の際に追加装備された。

出典

  1. ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、48頁。
  2. ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、51頁。
  3. ^ “南海11000系に小変化”. railf.jp鉄道ニュース. 鉄道ファン (交友社). (2016年3月8日). https://railf.jp/news/2016/03/08/170000.html 
  4. ^ “南海11000系が“泉北ライナー”カラーに”. railf.jp鉄道ニュース. 鉄道ファン (交友社). (2017年8月30日). https://railf.jp/news/2017/08/30/180000.html 
  5. ^ “南海11000系が“泉北ライナー”運用に復帰”. railf.jp鉄道ニュース. 鉄道ファン (交友社). (2018年2月26日). https://railf.jp/news/2018/02/26/200500.html 
  6. ^ a b “南海11000系が“りんかん”に復帰”. 鉄道ニュース. 鉄道ファン・railf.jp. (2022年11月5日). https://railf.jp/news/2022/11/05/172500.html 
  7. ^ “南海11000系が通常塗装で“泉北ライナー”運用に復帰”. 鉄道ニュース. 鉄道ファン・railf.jp. (2023年10月1日). https://railf.jp/news/2023/10/01/170000.html 
  8. ^ 「南海電気鉄道車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、264頁。
  9. ^ “一部の泉北ライナーの両数変更について” (PDF). 南海電気鉄道 (2023年8月24日). 2023年8月24日閲覧。

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、南海11000系電車に関連するカテゴリがあります。

外部リンク

  • 南海電気鉄道公式サイト
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