定常過程

定常過程(ていじょうかてい、: stationary process)とは、時間や位置によって確率分布が変化しない確率過程を指す。このため、平均や分散も(もしあれば)時間や位置によって変化しない。

例えば、ホワイトノイズは定常的である。しかし、シンバルを鳴らしたときの音は定常的ではなく、時間と共に音が弱まっていく。

定常性(Stationarity)は時系列の解析でも重要であり、時系列データを定常的なものに変換することがよく行われる。例えば、経済的データは季節による変動があったり、価格レベルに依存する。ある定常過程と1つ以上の過程に傾向(トレンド)が認められるとき、これら過程を「傾向定常的; trend stationary」であるという。このようなデータから定常的成分だけを抜き出して分析することを「傾向除去; de-trending」と呼ぶ。

離散時間の定常過程で、標本値も離散的(とりうる値が N 個に限定されている)な場合をベルヌーイ系(Bernoulli scheme)と呼ぶ。N = 2 の場合を特にベルヌーイ過程(Bernoulli process)と呼ぶ。

弱い(広義の)定常性

広義の定常性は信号処理で一般に使われる概念で、弱い定常性(weak-sense stationarity)、広義定常性(wide-sense stationarity)(WSS) あるいは 共分散定常性(covariance stationarity)とも呼ばれる。WSS の無作為過程は1次および2次モーメント(平均と分散)が時間によって変化しない。平均共分散のある狭義の定常過程も WSS である。

従って、連続時間の確率過程 x(t) が WSS であるとき、その平均関数は以下の制約に従う。

1. E { x ( t ) } = m x ( t ) = m x ( t + τ ) τ R {\displaystyle \mathbb {E} \{x(t)\}=m_{x}(t)=m_{x}(t+\tau )\,\,\forall \,\tau \in \mathbb {R} }

また、相関関数は以下の制約に従う。

2. E { x ( t 1 ) x ( t 2 ) } = R x ( t 1 , t 2 ) = R x ( t 1 + τ , t 2 + τ ) = R x ( t 1 t 2 , 0 ) τ R . {\displaystyle \mathbb {E} \{x(t_{1})x(t_{2})\}=R_{x}(t_{1},t_{2})=R_{x}(t_{1}+\tau ,t_{2}+\tau )=R_{x}(t_{1}-t_{2},0)\,\,\forall \,\tau \in \mathbb {R} .}

1つめは、平均関数 mx(t) が定数であることを意味している。2つめは相関関数が t 1 {\displaystyle t_{1}} t 2 {\displaystyle t_{2}} の差にのみ依存し、1変数で表されることを意味している。従って、

R x ( t 1 t 2 , 0 ) {\displaystyle \,\!R_{x}(t_{1}-t_{2},0)\,}

の代わりに次のように記述する。

R x ( τ )  where  τ = t 1 t 2 . {\displaystyle R_{x}(\tau )\,\!{\mbox{ where }}\tau =t_{1}-t_{2}.}

WSS な無作為信号を線型時不変な(LTIフィルタで処理するとき、相関関数を線型写像と考える。2つの引数の差にのみ依存するため、それは巡回演算子であり、その固有関数フーリエ複素指数である。さらに、LTI演算子の固有関数複素指数であり、WSS な無作為信号のLTI処理は非常に扱いやすい。全ての計算は周波数領域で実行できる。このため、WSS 仮定は信号処理アルゴリズムによく使われている。

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