海賊の隠し財宝

海賊の隠し財宝（かいぞくのかくしざいほう）は、海賊がどこかに秘匿したとされる財宝のこと。古くから伝説として語られているに留まらず、実際に発見された事例もある。

概要

海賊が無人島に財宝を隠したという話は人気があり、フィクションの題材にもなっている。一方でカリブ海の海賊たちは略奪品をほぼ平等に分配すといった取り決めの下で海に出て、手に入れた財宝もすぐに女、酒、博打に使い果たしてしまったことで知られている。そのため、海賊の隠し財宝の存在について否定的に語る専門家も多い。

歴史家のマーカス・レディカー（英語版）は海賊が財宝を埋めたという話を否定している^[1]。

クリントン・V・ブラックはいわゆる黄金時代の海賊には略奪品を平等に分配するといった掟が存在し財宝自体も早い段階で金銭や物資への交換がなされただろうから、海賊の財宝話の多くは事実ではない可能性が高いと指摘している^[2]。

トレジャーハンターのロベール・シャルー（英語版）は海賊には財宝の分配に関する取り決めがあったことを提示して、沈没船の財宝などと比べると海賊の隠し財宝というものは金額的にそこまで大きなものではないだろうと指摘している^[3]。

歴史家の別枝達夫は17世紀-18世紀の海賊が人里離れた孤島や海辺に財宝を隠したという話は事実と見て差し支えないと言う^[4]。

別枝は財宝が秘匿される理由をいくつか上げている

1.捕まることを察知した海賊が一時的に基地周辺や馴染みの土地に埋めるもの^[5]。

2.嵐に襲われて孤島に難破した海賊がそこに財宝を埋めるケース^[5]。

3.財宝の分配を嫌った海賊船長が一時的に財宝を秘匿するケース^[5]。

実際に発見された例

バッカニアのロッシュ・ブラジリアーノはキューバの青年の島に財宝を埋蔵したがスペイン人の拷問を受けて銀貨10万枚以上が発掘された^[6]。一般的なバッカニアは、略奪してきた財宝をすぐに使い果たしてしまうことで知られていたので、このような事例は希だった^[6]。

有名な海賊ではキャプテン・キッドことウィリアム・キッドがガーディナー島（英語版）に宝石箱を埋蔵したがすぐに発見されている^[7]。ただし、発見された財宝がキッドの略奪分からして少なかったので、隠し財宝は他にも存在するとの説がある。候補地としては、キッドが立ち寄ったアメリカ東海岸やカリブ海などが挙げられている。

財宝伝説

伝説レベルでは、黒ひげ、ヘンリー・エイヴリー、バーソロミュー・ロバーツなどが財宝をどこかに隠したとされる^[4]。

黒ひげは殺害される前日に部下の男から財宝のありかを尋ねられて「そいつは俺と悪魔しか知らねえ。一番長生きした奴がかねを持っていくのさ^[8]」と答えたという。この話は黒ひげの部下が法廷で証言したもので、この言葉によって財宝伝説が誕生し現代でも財宝探しが行われている^[9]^[10]。

1730年にレユニオン島で処刑された海賊オリビエ・ルバスールは処刑される直前に財宝の在りかが書かれた暗号文を民衆に投げつけたといわれている（フィクションとの指摘も根強い）。ルバスールは仲間の海賊たちと共にノッサ・セニョラ・ド・カボ号を襲撃して一説には海賊史上最大とも試算される4億ドル超の財宝を掠奪した。

ベルナルダン・ナジョン・ド・レスタン（Bernardin Nageon de L’Estang）はインド洋のモーリシャス島に略奪品を秘匿して財宝の在りかを伝える何通かの手紙を自分の甥に送った。手紙は伝わっているものだけで3通あり、そのうち2通がレスタンによるものだと考えられている。

1通目はモーリシャス島のある地点から25歩から30歩進んでB・Nという目印を見つければ宝に辿り着くことができると書いてある。2通目にはレスタンが乗船していたインダス号がモーリシャス島のヴァコア近辺で難破してしまい、B・Nと書いたところにその船の財宝を隠したと書かれている。インドスタン沿岸で起きた戦いでレスタンの手紙などを所持していた海賊船（私掠船）の船長が死亡した際に部下のフリーメイソンの男にレスタンの手紙類が手渡された。3通目の著者はこの男だと考えられている^[11]。

ほかにも、バッカニアのダニエル・モンバールがカリブ海のサン・バルテルミー島に略奪品を秘匿したと伝えられている^[12]。

財宝を探す人々

海賊の財宝を追い求めた多くの冒険家、探検家、トレジャーハンターたちがいる。マルコム・キャンベルはココ島の財宝探しやキャプテン・キッドの財宝が隠されたシナ海の未知の島への遠征（これは途中で中止された）で知られている^[13]^[14]。

クルーズウィルキンス親子は2代に渡ってルバスールの財宝を追っている。

フィクションにおける海賊の宝

海賊が隠した財宝という話はフィクションでよく取り上げられる

小説

宝島
黄金虫

脚注

注釈

出典

^ マーカス・レディカー『海賊たちの黄金時代』2014年。p.Ⅸ
^ クリントン・V・ブラック『カリブ海の海賊たち』1990年。p.44
^ ロベール・シャルー『世界の財宝』1964年。p.69
^ ^a ^b 別枝達夫『キャプテンキッド権力と海賊の奇妙な関係』1965年。p.15
^ ^a ^b ^c 別枝達夫『キャプテンキッド権力と海賊の奇妙な関係』1965年。p.16
^ ^a ^b コーディングリ（2000年）p.93
^ コーディングリ（2000年）p.323
^ チャールズ・ジョンソン『海賊列伝上』p.106
^ 『キャプテン・キッド権力と海賊の奇妙な関係』p.16
^ “特集：カリブ最強の海賊　2006年8月号　ナショナルジオグラフィック”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2024年2月10日閲覧。
^ “Le Butin Letters” (英語). The Cipher Foundation. 2024年2月10日閲覧。
^ “CARIBBEAN – ST BARTHELEMY - only where you have walked have you been” (英語) (2022年3月21日). 2023年11月7日閲覧。
^ https://trove.nla.gov.au/newspaper/article/4438484
^ http://nla.gov.au/nla.news-article63315840