王立国際問題研究所

Chatham House
Royal Institute of International Affairs
設立 1920年
種類 シンクタンク
本部 イギリスの旗 イギリス ロンドン
ウェブサイト www.chathamhouse.org
テンプレートを表示

王立国際問題研究所(おうりつこくさいもんだいけんきゅうじょ、: Royal Institute of International Affairs, 略称:RIIA)は、イギリスシンクタンク。イングランドのケント州チャタムにあるのでチャタム・ハウス(Chatham House)とも呼ばれる。

1920年創設。本部はロンドン[注 1]外交問題評議会の姉妹機関としても知られる。

来歴

マレーシアの首相マハティール・ビン・モハマドは王立国際問題研究所でスピーチを行う(2018年10月2日)
ロビン・ニブレット(英語)(向かって右)とアウンサンスーチー

第一次世界大戦後に開かれたパリ講和会議の期間中に、イギリス代表とアメリカの代表間でアングロ=アメリカによるリーダーシップによって戦後の世界秩序を統治するという構想が提起され、その構想をソフト面から支援するためのシンクタンクを共同で設立することになった[1]。しかし、アメリカが国際連盟に参加しないことが決まり、方針の転換を余儀なくされたために、イギリスは「王立国際問題研究所」、アメリカは「外交問題評議会」と、それぞれ独自にシンクタンクを設けることになった。

初期の王立国際問題研究所は、帝国統治に関する研究グループである「ラウンド・テーブル」のメンバーが中核となり、オックスフォード大学を中枢としてアルフレッド・ミルナーの薫陶を受けた学識経験者によって組織された[1]。やがてアーノルド・J・トインビーが招かれ中心的な役割を果たした。

1932年10月19日にはリットン調査団団長ヴィクター・ブルワー=リットンが、イギリスの外交官、政治家等に対し報告書の内容について講演した[2]

チャタムハウスルール

チャタムハウスルール (英: Chatham House Rule) とは、王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である[5][6]。チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得られた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿する義務を負う(明示的にも黙示的にも明かにしない)というルール(#引用部分を参照)。このルールの適用により、参加者はその所属する組織への配慮や、発言が自らのものとして公表された際の影響を度外視しやすくなるため、進行中の問題や政治的な話題を取り扱う場であっても闊達(かったつ)な議論をもたらすとともに、情報共有の促進が期待される。また、会議全体ではなく、その一部のみへの適用も可能である。このルールは、王立国際問題研究所において1927年に考案され1992年および2002年に改正されたものであるが、その適用は同研究所主催の会議等に限定されるものではなく、英語圏を中心に広く一般に用いられている。

"When a meeting, or part thereof, is held under the Chatham House Rule, participants are free to use the information received, but neither the identity nor the affiliation of the speaker(s), nor that of any other participant, may be revealed".

チャタムハウス賞

チャタムハウス賞(: The Chatham House Prize)は毎年恒例の表彰制度であり、「前年に国際関係の改善に最も重要な貢献をしたとチャタムハウス会員がみなす人物、人々または組織」の顕彰をその趣旨とする[7]

歴代の受賞者

受賞年(年) 氏名・名称 国と地域
2005 ヴィクトル・ユシチェンコ大統領[7] ウクライナの旗 ウクライナ
2006 ジョアキン・アルベルト・シサノ大統領[7] モザンビークの旗 モザンビーク
2007 モーザ・ビント・ナーセル・アル=ミスナド(英語)カタール首長夫人[7] カタールの旗 カタール
2008 ジョン・アジェクム・クフォー大統領[7] ガーナの旗 ガーナ
2009 ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領[8] ブラジルの旗 ブラジル
2010 アブドゥラー・ギュル 大統領[9] トルコの旗 トルコ
2011 アウンサンスーチー ミャンマー反政府首班[10] ミャンマーの旗 ミャンマー
2012 モンセフ・マルズーキラーシド・ガンヌーシー(英語版)大統領[7] チュニジアの旗 チュニジア
2013 ヒラリー・クリントン国務長官[11] アメリカ合衆国の旗 アメリカ
2014 メリンダ・ゲイツ ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同創設者[12] アメリカ合衆国の旗 アメリカ
2015 国境なき医師団[13] スイスの旗 スイス
2016 モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣[14] イランの旗 イラン
ジョン・フォーブズ・ケリー国務長官[14] アメリカ合衆国の旗 アメリカ
2017 フアン・マヌエル・サントス大統領[15][16] コロンビアの旗 コロンビア
2018 ジャーナリスト保護委員会[17] アメリカ合衆国の旗 アメリカ
2019 デイビッド・アッテンボロージュリアン・ヘクター(英語版)[18] イギリスの旗 イギリス
2020 ヒーリー・ポタニ、アイヴィー・カマンガ、レドソン・カピンドゥ、ディンギスワヨ・マディセ、マイケル・テンボ各憲法裁判所判事[19] マラウイの旗 マラウイ
2023 ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領[20] ウクライナの旗 ウクライナ

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 元はピット一族の所有の建築物である。

出典

  1. ^ a b 本田 2005, pp. 268–276.
  2. ^ 加藤陽子 2016, p. 105-106.
  3. ^ “Chatham House Rule” (英語). Chatham House – International Affairs Think Tank (2009年10月2日). 22022-11-11閲覧。
  4. ^ 閲覧
  5. ^ 王立国際問題研究所公式サイト > About us > Chatham House Rule[3][4]{ 2009年10月2日閲覧
  6. ^ “Chatham House Rule” (英語). Chatham House – International Affairs Think Tank. 2022年11月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e f “Chatham House Prize” (英語). Chatham House. 2014年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月1日閲覧。
  8. ^ “Lula: Brazil's Olympic Champion” (英語). Latinbusinesschronicle.com (2009年10月6日). 2010年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月5日閲覧。
  9. ^ “Gül winner of prestigious Chatham House award” (英語). Todayszaman.com (2010年3月20日). 2012年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月5日閲覧。
  10. ^ “Winner of prestigious Chatham House award 2011” (英語). chathamhouse.org (2011年12月2日). 2011年12月2日閲覧。
  11. ^ "Hillary Clinton voted Chatham House Prize winner" (Press release) (英語). Chatham House. 28 August 2013. 2015年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年11月12日閲覧
  12. ^ “Winner of prestigious Chatham House award 2014” (英語) (2014年11月21日). 2015年2月6日閲覧。
  13. ^ “Médecins Sans Frontières (MSF) Awarded 2015 Chatham House Prize” (英語) (2015年6月22日). 2015年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月25日閲覧。
  14. ^ a b “John Kerry and Mohammad Javad Zarif named winners of the Chatham House Prize 2016” (英語). Chatham House (2016年10月24日). 2016年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月25日閲覧。
  15. ^ “President Juan Manuel Santos named winner of the Chatham House Prize 2017” (英語). chathamhouse.org. 2017年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月11日閲覧。
  16. ^ “The Committee to Protect Journalists named winner of the Chatham House Prize 2018 | Chatham House – International Affairs Think Tank” (英語). web.archive.org (2020年11月9日). 2020年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月11日閲覧。
  17. ^ “The Committee to Protect Journalists named winner of the Chatham House Prize 2018 | Chatham House – International Affairs Think Tank” (英語). web.archive.org (2020年11月9日). 2020年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月11日閲覧。
  18. ^ “Sir David Attenborough and the BBC Studios Natural History Unit awarded Chatham House Prize 2019 for ocean advocacy | Chatham House – International Affairs Think Tank” (英語). web.archive.org (2021年1月10日). 2021年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月11日閲覧。
  19. ^ “Chatham House Prize: Malawi Judges Win for Election Work | Chatham House – International Affairs Think Tank”. web.archive.org (2021年1月10日). 2021年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月11日閲覧。
  20. ^ “Ukraine’s President Zelenskyy awarded 2023 Chatham House Prize”. chathamhouse.org (2023年6月20日). 2023年12月28日閲覧。

参考文献

  • 本田毅彦 著「帝国の終焉と結社」、川北稔 編『結社のイギリス史:クラブから帝国まで』山川出版社〈結社の世界史〉、2005年。 ISBN 4634444402
  • 加藤陽子『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』朝日出版社、2016年。ISBN 978-4-255-00940-7。 

関連文献

本文の出典ではない資料

  • 『敗北しつつある大日本帝国―日本敗戦7カ月前の英国王立研究所報告』英国王立国際問題研究所、坂井達朗訳、刀水書房〈刀水歴史全書〉、2007年。ISBN 9784887083615、CRID 1130000794217294720。王立国際問題研究所が太平洋問題調査会の第9回国際会議に提出した報告書(1945年1月)の日本語訳。
  • 小原 満穂「シンクタンク (1)-その定義と海外の状況」『情報管理』第33巻第9号、科学技術振興機構、1990年、p.769-784。ISSN 0021-7298, 1347-1597、CRID 1390001205473085184、doi:10.1241/johokanri.33.769。
  • 佐藤 宣之(英国王立国際問題研究所)「「中部からクールジャパン発信委員会」提言書:中部からクールジャパン発信のためのアクションプラン~輝ける中部・名古屋を目指して~ 」『日本醸造協会誌』第111巻第1号、日本醸造協会、2016年、p.2-13。ISSN 0914-7314、CRID 1390001288034416256、doi:10.6013/jbrewsocjapan.111.2。

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、王立国際問題研究所に関連するカテゴリがあります。
  • 王立国際問題研究所公式サイト(英語)
典拠管理データベース ウィキデータを編集
全般
  • ISNI
  • VIAF
    • 2
国立図書館
  • フランス
  • BnF data
  • イスラエル
  • アメリカ
  • 日本
  • チェコ
    • 2
  • オーストラリア
学術データベース
  • CiNii Books
  • CiNii Research
その他
  • IdRef