さまよえるオランダ人

曖昧さ回避 この項目では、ワーグナーのオペラについて説明しています。元になった伝承については「フライング・ダッチマン」を、その他の用法については「フライング・ダッチマン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
音楽・音声外部リンク
さまよえるオランダ人(1880年版) - Brilliant Classics提供のYouTubeアートトラック
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(オランダ人)、マリアンネ・シェッヒ(英語版)(ゼンタ)、ゴットロープ・フリック(英語版)(ダラント)、ルドルフ・ショック(エリック)、フリッツ・ヴンダーリヒ(舵手)、ジークリンデ・ヴァーグナー(英語版)(マリー)
フランツ・コンヴィチュニー指揮シュターツカペレ・ベルリンベルリン国立歌劇場合唱団
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リヒャルト・ワーグナーが描いた「さまよえるオランダ人」の楽譜

さまよえるオランダ人』(さまよえるオランダじん、ドイツ語: Der fliegende Holländer)は、リヒャルト・ワーグナー作曲のオペラ

概要

神罰によって、この世と煉獄の間を彷徨い続けているオランダ人幽霊船があり、喜望峰近海で目撃されるという伝説(フライング・ダッチマン)を元にした、ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの『フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記』(Aus den Memoiren des Herren von Schnabelewopski1834年)にワーグナーが着想を得て再構成し、1842年に完成し、1843年に初演された。

登場人物

  • オランダ人 - バリトン
  • ダラント船長 - バス
  • ゼンタ(ダラントの娘) - ソプラノ
  • エリック(ゼンタの恋人) - テノール
  • 舵手(ダラントの部下の水夫) - テノール
  • マリー(ゼンタの乳母) - アルト

楽器編成

フルート2、ピッコロオーボエ2(2番はイングリュッシュ・ホルン持ち替え)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ(作曲当初はオフィクレイド)、ティンパニ1対、風音器タムタムハープ弦五部

バンダ:ホルン6、ピッコロ3

異稿および1幕/3幕形式

作曲者の欲した形式は1幕形式であったが、当時の未熟な舞台技術によって止むを得ず3幕構成にさせられた。なお、現行の楽譜に2つの稿があり、第1稿が荒々しいオーケストレーションの救済のない形(1841年版)、第2稿が幾分穏やかなオーケストレーションで救済のある形(1880年版)である。それぞれの稿の違う部分は、主に序曲の最後と終幕のフィナーレのオーケストレーションである。ウィーン国立歌劇場では、前演出までは第1幕の後に休憩を入れたが、今では完全に1幕形式上演である。現在のバイロイトを初めとして、ほとんどの歌劇場も1幕形式で上演される。

演奏時間

1幕形式の場合で約2時間10分かかる。救済が無い初稿は、救済がある最終稿よりも2分から3分短い。ワーグナーの全オペラ作品では一番短い。3幕版は今日では実際の上演が珍しいが、各幕50分、50分、30分の割合。第1幕の後で1回だけ休憩を取る場合もある。

あらすじ

第1幕(第1ビルト)

舞台はノルウェーフィヨルドに面した港町。ダラントは一時避難で自らの家のあるここに投錨する。すると遠くから、黒いマストに真紅の帆を立てた幽霊船が現れる。幽霊船の船長のオランダ人は「呪いを受け7年に一度上陸できるが、乙女の愛を受けなければ呪いは解かれず、死ぬことも許されずに永遠に海をさまよわなければならぬ」と嘆く。

ダラントはオランダ人から財宝を渡され、娘ゼンタと引き会わすことを約束してしまう。

第2幕(第2ビルト)

ゼンタはオランダ人と出会い、その不幸に心打たれ、救いたいと思う。ゼンタはオランダ人の肖像を見ては思いを募らすばかりである。しかし、ゼンタはエリックという青年に愛されている。

ゼンタは父とオランダ人に説得され、オランダ人につき従うことを約束する。

第3幕(第3ビルト)

貞節を証明するために海に身を投じるゼンタ

第1幕の港町に再びオランダ人の幽霊船が現れる。オランダ人に会おうとするゼンタ。それを引き止めるエリック。オランダ人はエリックのゼンタへの愛を見て「裏切られた」と言い、帆をはり去っていく。ゼンタは自らの純愛を岩の上から叫び、貞節を証明するために海に身を投じる。ゼンタの純愛を得た幽霊船は呪いを解かれ、死を得て沈没する。そしてオランダ人とゼンタは浄化され昇天していく。

備考

  • ドイツ語原題の"Holländer"には「オランダ人」のほかに「幽霊船」という意味があり、フランス語版の表題"Le Vaisseau fantôme"がまさしく「幽霊船」を指すこともあって、古くは「さまよえる幽霊船」と日本語訳した例も見受けられた。しかし劇中の最後にオランダ人自身が「人は私をさまよえるオランダ人と呼ぶ」("den fliegenden Holländer nennt man mich"[1])と言っているため、ドイツ語原題に関しては「さまよえるオランダ人」が最も適当な日本語訳である。
  • 英語訳題の「フライング・ダッチマン」は、オランダ系やドイツ系の著名人のニックネームとして英語圏でしばしば用いられる。具体例はフライング・ダッチマン (曖昧さ回避)の項を参照。
  • この物語をモチーフにして、設定を現代に移して後日談を描いた映画がある。1951年のイギリス映画『パンドラ』で、エヴァ・ガードナージェームズ・メイスンが出演した。
  • パウル・ヒンデミットによる弦楽四重奏のための『朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された「さまよえるオランダ人」序曲』というジョーク作品がある。

脚注

  1. ^ “Der Fliegende Hollander” (PDF). Naxos.com. p. 11. 2023年10月8日閲覧。

関連項目

  • パンドラ (1951年の映画) - 「さまよえるオランダ人」をモチーフにした映画

外部リンク

婚礼 (1832) - 妖精 (1833) - 恋愛禁制 (1836) - リエンツィ (1840) - さまよえるオランダ人 (1843) - タンホイザー (1845) - ローエングリン (1848) - トリスタンとイゾルデ (1859) - ニュルンベルクのマイスタージンガー (1867) - パルジファル (1882)

ニーベルングの指環

序夜:「ラインの黄金」 (1854) - 第1日:「ワルキューレ」 (1856) - 第2日:「ジークフリート」 (1871) - 第3日:「神々の黄昏」 (1874)

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