エジプトの言語
エジプトの言語 | |
---|---|
エジプトのホテルでの多言語表記。エジプトは観光客(エジプト・アラビア語版)を世界中から惹きつける | |
公用語 | フスハー |
現地語 | アラビア語エジプト方言 (98%) (事実上の共通語) |
少数言語 | コプト語(コプト教会の典礼および、少数のコプト・キリスト教徒(英語版)の口語[1]) アラビア語北西アラビア方言(エジプト・アラビア語版) (30%) ドマリ語 (10%) ノビイン語(英語版) (3%) アラビア語リビア方言 (40%) ベジャ語 (7%) シワ語 |
主な移民言語 | ペルシア語 ヒンディー語 ウルドゥー語 中国語 |
主な外国語 | 英語[2] |
手話 | エジプト手話(アラビア語版) |
一般キー配列 |
エジプトの言語(エジプトのげんご)では、アフリカ北東部のエジプトで使用される言語について解説する。エジプト人は方言の連続体を話す。エジプトで最も主要な方言は土語のアラビア語エジプト方言あるいはマスリー(مصرى 「エジプトの」)である[4]。アラビア語文語は公用語であり[5]、最も広く使われる文語である。コプト語はエジプト人コプトによって主に用いられ、コプト教会の典礼言語となっている。
公用語
主な口語
カイロ方言を元にしたアラビア語エジプト方言は広く口語として用いられており、しばしばアラビア文字、あるいは新しい通信サービスによってはアラビージー(アラビア語版)で書かれる。
アラビア語諸方言の中で、おそらくはアラビア語圏へのエジプト映画(エジプト・アラビア語版)および音楽産業の影響によって、アラビア語エジプト方言は中東・北アフリカで最もよく理解される方言である。
少数言語
南エジプトにおいて、アラビア語サイード方言は多くの人々にとって口語として使われる。
上ナイル峡谷最南部・コム・オンボからアスワン一帯ではおよそ300,000人のヌビア語話者が存在する。ノビイン語(英語版)が主に使われるが、ケヌズ語も用いられている。
シワ・オアシスおよびその周辺に住むおよそ30,000人のエジプト・ベルベル人はベルベル語の北アフリカ方言であるシワ語を話す[6]。シワのベルベル語は近隣のベルベル語リビア方言と高度に相互理解可能である[7]。ベジャ語は東部の砂漠から南部の紅海沿岸部にかけて、領土問題の存在するハラーイブ・トライアングルを含む地域で話されている。
手話
エジプト手話(アラビア語版)はエジプトで用いられていることが知られている唯一の手話言語である[8]。アレクサンドリアおよびカイロでの使用が知られており、おそらく他地域でも用いられている。地域変種が存在すると言われているものの、記録は存在しない。
外国語
英語
エジプトの学生のほとんどは学校で英語を学習する。エジプト・イギリス大学(エジプト・アラビア語版)やエジプト未来大学(エジプト・アラビア語版)、ナイル大学(エジプト・アラビア語版)、エジプト・アメリカ大学(エジプト・アラビア語版)などのような英語の大学がエジプト国内に多く存在する。英語は観光で最もよく用いられる言語である。今日、エジプト国内の道路標識の多くはアラビア語と英語が併記されている。それに加え、多くの英語の単語が日常で用いられるようになっている。英語はエジプトで重要な地位を占める。紙幣・貨幣や切手はアラビア語と英語が併用されている。『デイリー・ニュース・エジプト(エジプト・アラビア語版)』などの日刊紙や週刊誌を発行する重要な英語出版社が存在する[9]。
イギリス英語とアメリカ英語のどちらを選ぶかは普通決まっていないが、若年層はアメリカ・メディアの影響からかアメリカ英語を好む傾向にある[10]。
フランス語
2009年から2010年の間、エジプトでのフランス語学習者の人数はおよそ600万人であり、2013年にはこの数字は800万人にまで増加した。2014年時点で、エジプトにおけるフランス語学習者のほとんどは学校にて外国語として学んでいる[11] 。
エジプトで最初のフランス語学校は1836年に開校された。19世紀の終わりまでにフランス語は主要外国語の地位を確立し、外国人のリングア・フランカとして用いられた。この傾向は特にカイロにおいて顕著であった[12]。
イブラーヒーム・パシャの治世下で、フランス語はメディアで用いられる第一外国語となった[13]。イギリスによる影響下(エジプト・アラビア語版)にあった時代、実際にはフランス語が外国人どうしおよび外国人とエジプト人間のコミュニケーション手段として用いられた[14]。フランス=エジプト民事裁判所ではフランス語が用いられ、スルターン(エジプト・アラビア語版)の勅示、タクシー乗り場、鉄道の時刻表、およびその他の法的文書はフランス語で記述された[15]。また、メディアでのフランス語使用はこの時代に頂点を迎えた[13]。これはエジプト人の一部がフランス語で教育を受けたこととフランスからの文化的な影響による[14]。イギリスの法曹関係者の働きかけにもかかわらず、イギリス影響下のエジプトでは、英語が民事裁判で用いられることはなかった[16]。
社会的および政治的な理由から、エジプトでのフランス語の地位は1920年代から衰退し始めた[12]。『アルアフラム(フランス語版)』紙および『ル・プログレ・ザジプシャン(フランス語版)』紙という2つのフランス語新聞が今日まで続いている。
イタリア語
イタリア語はムハンマド・アリーの治世下で第一外国語とされた。『進歩』(伊: Il progresso)として知られるイタリア語新聞がアレクサンドリアで1858年から1859年に創刊された。
他の外国語
歴史的な言語
エジプト語(コプト=エジプト語としても知られる)は古代エジプト語およびコプト語を含み、アフロ・アジア語族の1語派を形成している。エジプト語は最初期に記述された言語であり、記念碑やパピルス紙に残されたヒエログリフの文章が知られている。エジプト語唯一の生き残りであるコプト語は今日コプト正教会の典礼言語となっている。
ギリシア語の「コイネー」はヘレニズム期アレクサンドリアで重要な地位を占めており、当時の文化において哲学および科学で用いられ、後世のアラブ人学者によって学ばれた。
脚注
- ^ “StackPath” (2005年12月10日). 2020年4月14日閲覧。
- ^ “Egypt” (英語), The World Factbook (Central Intelligence Agency), (2023-01-11), https://www.cia.gov/the-world-factbook/countries/egypt/ 2023年1月25日閲覧。
- ^ “A List of Local Keyboard Layout in 24 Countries/Regions. (updated in September 2013) - brightmeasurement”. sites.google.com. 2023年1月25日閲覧。
- ^ “The rise and fall of Egyptian Arabic”. The Economist. (2018年1月31日). ISSN 0013-0613. https://www.economist.com/prospero/2018/01/31/the-rise-and-fall-of-egyptian-arabic 2019年10月9日閲覧。
- ^ a b “Constitutional Declaration: A New Stage in the History of the Great Egyptian People”. Egypt State Information Service (2011年3月30日). 2011年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月15日閲覧。
- ^ Siwi (siwi or žlan n isiwan) is a Berber language spoken at the oasis of Siwa in western Egypt (Matrūħ Province), about 500 km west of the Nile and 250 km south of the Mediterranean coast, by a little less than 15,000 people, forming a majority of the oasis' population. The nearest Egyptian oasis, Bahariyya, is some 350 km east of Siwa. Siwi is also spoken at the tiny oasis of Gāra near Siwa, and I was told of a multigenerational Siwi community at nearby Jaghbūb in Libya. page 16 of the book GRAMMATICAL CONTACT IN THE SAHARA: Arabic, Berber, and Songhay in Tabelbala and Siwa, August 2010, by: Lameen Souag. [1]
- ^ “Eastern” (英語). Ethnologue. 2021年6月2日閲覧。
- ^ Exploring Egyptian and American sign languages, https://www.researchgate.net/publication/316036629
- ^ Daily News Egypt Official Website
- ^ Schaub, Mark (2000). “English in the Arab Republic of Egypt” (英語). World Englishes 19 (2): 235. doi:10.1111/1467-971X.00171.
- ^ La langue française dans le monde 2014. Nathan. (2014). pp. 216–217. ISBN 978-2-09-882654-0. オリジナルの12 April 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150412002239/http://www.francophonie.org/Langue-Francaise-2014/projet/Rapport-OIF-2014.pdf 2015年4月5日閲覧。 "Pour la majorité des locuteurs actuels, le français n’est plus une langue maternelle ou une langue seconde ; il est devenu une langue étrangère qui s’apprend à l’école ou dans les centres culturels. Aujourd’hui, précédant l’allemand et suivant l’anglais (répandu à partir des années 1930), le français est la deuxième langue étrangère en Égypte et compte 8 millions d’apprenants en 2013, soit 2 millions de plus qu’en 2009-2010."
- ^ a b La langue française dans le monde 2014. Nathan. (2014). p. 216. ISBN 978-2-09-882654-0. オリジナルの12 April 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150412002239/http://www.francophonie.org/Langue-Francaise-2014/projet/Rapport-OIF-2014.pdf 2015年4月5日閲覧。 "À partir de 1836 sont fondés des établissements employant le français comme langue d’enseignement. [...] C’est à partir des années 1920 que le français commence à perdre du terrain pour des raisons politiques et sociales."
- ^ a b Kendall, Elisabeth. "Between Politics and Literature: Journals in Alexandria and Istanbul at the End of the Nineteenth Century" (Chapter 15). In: Fawaz, Leila Tarazi and C. A. Bayly (editors) and Robert Ilbert (collaboration). Modernity and Culture: From the Mediterranean to the Indian Ocean. Columbia University Press, 2002. ISBN 0231114273, 9780231114271. Start: p. 330. CITED: p. 331.
- ^ a b Mak, Lanver. The British in Egypt: Community, Crime and Crises 1882-1922 (Volume 74 of International Library of Historical Studies). I.B.Tauris, 15 March 2012. ISBN 1848857098, 9781848857094. p. 87.
- ^ Mak, Lanver. The British in Egypt: Community, Crime and Crises 1882-1922 (Volume 74 of International Library of Historical Studies). I.B.Tauris, 15 March 2012. ISBN 1848857098, 9781848857094. p. 87-88.
- ^ Mak, Lanver. The British in Egypt: Community, Crime and Crises 1882-1922 (Volume 74 of International Library of Historical Studies). I.B.Tauris, 15 March 2012. ISBN 1848857098, 9781848857094. p. 89.
参考文献
- Badawi, Mohamed; Caroli, Christian A. (2011) (ドイツ語), As-Sabil: Grundlagen der arabischen Grammatik, Konstanz
- Bateson, Mary Catherine (2003), Arabic Language Handbook, Georgetown University Press, ISBN 0-87840-386-8
- Durand, Olivier; Langone, Angela D.; Mion, Giuliano (2010) (イタリア語), Corso di Arabo Contemporaneo. Lingua Standard, Milan: Hoepli, ISBN 978-88-203-4552-5
- Gregersen, Edgar A. (1977), Language in Africa, CRC Press, ISBN 0-677-04380-5, https://archive.org/details/languageinafrica0000greg
- Grigore, George (2007), L'arabe parlé à Mardin. Monographie d'un parler arabe périphérique, Bucharest: Editura Universitatii din Bucuresti, ISBN 978-973-737-249-9, オリジナルの2007-09-27時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20070927072656/http://www.arc-news.com/read.php?lang=en&id_articol=1059
外部リンク
- Ethnologue page on "Languages of Egypt"
- PanAfriL10n page on Egypt
- Linguistic situation in Egypt (フランス語)
- Egyptian Language History
| |
---|---|
北アフリカ |
|
東アフリカ | |
南部アフリカ |
|
中部アフリカ |
|
西アフリカ | |
その他 |
|
海外領土等 |
|
各列内は五十音順。 関連カテゴリ:Category:言語「その他」は国家として承認する国が少ない、または無いものであり、国際連合には非加盟。国家承認を得た国連非加盟の国と地域の一覧・独立主張のある地域一覧も参照。
|
| |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北アジア | |||||||||||||
東アジア |
| ||||||||||||
東南アジア | |||||||||||||
南アジア |
| ||||||||||||
中央アジア |
| ||||||||||||
西アジア |
| ||||||||||||
海外領土等 |
| ||||||||||||
関連カテゴリ:Category:言語 |