グレース・オブ・ゴッド 告発の時

グレース・オブ・ゴッド 告発の時
Grâce à Dieu
監督 フランソワ・オゾン
脚本 フランソワ・オゾン
製作 エリック&ニコラ・アルトメイヤー(フランス語版)
出演者 メルヴィル・プポー
ドゥニ・メノーシェ
スワン・アルロー
音楽 エフゲニー&サーシャ・ガルペリン
撮影 マニュエル・ダコッセ(フランス語版)
編集 ロール・ガルデット(フランス語版)
製作会社 マンダリン・シネマ(フランス語版)
フランス2シネマ
配給 フランスの旗 マルス・フィルム(フランス語版)
日本の旗 キノフィルムズ東京テアトル
公開 フランスの旗 2018年12月10日アンジェ
フランスの旗 2019年2月20日
ベルギーの旗 2019年4月3日
日本の旗 2020年7月17日[1]
上映時間 137分
製作国 フランスの旗 フランス
ベルギーの旗 ベルギー
言語 フランス語
製作費 6,000,000[2]
興行収入 フランスの旗 $7,146,345[3]
世界の旗 $7,755,652[3]
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グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(グレース・オブ・ゴッド こくはつのとき、Grâce à Dieu)は、2018年フランスベルギードラマ映画。監督はフランソワ・オゾン[4]、出演はメルヴィル・プポードゥニ・メノーシェなど。

フランス全土を震撼させた神父による児童への性的虐待事件プレナ神父事件(フランス語版)」を映画化した社会派映画[5]

ストーリー

プロローグ
2014年、フランスの南東部にあるリヨン。妻と5人の子供たちと共に暮らしている40歳のアレクサンドルは、あるトラウマを抱えながら生きていた。ある時、少年時代のボーイスカウト仲間から「君も神父に触られた?」と尋ねられ、プレナ神父から性的虐待を受けた過去をまざまざと思い出してしまう。
そんなある日、アレクサンドルはプレナ神父が今も聖職者をしており、再びリヨンに戻ってきたことを知る。アレクサンドルは自分のような新たな被害者が出るのを止めるため、過去の事件の告発を決意する。だが、それは同時に、社会や家族との軋轢を生じさせる戦いの日々が待っていた。
序盤
まず最初に相談をしたバルバラン枢機卿は、処分を求めるアレクサンドルに共感の意を表してはいたが、親たちの間では人徳者として信用されていたプレナ神父を裁こうとはしなかったため、アレクサンドルは不信感を募らせる。
自分の事件は時効になっていたが他にもまだ多くの被害者がいるはずと、プレナ神父に対する告訴状を提出。捜査に動き出した警察は、「1991年に枢機卿宛てに届いた手紙」を発見し、その手紙はフランソワ少年の母親から送られたもので、プレナ神父による息子への行いを非難する内容だった。
フランソワははじめは関わりを拒んでいたものの、性的虐待の記憶が蘇るにつれ怒りがこみあげ、警察に全てを告白。それと同時に、被害を知っていながら何もしなかった教区も訴える決意を固める。
中盤
戦う覚悟を決めたフランソワは、バルバラン枢機卿に対して「マスコミにリークする」と宣戦布告し、顔も名前も公表してテレビ取材を受け、大々的にアピールしていく。
フランソワの訴えを見て、同じように性被害にあったジルから連絡がきて、2人で『被害者の会』を設立し、証言や被害者を集めるために、全国規模での記者会見を開くことになる。
その後、同じ性被害者であるエマニュエルという男性が現れる。彼は神父の性的暴力から深刻なトラウマを抱えてPTSDを発症しており、現在も突然倒れ痙攣をおこす発作を持っていた。こうして、プレナ神父から虐待を受けた男性たちの輪は広がっていき、教会への講義の声は高まっていった。
終盤
世論に押される形で、ついにバルバラン枢機卿は会見を開く。しかし、その内容は否定的なものであり、この対応に被害者たちはもちろん多くの国民が落胆することになる。だが、プレナ神父は自らの行為を認めたことから起訴されることとなり、被害者たちの声が認められアレクサンドルたちは歓喜する。
後日、出かけようとする息子に、「まだ神を信じてるの?」と問われたアレクサンドルは、何も答えず微笑み返すのであった。
エピローグ
  • 2019年1月、バルバラン枢機卿ほかカトリック教会幹部5人が、「プレナ神父の性的暴行を通報しなかったこと」「少年たちを適切に救わなかったこと」に対する裁判が開始。
  • 2019年3月、バルバラン枢機卿、執行猶予付き禁固6カ月の有罪判決。
  • 2020年1月、プレナ神父の裁判開始。検察から少なくとも8年の懲役求刑。
  • 2020年1月、バルバラン枢機卿の控訴審で、一審を覆し無罪判決。
  • 2020年3月、プレナ神父に禁固5年の有罪判決。これにプレナは上告。
  • 事件の審理は、現在も継続されている。

キャスト

被害者たち

  • アレクサンドル・ゲラン: メルヴィル・プポー - 被害者。最初の告発者。
  • フランソワ・ドゥボール: ドゥニ・メノーシェ - 被害者。被害者の会を結成。
  • エマニュエル・トマサン: スワン・アルロー - 被害者。
  • ジル・ペレ: エリック・カラヴァカ(フランス語版) - 被害者。被害者の会をフランソワと結成。

教会関係者

  • ベルナール・プレナ神父(フランス語版): ベルナール・ヴェルレー(フランス語版) - 加害者。
  • フィリップ・バルバラン枢機卿: フランソワ・マルトゥーレ(フランス語版)
  • レジーヌ・メール: マルティーヌ・エレール - アレクサンドルに対する教会側の窓口担当者。

被害者の家族たち

  • イレーヌ: ジョジアーヌ・バラスコ - エマニュエルの母。
  • オディール・ドゥボール: エレーヌ・ヴァンサン(フランス語版) - フランソワの母。
  • ピエール・ドゥボール: フランソワ・シャト(フランス語版) - フランソワの父。
  • マリー・ゲラン: オレリア・プティ(フランス語版) - アレクサンドルの妻。実は神父による性的虐待の被害者。
  • アリーヌ・ドゥボール: ジュリー・デュクロ(フランス語版) - フランソワの妻。
  • ドミニク・ペレ: ジャンヌ・ロザ(フランス語版) - ジルの妻。

警察

  • クルトー警部: フレデリック・ピエロ(フランス語版) - 未成年保護班の刑事。アレクサンドルの告発を受けて事件を担当。

作品の評価

映画批評家によるレビュー

アロシネによれば、フランスの34のメディアによる評価の平均は5点満点中4.1点となっている[6]

Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「忍耐強いアプローチで信念を持って作られた『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、現実世界の恐怖から冷静に心を掴む映画を描き出している。」であり、96件の評論のうち高評価は96%にあたる92件で、平均点は10点満点中7.6点となっている[7]

Metacriticによれば、20件の評論のうち、高評価は17件、賛否混在は3件、低評価はなく、平均点は100点満点中75点となっている[8]

受賞歴

部門 対象 結果
第69回ベルリン国際映画祭(ドイツ語版)[9][10][11][12] 銀熊賞 (審査員グランプリ) 受賞
第45回セザール賞(フランス語版)[13][14][15] 作品賞(フランス語版) ノミネート
監督賞(フランス語版) フランソワ・オゾン
主演男優賞(フランス語版) メルヴィル・プポー
助演女優賞(フランス語版) ジョジアーヌ・バラスコ
助演男優賞(フランス語版) スワン・アルロー 受賞
ドゥニ・メノーシェ ノミネート
脚本賞(フランス語版) フランソワ・オゾン
編集賞(フランス語版) ロール・ガルデット(フランス語版)

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ “神父による児童への性的虐待事件を描く ベルリン銀熊賞のフランソワ・オゾン最新作7月公開”. 映画.com. (2020年4月30日). https://eiga.com/news/20200430/12/ 2020年7月12日閲覧。 
  2. ^ “Grâce à Dieu (By the Grace of God) (2019)” (フランス語). JPBox-Office. 2021年5月16日閲覧。
  3. ^ a b “By the Grace of God” (英語). Box Office Mojo. 2021年5月16日閲覧。
  4. ^ “【「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」評論】実直な演出が封印された苦悩を浮き彫りにする、実話に沿ったオゾン渾身の社会派映画”. 映画.com. (2020年7月4日). https://eiga.com/news/20200704/7/ 2020年7月12日閲覧。 
  5. ^ 小菅昭彦 (2020年7月12日). ““現在進行形”の神父スキャンダルに材取る異色作 フランソワ・オゾン監督「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」”. 時事ドットコム. https://web.archive.org/web/20200713024129/https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071000914&g=soc 2020年7月12日閲覧。 
  6. ^ “Critiques Presse pour le film Grâce à Dieu” (フランス語). AlloCiné. 2021年5月16日閲覧。
  7. ^ “By the Grace of God (2018)” (英語). Rotten Tomatoes. 2021年5月16日閲覧。
  8. ^ “By the Grace of God Reviews” (英語). Metacritic. 2021年5月16日閲覧。
  9. ^ “Berlinale 2019 Prize Winners” (英語). Berlinale. 2021年5月16日閲覧。
  10. ^ “Berlinale 2019. Grand prix du jury à « Grâce à Dieu » de François Ozon” (フランス語). Le Télégramme. (2019年2月16日). https://www.letelegramme.fr/france/berlinale-2019-grand-prix-du-jury-a-grace-a-dieu-de-francois-ozon-16-02-2019-12210722.php 2020年7月12日閲覧。 
  11. ^ Meza, Ed (2019年2月16日). “Berlin Film Festival 2019: Nadav Lapid’s ‘Synonyms’ Wins Golden Bear” (英語). Variety. https://variety.com/2019/film/news/berlin-film-festival-2019-award-winners-1203141753/ 2019年2月17日閲覧。 
  12. ^ Richford, Rhonda (2019年2月18日). “French Court Rejects Bid to Block Release of Catholic Abuse Film 'By the Grace of God'” (英語). The Hollywood Reporter. https://www.hollywoodreporter.com/news/french-court-wont-block-catholic-abuse-film-by-grace-god-1187550 2019年2月18日閲覧。 
  13. ^ “Grâce à Dieu” (英語). Académie des César. 2021年5月16日閲覧。
  14. ^ “児童性的虐待「プレナ神父事件」描くフランソワ・オゾンの新作、緊迫の本編映像”. シネマトゥデイ. (2020年7月11日). https://www.cinematoday.jp/news/N0117268 2020年7月12日閲覧。 
  15. ^ “2019年 第45回 セザール賞”. allcinema. 2021年8月1日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • 公式ウェブサイト(日本語)
  • グレース・オブ・ゴッド 告発の時 - allcinema
  • グレース・オブ・ゴッド 告発の時 - KINENOTE
  • Grâce à Dieu - オールムービー(英語)
  • Grâce à Dieu - IMDb(英語)
  • Grâce à Dieu - AlloCiné(フランス語)
1990年代
  • 海をみる(1996年)
  • ホームドラマ(1998年)
  • クリミナル・ラヴァーズ(フランス語版)(1999年)
2000年代
2010年代
2020年代
  • Summer of 85(2020年)
  • すべてうまくいきますように(フランス語版)(2021年)
  • 苦い涙(2022年)
  • 私がやりました(2023年)
短編
  • Photo de famille(1988年)
  • Les Doigts dans le ventre(1990年)
  • Mes parents un jour d'été(1990年)
  • Une goutte de sang(1991年)
  • Peau contre peau (les risques inutiles)(1991年)
  • Le Trou madame(1991年)
  • Deux plus un(1991年)
  • Thomas reconstitué(1992年)
  • Victor(1993年)
  • Une Rose entre nous(1994年)
  • アクション、ヴェリテ(1994年)
  • 小さな死(フランス語版)(1995年)
  • サマードレス(フランス語版)(1996年)
  • ベッドタイム・ストーリーズ(1997年)
  • X2000(1998年)
  • Un lever de rideau(2008年)
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