シャヘル

シャヘル (Shahar) は、カナン神話(英語版)ウガリット神話)における曙(明けの明星)の神。黄昏(宵の明星)の神シャレム(英語版)[注釈 1]とは対になる神とされる。

解説

ラス・シャムラ文書の伝承によると、海辺を歩いていたイルが波の中に飛びこみ、その手を波のように伸ばして二人の女性(アーシラトアナトとする説がある)を口づけと共に抱擁し、シャレム(夕暮れ)とシャヘル(夜明け)を生ませたとされる。

イザヤ書の「曙の子ルシフェル」という言葉は、聖書で唯一のルシフェルへの言及であるが、「ヘレル・ベン・サハル(輝ける曙の息子)」というヘブライ語の意訳である。よって、シャヘルはルシフェルの父とも解釈できる[要出典]。しかしバーバラ・ウォーカーの、シャヘルが太陽神に反逆して堕とされ、それがルシフェルの神への反逆の伝説の下敷きになったとする主張[1][注釈 2]が周知され、しばしば両者は同一視される。

シャヘルは日の出とともに、太陽が再生したことを宣言するとされていた。古代のカナン地方では、シャヘル信仰のもとでシャハリート(英語版) (Shaharit) と呼ばれる礼拝が朝に行われていた[2]

脚注

注釈

  1. ^ エルサレムは「シャレムの家」を意味するという説がある。
  2. ^ ウォーカーの説明によれば、カナン神話においてシャヘルは太陽神の地位を簒奪しようとしたがかなわず、天から地上に落とされたという。この経緯は、紀元前7世紀頃に挽歌として語られていたという[1]

出典

  1. ^ a b ウォーカー,山下訳 1988, pp. 449-450.(「Lucifer ルシフェル」の項)
  2. ^ ウォーカー,山下訳 1988, p. 735.(「Shaharit シャハリート」の項)

参考文献

  • ウォーカー, バーバラ『神話・伝承事典 - 失われた女神たちの復権』山下主一郎ほか共訳、大修館書店、1988年7月。ISBN 978-4-469-01220-0。 
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