トラクトリックス

トラクトリックス

トラクトリックス (tractrix) は直交座標の方程式

x = a ln a ± a 2 y 2 y a 2 y 2 = a c o s h 1 ( a y ) a 2 y 2 {\displaystyle {\begin{aligned}x&=a\ln {\frac {a\pm {\sqrt {a^{2}-y^{2}}}}{y}}\mp {\sqrt {a^{2}-y^{2}}}\\&=a\,{\rm {cosh}}^{-1}\left({\frac {a}{y}}\right)\mp {\sqrt {a^{2}-y^{2}}}\end{aligned}}}

によって表される曲線である。

媒介変数による表示

ポールを引きずることによってできるトラクトリックスの軌跡。

媒介変数表示では

x = a ( ln tan θ 2 + cos θ ) , y = a sin θ {\displaystyle x=a\left(\ln \tan {\frac {\theta }{2}}+\cos \theta \right),\;y=a\sin \theta }

と表される。ここで、座標原点にの飼い主が、y軸上の点 (0, a) に長さ a のリードにつながれた犬が居たとするとき、飼い主がx軸上を移動した際に、リードの伸縮が全くないと仮定した場合に犬が移動する軌跡がトラクトリックスになる。 θ {\displaystyle \theta } は飼い主と犬を結ぶ線分とx軸との成す角に相当する。そのため、トラクトリックスは牽引線(けんいんせん)、引弧線犬曲線追跡線などとも称される。

あるいは、 ϑ = θ + π 2 {\displaystyle \vartheta =\theta +{\frac {\pi }{2}}} として

x = a ( gd 1 ϑ sin ϑ ) , y = a cos ϑ {\displaystyle x=a\left(\operatorname {gd} ^{-1}\vartheta -\sin \vartheta \right),\;y=a\cos \vartheta }

と表される。ただし、 gd 1 ϑ {\displaystyle \operatorname {gd} ^{-1}\vartheta } グーデルマン関数逆関数である。 さらに、 t = gd 1 ϑ {\displaystyle t=\operatorname {gd} ^{-1}\vartheta } とおくことにより

x = a ( t tanh t ) , y = a sech t {\displaystyle x=a\left(t-\tanh t\right),\;y=a\operatorname {sech} t}

と表すこともできる。

特徴

カテナリーの伸開線としてのトラクトリックス
トラクトリックスの縮閉線としてのカテナリー
  • カテナリー伸開線に相当し、y軸に対して線対称であり、x軸を漸近線に持つ。尖点は (0, a)。
  • 区間 x 1 x x 2 {\displaystyle x_{1}\leq x\leq x_{2}} における弧長 a ln x 2 x 1 {\displaystyle a\ln {\frac {x_{2}}{x_{1}}}} である。
  • トラクトリックスとその漸近線で囲まれる領域の面積 π a 2 2 {\displaystyle {\frac {\pi a^{2}}{2}}} である[1]
  • トラクトリックス上の尖点以外の任意の点をP、Pにおける曲率中心をO、線分OPの延長とx軸との交点をQとするとき、OP・PQは一定となり、その値は a 2 {\displaystyle a^{2}} に相当する。

脚注

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  1. ^ y d x {\displaystyle \int _{-\infty }^{\infty }ydx} を計算しても勿論導出可能であるが、マミコンの定理(英語版)を使えば、長さaの棒が半回転する際に掃く面積に相当することが示される。

参考文献

  • オスターマン, A.、ヴァンナー, G. 著、蟹江幸博 訳『幾何教程』 下、丸善出版、2017年11月。ISBN 978-4-621-30212-5。 
  • Apostol, Tom M.、Mnatsakanian, Mamikon A. 著、川辺治之 訳『Aha! ひらめきの幾何学―アルキメデスも驚くマミコンの定理―』共立出版、2016年8月。ISBN 978-4-320-11138-7。 
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