ドル・コスト平均法

ドル・コスト平均法: dollar cost averaging、DCA)とは、株式投資信託金投資などの金融商品の投資手法の一つ。定額購入法ともいう。金融商品を購入する場合、一度に購入せず、資金を分割して均等額ずつ定期的に継続して積立投資をする。例えば「予定資金を12分割して、月末ごとに資金の1/12を投入し、一年かけて全量を買う」という手法。

ここで言う「ドル」とは俗に自分のお金を自分の通貨名で呼ぶ習慣によるもので、単に通貨という意味である。そのため、USドル建てで投資することを意味するものではない(例えば日本人が価格を聞く時に「何円ですか?」という言い回しと同じ。)。

高値掴みのリスクを避けるための時間分散の一種であるが、数量を等分するのではなく、金額を等分する点が単なる分散と異なる。価格が高い時は購入数量が少なく、安い時には多いため、単純な数量分割に比べ平均値の点で有利になるとされる。ただし価格が下がった場合のみならず、上がったときにも買う点で難平買いとは異なる。

長期投資でリスクを抑制し、安定した収益を得たい場合に使われる手法である。上げ相場でドル・コスト平均法を行うと(最初に一括で購入した場合と比べて)平均購入単価がかえって高くなり、収益を減少させてしまう欠点もある。タイミングを精密に測れないため、値動きの激しい商品で、ハイリターンを目指す投資には向かない。

価格計算

時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} , ..., t n {\displaystyle t_{n}} に価格 P 1 {\displaystyle P_{1}} , ..., P n {\displaystyle P_{n}} 万円の株式を1万円ずつ計 n {\displaystyle n} 回購入することを考えよう。 n {\displaystyle n} 万円で(株数として、1株未満の端数を小数点として許すなら) 1 / P 1 + + 1 / P n {\displaystyle 1/P_{1}+\cdots +1/P_{n}} 株を購入することになる。したがって平均取得価格は

H = n / ( 1 / P 1 + + 1 / P n ) {\displaystyle H=n/(1/P_{1}+\cdots +1/P_{n})} 万円

と計算できる。これは P 1 {\displaystyle P_{1}} , ..., P n {\displaystyle P_{n}} 調和平均と呼ばれ、

H P 1 + + P n n {\displaystyle H\leq {\frac {P_{1}+\cdots +P_{n}}{n}}}

が成立する。すなわち、ドルコスト平均法では購入時点の(算術)平均と同じか、それ未満の価格で購入できる。

例えば n = 3 {\displaystyle n=3} P i = 1 , 0.5 , 1.5 {\displaystyle P_{i}=1,0.5,1.5} のケースを計算すれば、

H = 3 / ( 1 + 1 / 0.5 + 1 / 1.5 ) = 9 / 11 = 0.8181 {\displaystyle H=3/(1+1/0.5+1/1.5)=9/11=0.8181\ldots }

となり、算術平均

S = ( 1 + 0.5 + 1.5 ) / 3 = 1 {\displaystyle S=(1+0.5+1.5)/3=1}

よりも小さい。毎回3万円ずつ購入するとすれば、1万円のとき3株、0.5万円のとき6株、1.5万円のとき2株購入することになる。このように、価格が安いときには数量を増やし、高いときには数量を減らすことになるから、多くのケースで算術平均(一定数量ずつ購入することに相当)より有利な価格で購入できるのである。

他の呼び名

ドル・コスト平均法はドルを利用するアメリカでの呼び方で、イギリスではポンド・コスト平均法(pound-cost averaging)と呼んだり、通貨とは関係なく単位原価平均(unit cost averaging)や原価平均効果(cost avarage effect)と呼ぶ場合もある。

脚注

関連項目

  • 表示
  • 編集