伝熱

化学工学
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伝熱(でんねつ、: heat transfer[1])とは、エネルギーが空間のある場所から別の場所に移動する現象。熱移動(ねついどう)ともいう。「熱」は本来、高温物体から低温物体へと移動するエネルギーを指すが、その移動現象に特に着目した時にこれを伝熱という[2]

本項目では物理現象としての伝熱について説明する。工学的応用については伝熱工学を参照。

伝熱の形態

伝熱には熱伝導熱放射の2つの基本形態がある。この他に、相変化を伴う熱移動や、物質の濃度勾配と熱移動の関係を示すソレー効果デュフール効果など、電場と熱移動の関係を表すペルチェ効果ゼーベック効果トムソン効果などもこの伝熱現象となる。

熱伝導

詳細は「熱伝導」を参照

物体内に非均一な温度分布が存在するとき、物体の中の温度の高いところから低いところへと熱エネルギーがひとりでに移動する現象である[2]。ミクロには物体を構成する分子、原子、電子などの運動がエネルギーをやりとりすることで生じると考えられている。フーリエの法則として下記の式で表される。

q = k d T d x {\displaystyle q=-k{\frac {dT}{dx}}}

ここでqは熱流束k熱伝導率Tは温度、x位置

熱放射

詳細は「熱放射」を参照

物体がその温度に応じて内部エネルギーを電磁波に変換し放出、または吸収することで高温物体から低温物体へのエネルギー移動が生じる現象である[2][3]。より詳細には、固体表面はその電気電子的性質によって、波長依存性を持つ光吸収反射、放射、光透過などの現象の組み合わせという、複雑なエネルギー移動現象である。プランクの法則によると、温度Tの黒体が放射する波長λの電磁波のエネルギーE(λ) は、

E ( λ ) = 8 π h c λ 5 1 e h c / λ k T 1 {\displaystyle E(\lambda )={\frac {8\pi hc}{\lambda ^{5}}}{\frac {1}{e^{hc/\lambda kT}-1}}}

と表せる。ここで、hプランク定数kボルツマン定数。このエネルギーの交換はキルヒホッフの法則などに従う。E(λ)を電磁波の全波長で積分した合計の放射エネルギーはシュテファン=ボルツマンの法則によれば物体の温度の4乗に比例し、

E B ( T ) 0 E ( λ ) d λ = σ T 4 {\displaystyle E_{B}(T)\equiv \int _{0}^{\infty }E(\lambda )d\lambda =\sigma T^{4}}

となる。方向性のない熱放射は固体表面の放射率εによって、εσT4となる。2つの固体間の放射熱交換はそれぞれの固体が相手を見る立体角に関係する形態係数F1→2などを用いて計算される。

対流熱伝達

対流」および「熱伝達率」も参照

流体が流れる場合に、その保有するエネルギーが流体とともに運搬されるために生じる伝熱現象は対流熱伝達と呼ばれる。対流熱伝達では流体の持つエンタルピーの移動も関係してくるのが特徴である[3]。対流熱伝達には必ず熱伝導と放射のいずれか一方または両者が同時に存在しており、対流を伝熱の基本形態に含める場合[2]と含めない場合[3]がある。ニュートンの冷却の法則により次式で表される。

q = h ( T f T s ) {\displaystyle q=h(T_{f}-T_{s})}

ここでq熱流束(単位時間に単位面積を横切って移動した熱量)、h熱伝達率Tfは流体の温度、Tsは固体表面の温度。

対流熱伝達には強制対流熱伝達と自然対流熱伝達がある。強制対流熱伝達は、ポンプファンなどの外部から与えられた流れにより起こる熱伝達である。自然対流熱伝達は、温度差より生ずる浮力による対流を通じた熱伝達である。

脚注

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  1. ^ 文部省日本物理学会編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4。http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi [リンク切れ]
  2. ^ a b c d 望月貞成; 村田章『伝熱工学の基礎』日新出版、2000年、1-4頁。ISBN 4-8173-0166-X。 
  3. ^ a b c 相原利雄『エスプレッソ伝熱工学』裳華房、2009年、1-6頁。ISBN 978-4-7853-6023-8。 

関連項目

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