前根

前根
後根および前根と脊髄神経
ラテン語 radix anterior nervi spinalis
英語 Ventral root
器官 末梢神経
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神経解剖学において、前根(ぜんこん、: ventral root)は、脊髄神経の神経根のうち遠心性運動神経根のこと。脊髄前外側から出て硬膜を貫き、末梢側(脊椎の椎間孔を出るところ)で同じ高位の髄節から出た後根と合わさって脊髄神経となる。

前根の運動神経線維

前根を構成する神経線維の多くは、脊髄前角の一般体性遠心性神経の軸索で、太く(径9-13μm)髄鞘を持ち、Aα線維と呼ばれる。それ以外に細い有髄神経線維もあり、これはAγ運動神経の軸索で筋紡錘の錐内筋線維を支配する。これに対してAα線維が支配する骨格筋線維を錐外筋線維と呼ぶ。またT1(第一胸髄)からL2(第二腰髄)までとS2(第二仙髄)からS4までの前根には、もう一種類の細い有髄神経線維がある。これは脊髄側角にある中間外側核に神経細胞体を持つ神経の軸索で、一般内臓遠心性神経線維すなわち交感神経節前線維であり、B線維とも呼ばれる。この線維は後根と合わさった脊髄神経から分岐する白交通枝を通り、交感神経幹に達してそこにある神経節に入る。

前根の感覚神経線維

前根には遠心性神経(運動神経)の軸索だけが存在するというのが古典的な考えだったが(ベル・マジャンディーの法則)、今ではヒトネコを含めた一部の哺乳類で、前根にも多くの求心性神経(感覚神経)の軸索があることがわかっている。この軸索はほとんど無髄線維で、一部のものは直接脊髄に入っていることが確かめられているが、すべてがそうかはわかっていない。またこの感覚線維の働きも今のところ明らかにはされていない[1]

追加画像

  • 頸椎の横断面。
    頸椎の横断面。
  • 脊髄横断面
    脊髄横断面
  • 脊髄神経と前根および後根。
    脊髄神経と前根および後根。
  • 皮質脊髄路。
    皮質脊髄路。
  • 脊髄横断面と髄膜の模式図。
    脊髄横断面と髄膜の模式図。
  • 脊髄の一部の右側面。硬膜を切開して神経根を示す。
    脊髄の一部の右側面。硬膜を切開して神経根を示す。
  • 一般的な脊髄神経の構造の模式図。前根、後根と交通枝の関係を示す。
    一般的な脊髄神経の構造の模式図。前根、後根と交通枝の関係を示す。

脚注

  1. ^ Willis, WD; Coggeshall, RE (1978), Sensory mechanisms of the spinal cord, New York: Plenum Press 

参考文献

  • Parent, André, Carpenter's human neuroanatomy, 9th ed. Media: Williams & Wilkins, 1996, pp.262-264. ISBN 0683067524

外部リンク

  • ニューヨーク州立大学ブルックリン健康科学センター椎孔の内部にある脊髄に沿って切開したところを上(背部)から眺める。
  • ミシガン大学系統解剖学 - 脊髄自律神経系のつながり
  • 解剖学アトラス、ミクロ解剖プレート06.114 - 脊髄神経根の神経線維。


神経解剖学: 脊髄
脊髄神経

背側後根神経節後枝) - 腹側(前根、前枝) - 交感神経幹 - 交通枝(灰白交通枝、白交通枝)

灰白質/レクセドの層

後角(背核、ローランドの膠様質、固有核) - 側角 - 前角 - 中心管/中心膠様質

白質
体性感覚/上行

後索/後索・内側毛帯路: 触覚・固有覚: 薄束 - 楔状束
側索: 固有覚: 脊髄小脳路(背側脊髄小脳路、腹側脊髄小脳路) - 温痛覚: 脊髄視床路(外側脊髄視床路、前脊髄視床路) - 後外側路 - 脊髄視蓋路

運動/下行

側索: 皮質脊髄路(外側) - 錐体外路系(赤核脊髄路、オリーブ脊髄路)
前索: 皮質脊髄路(前皮質脊髄路) - 錐体外路系(前庭脊髄路、網様体脊髄路、視蓋脊髄路)

周囲
その他

歯状靱帯 - 脊髄円錐 - 馬尾 - 終糸 - 頸膨大 - 腰膨大 - 前正中裂

典拠管理データベース ウィキデータを編集
  • Terminologia Anatomica