尼崎市アウティング問題

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尼崎市アウティング問題(あまがさきしアウティングもんだい)は、当時尼崎市職員であった両性愛者(バイ)の男性が業務中に市民団体性的指向カムアウトしたことに対して、市幹部職員が控えるよう指導、またその過程・最中にアウティングを行った問題である。暴露された男性はのちに依願退職し、市はこの問題を人権侵害に当たると結論付け、性的少数者に関する職員研修の見直しに迫られた。

概要・経過

カムアウトとアウティング

男性は市の保健所に務めており、その業務中、動物愛護団体(市民団体)の人物に「彼女は? 結婚は?」などと迫られたため「男性のパートナーがいる」と返答した[注 1][1]。後述する面談で男性は「結婚観を何度も聞かれ、話を終わらせたくて、セクシュアリティを正直に答えたことがある」と話している[2]

2019年11月、団体より市の幹部職員へ「職員に性的指向を明かされて困惑した[3]」「不愉快だ」との苦情があった[1]。幹部職員は、男性が所属する部署内の複数の職員に「男性が市民にバイセクシュアルだと伝えていると、団体から申し入れがあった」と伝え[2]、事実関係等を調査するよう職場内に指示を出した[1]。この際、幹部は男性には何も説明しておらず、また男性がバイであることを初めて知った職員もいた[2]。翌12月、幹部は他の職員とともに同男性職員と面談を行い、「社会全体が成熟しているわけではないから、言葉を選ぶべきだ」、「言葉を慎む勉強をしてほしい[1]」などと指導した[3]。また、

私だったら白血病だったり借金があったりしても、相手にどう思われるか分からない私的なことは市民に言わない

とも述べたという[3]。なお、同席した職員は当時、男性の性的指向を知らなかった[1]

2020年3月、男性は依願退職した[4]神戸新聞の取材に対し「市は自分の性的指向を『不快』とした団体側に何の意見もせず、それ(カムアウト)が悪いことであるかのように一方的に注意された。納得できず退職を決めた」と述べた[4]

問題発覚後の反応・対応

2021年9月、同市市議会で議員の1人がこの問題を取り上げた。市側は「職員研修で多様性への理解を深める」との回答に終始していた[1]。その後12月に神戸新聞がこの問題を報じた。すると全国から抗議や批判が殺到した[1]

12月20日、同市市長の稲村和美が「多様な性を理解していこうとする最中の出来事で、今後繰り返すことがないよう取り組む」として、職員への人権研修を拡充していく方針を示した[5]

2022年3月、市が有識者とのワーキングチームの調査結果を報告した[6]。一方、神戸新聞はこの報告書をもとに『悪意はなくても-尼崎市アウティング問題から』と題して、性的少数者を巡る問題についての連載を開始した[6]

近畿大学教授で公務員倫理に詳しい中谷常二は

相手側が公務と関係がないことを話題にし、職員個人の私的な事柄に対して「不快」と示してきた段階で、行政組織として職員を守るべきだった。

と評した[7]。また、LGBT法連合会事務局長の神谷悠一は、アウティングだけでなく「SOGIハラ」や「カスタマーハラスメント」に該当すると指摘した[2]

脚注

[脚注の使い方]

脚注

  1. ^ この問答が行われた具体的な年月日は不明。

出典

  1. ^ a b c d e f g 「性告白を否定「幹部辞めさせろ」全国から批判〈悪意はなくても~尼崎市アウティング問題から〉(1)」『神戸新聞』、2022年5月23日。2023年2月22日閲覧。
  2. ^ a b c d 佐藤雄「兵庫県尼崎市、職員のセクシュアリティをアウティングしていた。市民にカミングアウトは「不適切」と指導」『HUFFPOST』、2021年12月20日。2023年2月22日閲覧。
  3. ^ a b c 「両性愛告白の職員に「言わない方がいい」と上司 「不適切だった」」『朝日新聞デジタル』、2021年12月26日。2023年2月22日閲覧。
  4. ^ a b 「両性愛を告白の尼崎市職員に市幹部が指導「市民に明かすのは不適切」 失望し退職「ショック。無理解を容認」」『神戸新聞』、2021年12月15日。2023年2月22日閲覧。オリジナルの2022年1月27日時点におけるアーカイブ。
  5. ^ 「「差別なくす姿勢、シールで『見える化』」「職員に研修を実施」 LGBT指導問題で尼崎市長会見」『神戸新聞』、2021年12月20日。2023年2月22日閲覧。
  6. ^ a b 「【LGBT】悪意はなくても~尼崎市性的マイノリティー職員へのアウティング問題から」『神戸新聞』、2022年7月22日。2023年2月22日閲覧。オリジナルの2021年12月16日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 「公務員のLGBTカミングアウト、市の対応は「差別と偏見認める」「職員を守るべき」 識者はこう見る」『神戸新聞』、2021年12月15日。2023年2月22日閲覧。オリジナルの2021年12月16日時点におけるアーカイブ。

関連項目

外部リンク

  • 性の多様性への理解を深める サポートブック <職員用> ~ 誰もが「自分らしく」~ - 令和5年1月(改定)、尼崎市
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