拡大再生産

拡大再生産(かくだいさいせいさん、: extended reproduction)とは、マルクス経済学において、剰余価値の一部、またはそのすべてを資本家消費に支出することなく、資本に転化して蓄積することによって生産規模を拡張し、再生産を行うこと。対義語は単純再生産

再生産表式に基づく検証

I部門(生産財生産部門)とII部門(消費財生産部門)に分かれた経済モデルを考える。ここで、cを不変資本、vを可変資本、mを剰余価値として、次のような価値をもった生産物を考え、これに再生産表式を適用する(以下の数値例は、水谷謙治『新経済原論』(有斐閣、1994年)73ページ以下による。再生産表式については、当該項目を参照のこと)。

I  
  
    
      
        600
        =
        400
        c
        +
        100
        v
        +
        100
        m
      
    
    {\displaystyle 600=400c+100v+100m}
  

II 
  
    
      
        300
        =
        150
        c
        +
        75
        v
        +
        75
        m
      
    
    {\displaystyle 300=150c+75v+75m}
  

ここで蓄積率を50%、剰余価値率を100%とすると、I部門の100mのうち、50mは40c+10vに分けられる。10vは消費財の追加需要をもたらすが、この追加分の生産財はIの剰余価値部分から補填される。II側においても生産財を必要とするが、この追加分もI部門の剰余価値部分から補填される。これらの関係を上式に沿って整理すると、

I  
  
    
      
        600
        =
        400
        c
        +
        40
        c
        (
        m
        )
        +
        100
        v
        +
        10
        v
        (
        m
        )
        +
        50
        m
      
    
    {\displaystyle 600=400c+40c(m)+100v+10v(m)+50m}
  

II 
  
    
      
        300
        =
        150
        c
        +
        10
        c
        (
        m
        )
        +
        75
        v
        +
        5
        v
        (
        m
        )
        +
        60
        m
      
    
    {\displaystyle 300=150c+10c(m)+75v+5v(m)+60m}
  

整理して、

I  
  
    
      
        600
        =
        440
        c
        +
        110
        v
        +
        (
        50
        m
        )
      
    
    {\displaystyle 600=440c+110v+(50m)}
  

II 
  
    
      
        300
        =
        160
        c
        +
        80
        v
        +
        (
        60
        m
        )
      
    
    {\displaystyle 300=160c+80v+(60m)}
  

剰余価値率は100%であるから、結果として

I  
  
    
      
        660
        =
        440
        c
        +
        110
        v
        +
        110
        m
      
    
    {\displaystyle 660=440c+110v+110m}
  

II 
  
    
      
        320
        =
        160
        c
        +
        80
        v
        +
        80
        m
      
    
    {\displaystyle 320=160c+80v+80m}
  

となる。結果として、

I ( v + m ) > {\displaystyle (v+m)>} II c {\displaystyle c}

が再生産の条件となる。

関連項目