アーネシの曲線

アーネシの曲線。c = 1(赤)、2(青)、3(緑)

アーネシの曲線(アーネシのきょくせん) (: la versiera di Agnesi, : witch of Agnesi) またはアーネシの魔女直交座標における方程式

y = c 3 x 2 + c 2 {\displaystyle y={\frac {c^{3}}{x^{2}+c^{2}}}}

すなわち ( x 2 + c 2 ) y c 3 = 0 {\displaystyle (x^{2}+c^{2})y-c^{3}=0} によって表される曲線である。迂池線とも称する[1]

18世紀イタリアの数学者マリア・ガエターナ・アニェージ(アーネシ)が研究したことからこの名がある。「魔女」というのはイタリア語の versiera(縄)の誤訳であって、意味はない。

アーネシの曲線

原点 O と y 軸上の点 M を結ぶ線分を直径とする円がある。 原点 O から円上の点 A に直線 OA を引く。 直線 OA は M から x 軸と平行に引いた直線と、点 N で交わる。 点 N から線分 OM と平行な直線を引き、これが点 A から x 軸と平行に引いた直線と交わる点を P とする。 A の変化につれて P が描く軌跡が、アーネシの曲線である。

方程式

アーネシの曲線をアニメーションで表現したもの

円の半径を a とすると(c=2a)、曲線の方程式はこうなる。

y = 8 a 3 x 2 + 4 a 2 {\displaystyle y={\frac {8a^{3}}{x^{2}+4a^{2}}}}

a = 1/2 のとき、この方程式は次のとおり単純になる。

y = 1 x 2 + 1 {\displaystyle y={\frac {1}{x^{2}+1}}}

t による媒介変数表示によって、次式で表すこともできる:

x = 2 a t , y = 2 a t 2 + 1 {\displaystyle x=2at,\quad y={\frac {2a}{t^{2}+1}}}

θ {\displaystyle \theta \,} を OM と OA とのなす角(時計回り)とすると、曲線は次式でも表せる。

x = 2 a tan θ , y = 2 a cos 2 θ {\displaystyle x=2a\tan \theta ,\quad y=2a\cos ^{2}\theta }

θ {\displaystyle \theta \,} x 軸と OA とのなす角(反時計回り)とすると、曲線は次式でも表せる。

x = 2 a cot θ , y = 2 a sin 2 θ {\displaystyle x=2a\cot \theta ,\quad y=2a\sin ^{2}\theta }

性質

アーネシの曲線で a=1, a=2, a=4, a=8 としたグラフ
  • y 軸に対して線対称であり、x 軸を漸近線とする。
  • 変曲点 ( 2 a 3 , 3 a 2 ) , ( 2 a 3 , 3 a 2 ) {\displaystyle \left(-{\frac {2a}{\sqrt {3}}},{\frac {3a}{2}}\right),\left({\frac {2a}{\sqrt {3}}},{\frac {3a}{2}}\right)} である。
  • 曲線と x 軸との間の領域の面積は、元の円の面積の4倍(つまり 4 π a 2 {\displaystyle 4\pi a^{2}} )になる。
  • 上の領域の重心は、(0, a/2) である(元の円の重心は (0, a) である)。
  • 曲線と x 軸を y 軸の周りに回転させてできる立体の体積は、 4 π 2 a 3 {\displaystyle 4\pi ^{2}a^{3}} である。

歴史

この曲線の性質については、ピエール・ド・フェルマー(1630年)、Guido Grandi(伊)(1703年)、マリア・ガエターナ・アニェージ(1748年)の研究が知られている[2]

イタリアではこの曲線は la versiera di Agnesi と呼ばれており、その英訳は the curve of Agnesi であるが、ケンブリッジ大学の教授 John Colson の誤訳によって、witch of Agnesi とも呼ばれる[3][4][5]

"The Witch of Agnesi" は Robert Spiller による創作小説。

脚注

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出典

  1. ^ 岩波数学公式I, p. 271.
  2. ^ http://www.mathcurve.com/courbes2d/agnesi/agnesi.shtml
  3. ^ Lynn M. Osen, Women in Mathematics, 1975, p. 45.
  4. ^ サイモン・シン, Fermat's Enigma, p. 100.(サイモン・シン著、青木薫訳『フェルマーの最終定理』新潮社〈新潮文庫〉、2006年。ISBN 4-10-215971-1)
  5. ^ David J. Darling, The universal book of mathematics: from Abracadabra to Zeno's paradoxes, 2004, p. 8.

参考文献

外部リンク

  • Weisstein, Eric W. "Witch of Agnesi". mathworld.wolfram.com (英語).