ウィングレット

曖昧さ回避 この項目では、飛行機の翼の一部について説明しています。ウィングチップ(Wing tip)については「翼端」を、トヨタ自動車が開発したロボットについては「トヨタ・ウィングレット」をご覧ください。
曖昧さ回避 ウイングレット」はこの項目へ転送されています。日本の競走馬については「ウイングレット (競走馬)」をご覧ください。
ボーイング737におけるウィングレット有無と翼端渦の比較

ウィングレット(winglet)とは、航空機主翼端に取り付けられる小さな翼端板のことである。語源としてはwing「翼」+let「小さいもの」すなわち「小さい翼」[1] の意である。

概要

翼端が空中を移動すると、翼端後方には翼端渦と呼ばれる空気の渦が発生するが、これは翼端を後方に引く力を発生させ、空気抵抗(誘導抗力)を増大させる。ウイングレットは翼端附近の空気の流れを整流することで翼端渦を減少、あるいは発生方向を上方に移動させ、空気抵抗を減らし、燃費を向上させる効果がある。

翼端板の存在やある程度の効果は第二次世界大戦以前から知られていた。しかし、必要性のある航空機需要の少なさから、本格的な実用開発の試みはいったん途絶えた。

本格的な航空機体向けのウイングレットは1970年にNASAリチャード・T・ウィットコム(英語版)が改良し提唱した。条件にもよるが、旅客機運航で一般におよそ4%から5%程度の燃料を節減できるとされている。燃料削減効果は長距離の路線ほど大きくなる。短距離の路線では燃料削減効果が少ないことや空港設備や運用の問題から装備しないこともある。例えばボーイング747-400Dなど

機体の製造時に装備される場合が多いが、航空機メーカーやサードパーティー製の改修キットにより後付けされる場合もある[2]。近年の原油価格の高止まりにより、ウイングレットを後付けする改修を施しても、その後の運航における燃料費削減で十分に改修費用の回収が可能として、これを行う航空会社も増加している。例えば日本国内では、全日本空輸(ANA)が日本国内で初めて、2009年以降ボーイング767-300ER16機にウイングレットを順次装着することを決定している[3]

過去のリアジェットでは翼端にウイングチップ燃料タンクを装備していたが、ウィングレット程ではないが若干の効果を発揮していたとされる(現行機ではウィングレットを装備)[4]

風車の翼端

同様の抵抗軽減効果を狙い、プロペラ機のプロペラやヘリコプターのメインローター、風力発電用の風車などの端に似た形状のものが装着される例や、安定性を高めるため水平尾翼の端に装着する例(アグスタウエストランド AW139など)もある。自動車の車体に取り付けられるスポイラーやGTウイング等のリアウイングは翼断面をしているため、翼端から発生する翼端渦を抑制するために翼端板が取り付けられている。

種類

ウィングレット

ボーイング747-400のウィングレット
ボーイング737-800のウィングレット
ボーイング737-800のシミタール・ウィングレット
ボーイング737MAXシリーズの翼端

垂直尾翼に似た形状のもの。翼端からなめらかに連続した形状のものは特にブレンデッド・ウイングレットと呼ばれる。

また、エアバス社はA320シリーズに装着されるものをシャークレットと呼称している。

垂直尾翼と似た塗装が施される場合が多い。

ウィングチップ・フェンス

エアバス機のウィングチップ

矢じりのような形状。

レイクド・ウィングチップ

P-8Aの翼端
A350 XWBの翼端

主翼端に後退角をつけたもの。

スパイラル型

ダッソー ファルコン 50に取り付けられたSpiroid

ウィングレットの先端がらせん状に翼端へ繋がるSpiroidと呼ばれる形状。研究段階。

レースへの応用

大型のウィングレットを追加したナイジェル・ラムMXS-R
下向きのウィングレットを追加したピーター・ポドランセックジブコ エッジ540

燃費を考慮せずターンも多いエアレースでは装着時の影響について議論がありマイク・マンゴールドが試行した程度だった。しかし2014年シーズンでナイジェル・ラムがウィングレットを追加して好成績を収めた翌シーズンから、大型のウィングレットやウィングチップ・フェンスを追加する選手が増えている[5][6][7]

ピーター・ポドランセックは下向きのウィングレットを採用している。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 数年前までは機体受け渡し後に航空会社の依頼でボーイング社が装備を行っていたが、今は機体の発注時に装備したものを選択できる。
  2. ^ 日本向けの747-400Dでは、狭い日本の空港事情と、短距離フライトではメリット薄く装備されていないが、準備工事自体はされており、実際にANAが2機に装備して国際線仕様に変更したが、国際線需要の低迷などにより数年後に取り外して国内線に復帰した。
  3. ^ 飛行試験中に振動が発生した為、取り外された。

出典

  1. ^ Persosnal Dictionary Eigiro V
  2. ^ Learjet Maintenance and Parts - Banyan Air Service - リアジェット機のメンテナンスの他、自社製ウィングレットを販売する会社
  3. ^ 『本邦初 ボーイング767-300ERにウイングレット! 〜エコロジープラン2008-2011 の実現に向けて〜』(プレスリリース)ANAグループ、2008年7月11日。https://www.ana.co.jp/pr/08-0709/08-089.html2020年5月29日閲覧 
  4. ^ 世界の巨大工場Series7 Ep3
  5. ^ “機体について”. RED BULL AIR RACE CHIBA 2015 オフィシャルチケットサイト. 2015年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月29日閲覧。
  6. ^ 室屋義秀選手 インタビュー: 後編 | Red Bull Air Race[リンク切れ]
  7. ^ “増え続けるウイングレット”. Red Bull Air Race (2015年9月4日). 2015年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月29日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • ボーイング737におけるウィングレットの効果 (PDF) (英語)
航空機部品および航空機システム(英語版)
機体構造
  • 圧力隔壁
  • カバネストラット(英語版)
  • キャノピー
  • クラックアレスタ(英語版)
  • 航空機ドープ(英語版)
  • 航空機ファブリックカバー(英語版)
  • 航空機フェアリング(英語版)
  • フライングワイヤー(英語版)
  • フォーマー(英語版)
  • 胴体
  • ハードポイント
  • インタープレーンストラット(英語版)
  • ジュリーストラット(英語版)
  • 前縁
  • リフトストラット(英語版)
  • ロンジロン(英語版)
  • ナセル
  • リブ (航空工学)(英語版)
  • 翼桁
  • ストレススキン(英語版)
  • ストラット
  • 後縁(英語版)
  • 翼付根
  • 翼端
  • ウィングボックス(英語版)
スタビライザー
フライトコントロール(英語版)
操縦桿
  • センタースティック(英語版)
  • サイドスティック(英語版)
  • 人工感覚装置(英語版)
  • 失速警報装置
  • スティックプッシャー(英語版)
動翼
空力
  • 能動空力弾性翼
  • アダプティブコンプライアントウィング(英語版)
  • アンチショックボディ(英語版)
  • チャンネルウィング(英語版)
  • ドッグトゥース
  • リーディング・エッジ・カフ(英語版)
  • ストール・ストリップ(英語版)
  • ストレーキ
    • リーディング・エッジ・エクステンション(英語版)
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