エクスプレス補給キャリア

ELC1および2を搭載したシャトル(STS-129)
エクスプレス補給キャリア
所属 NASA/ゴダード宇宙飛行センターNASA/ジョンソン宇宙センター
主製造業者 ゴダード宇宙飛行センター
任務 物資の運搬/軌道上での予備品の保管場所
周回対象 地球
打上げ日時 2009年11月、2011年2月、5月
打上げ機 スペースシャトル
任務期間 11年
質量 4,445 kg (9,800 lb)
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エクスプレス補給キャリア(エクスプレスほきゅうキャリア、英語: ExPRESS Logistics Carrier、略称:ELC)は、国際宇宙ステーション(International Space Station、略称:ISS)の曝露機器の予備品を運搬・保管する輸送キャリアであり、ISSのトラスに4基が設置された。ISSから電力および通信インタフェースの供給を受けられる。ExPRESSは「Expedite the Processing of Experiments to the Space Station(宇宙ステーションに実験の進行を促進させる)」の頭文字を取ったもので、メリーランド州グリーンベルトのゴダード宇宙飛行センターが主に開発を担当し、ジョンソン宇宙センターおよびマーシャル宇宙飛行センターがこれを補佐した。当初は「エクスプレス・パレット(Express Pallet)」と呼ばれ、与圧部で使われている「エクスプレス・ラック(Express Rack)」の曝露機器版として考案されたものであった。ELCを使用することで科学者は独自の衛星などを用意しなくても、真空宇宙空間に実験機器を設置できるようになった。ELCはISSのトラス上に設置されている共通結合システム(Common Attach System、略称:CAS)に直接取り付けられる[1][2]

詳細

ELCの電力系サブシステムにはエクスプレスキャリア電子機器(ExPRESS Carrier Avionics, ExPCA)があり、実験装置に電源を供給し、ISSとのデータの送受信を行う。ExPCA内部では、コールドファイアというCPUを基礎にして作られたコンピューターソフトウェアおよび関連装置が「飛行制御機器(Flight Controller Unit, FCU)」を構成している。FCUは無料公開即時制御ソフトであるRTEMSで稼働し、ELCのコマンドおよびデータ処理(C&DH)システムとして下記の目標を達成すべく、コンピューターと通信の発信源となっている。

  • ISSとの低速データリンク(Low-Rate Data Link, LRDL)を介して、ELC本体及び搭載している実験機器へのコマンドを受信する。ExPCAは軍事基準1553(MIL-STD-1553(英語版))で規定されたISSのローカルバスのリモートターミナルとして作動する。またExPCAや搭載実験機器からISSに対してハウスキーピングデータを送ることもできる。
  • ExPCAからELCに搭載している実験機器にLRDLを介してISSからの実験指示を送り、また実験機器からISSに向けてデータを送信する。これもMIL-STD-1553で規定されていることで、ExPCAはバス・コントローラー(Bus Controller)としても機能する。
  • ELCとISSとの間の高速データリンク(High-Rate Data Link, HRDL)を提供する。これは光ファイバーケーブルを使用することで毎秒95.0 MBのデータの転送が可能である。この装置の主目的は、実験機器からISSへの大容量のデータを送信することである。
  • ELCと搭載実験機器の間でイーサネットを使用したローカル・エリア・ネットワーク(LAN)を形成し、毎秒6.0MBのデータの送受信をする。この装置の主目的は、科学的実験データをHRDLを介してISSとやりとりすることである。
  • 各エクスプレス搭載物接続器(ExPRESS Payload Adapter, ExPA)では、6個のアナログ入力チャンネルをサポートする。
  • 各ExPAでは、6個の独立したコマンドチャンネルをサポートする。

ELC-2には、ELCに初めて搭載される実験装置が設置された。これはMISSE-7(Materials for ISS Experiment-7)と呼ばれる材料曝露実験装置であった[3]

ELCの打ち上げ実績

ELC-1とELC-2は、2009年11月16日に打ち上げられたスペースシャトル・アトランティスSTS-129)で[4]、ELC-4は2011年2月24日ディスカバリーSTS-133)で[5]、ELC-3は2011年5月16日エンデバー(STS-134)でISSに搬送された。

ELC-5は、シャトル搭載マニフェスト上では搭載する余裕がなかったため打上げられなかった。

打ち上げ日 計画名 シャトル機体 ELC 設置場所
2009年11月16日 STS-129ISS ULF3) アトランティス ELC-1およびELC-2 P3トラス下側(ELC-1)、S3トラス上側右舷(ELC-2)
2011年2月24日 STS-133ISS ULF5) ディスカバリー ELC-4 S3トラス下側左舷
2011年5月16日 STS-134ISS ULF6) エンデバー ELC-3 S3トラス上側

関連項目

  • 国際宇宙ステーションで行われる科学研究(英語版)

脚注

  1. ^ “EXPRESS Racks 1 and 2”. 2010年5月11日閲覧。
  2. ^ Johnson Space Center (2006). EXPRESS Logistics Carrier (ELC) Development Specification (Revision B ed.). International Space Station Program. SSP 52055 
  3. ^ “MISSE-7”. 2010年5月11日閲覧。
  4. ^ “NASA Shuttle Consolidated Launch Manifest, Space Shuttle Flights and ISS Assembly Sequence”. 2010年5月11日閲覧。
  5. ^ http://www.nasa.gov/mission_pages/shuttle/shuttlemissions/sts133/index.html

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、エクスプレス補給キャリアに関連するカテゴリがあります。
  • ExPRESS Logistics Carrier - brochure - ESA
概要
構成要素
  • ザーリャ(基本機能モジュール)(FGB)
  • ズヴェズダ(サービスモジュール)
  • ユニティ(ノード1)
  • ハーモニー(ノード2)
  • トランクウィリティー(ノード3)
  • デスティニー(実験用)(USLab)
  • コロンバス(実験用)
  • きぼう (PM, ELM-PS, EF)
  • クエスト(エアロック)
  • ラスヴェット (MRM 1)
  • ポイスク (MRM 2)
  • レオナルド (PMM)
  • キューポラ
  • 統合トラス構造 (ITS)
  • ナウカ(多目的実験モジュール)(MLM)
  • 欧州ロボットアーム (ERA)
  • プリチャル
支援機材
  • カナダアーム2 (MSS/SSRMS)
  • デクスター (SPDM)
  • ストレラ・クレーン
  • きぼう(ロボットアーム)
  • 船外保管プラットフォーム (ESP)
  • エクスプレス補給キャリア (ELC)
  • 与圧結合アダプタ (PMA)
  • 電気系統(英語版)
  • 生命維持システム
複数回使用
  • 多目的補給モジュール (MPLMs)
  • きぼう (ELM-ES)
  • ピアース(エアロック / ドッキングモジュール)(DC-1)
キャンセル
  • 推進モジュール
  • セントリフュージ実験モジュール (CAM)
  • 居住モジュール
  • 乗員帰還機 (CRV/ACRV)
  • 汎用ドッキングモジュール (UDM)
  • ロシア研究モジュール (RM)
  • 暫定制御モジュール (ICM)
  • ロシアのノードモジュール (NM)
  • 科学電力モジュール (SPM)
  • ノード4
補給機
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