ジョージ・バークリー

ジョージ・バークリー
George Berkeley
生誕 (1685-03-12) 1685年3月12日
アイルランドキルケニー県
死没 (1753-01-14) 1753年1月14日(67歳没)
イングランドオックスフォード
時代 18世紀の哲学
地域 西洋哲学
学派 観念論経験論
研究分野 キリスト教形而上学認識論言語哲学数学の哲学知覚
主な概念 主観的観念論(Subjective idealism)、Master argument
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ジョージ・バークリー(George Berkeley、1685年3月12日 - 1753年1月14日)は、アイルランド哲学者聖職者である。主著は『人知原理論』。バークレー、バークリとも。

生涯

  • 1685年3月12日 - キルケニーに生まれる。父ウィリアムは軍人。
  • 1696年 - キルケニー大学入学。
  • 1707年 - ダブリンのトリニティ・カレッジで修士号取得。フェローとして大学に残る。
  • 1709年 - 『視覚新論』刊行。
  • 1710年 - 『人知原理論』刊行。
  • 1713年 - 『ハイラスとフィロナスの対話』刊行。
  • 1721年 - トリニティ・カレッジで神学博士号取得。
  • 1728-32年 - 結婚直後、アメリカ新大陸神学校を作るべくロードアイランドのミドルタウンに移住するが資金が充分集まらず帰国。
  • 1734年 - アイルランド国教会主教に叙任される。
  • 1753年1月14日 - 逝去。

カリフォルニア大学バークレー校の所在地、カリフォルニア州バークレー市はジョージ・バークリーにちなんだものである。

思想

「存在することは知覚されることである」(: Esse percipi est: To be is to be perceived )という基本原則を提唱したとされている。

バークリーは、ジョン・ロック経験論を承継し、知覚によって得られる観念の結合・一致・不一致・背反の知覚が知識であり、全ての観念と知識は人間が経験を通じて形成するものだとした。バークリーの著書『ハイラスとフィロナスとの三つの対話』は、素朴実在論的な考え方をするハイラスにバークリーの代弁者であるフィロナスが反論する対話篇の形をとっている。素朴実在論によれば、わたしが知覚するものは存在する。わたしの心とわたしの体も存在する。わたしが知覚している目の前の机も世界も存在している。しかし、バークリーによれば、世界は観念であり、たとえば私が目の前の机を叩いてその硬さを認識したとしても、「机の固さ」としてではなく、「知覚として」認識しているわけであり、「机自体」を認識していることにはならない。このような彼の考え方は、主観的観念論独我論と批判された。このような批判を受けた彼は『視覚新論』をまず発表して人々をある程度彼の考えに慣らし、続いて彼が本当に言いたかった『人知原理論』を発表するという手順をとった。わたしの心は一つであり、分割することはできず、これ以上延長することもできず、形もない。ゆえに私の心は不滅であり、これは実体である。わたしの目の前の机もわたしの身体も世界すらもわたしが知覚する限りにおいて「わたしの心の中に存在する」のであって、事物は観念の束である[1]。彼は物質を否定し、感覚的な観念の原因は神であるとして、知覚する精神と神のみを実体と認めた。彼は聖職者であり、宗教的見地から魂の不滅と神の存在を結びつける必要があった。また、彼は物質を実体であると認めることは唯物論的無神論に結びつくと考えたのである。

バークリーは抽象観念の存在を否定する[2]。抽象観念とは、具体的な観念、例えば目の前の机やパソコンから抽出された机一般の観念やパソコン一般の観念である。このような抽象観念の起源はプラトンにまで遡るが、その存在を肯定する立場(イデア論など)と否定する立場(唯名論など)とに分かれる。

またニュートンの流率法(微積分学)を厳密な数学ではないとしてしりぞけた。分数 d s / d t {\displaystyle ds/dt} はつまるところ無意味な式 0 / 0 {\displaystyle 0/0} であり、計算の途中では d t {\displaystyle dt} 0 {\displaystyle 0} ではないとしながら、最後に d t {\displaystyle dt} 0 {\displaystyle 0} に等しいと置くのは間違った推論であると述べた。


【経済思想】 「信用(債務)は(論理的によも歴史的にも)貨幣にも物々交換にも先立つ」ことの発見。 これは"The Querist"(1735 邦題「問いただす人」)でバークリーが史上初めて主張した。

 貨幣のない世界でパン100個と上着1着が等価だと理解されているとして、上着1枚余剰だが相手に交換出来るパンが10個しかなければどうするか。パン90個分を「つけ」にすれば良い。 つまり服屋がパン屋に信用(債務)を与えればよい。 この信用の尺度、符牒の一つとして貨幣が使われるようになった。  物々交換(等価交換)→貨幣経済→信用経済という見方は、貨幣による等価交換が浸透した後の時代から見た錯覚に過ぎず、初めに信用取引があり、その特殊形態として等価交換(即時清算)が生まれた。  言われてみれば実に当然のことだが、貨幣経済の只中でこれを発見するには、バークリーの如き空前絶後の頭脳明晰を必要とした。  マクラウドは銀行実務の中でこれにある程度気づいたのだろうが、あくまでもバークリーを読みそれを敷衍したもの。

「ある人は、自分なりのやり方で、自分の消費しうるもの以上を取得したときに、その余剰物と交換に、自分にないものを満たそうとした。これは信用を生まざるを得ない。こういう移転を容易にし、この信用を記録し流通させるために、彼等はやがて、特定の割符、表示、切符あるいは計算具を、協定によって作り出そうとしたのである。(第1部 質問49)」 「どのような媒介物(金属であろうと紙であろうと)が用いられようとも、すべての流通はひとしく信用の流通ではないだろうか。そうして金の方が信用よりも強い通用力をもつなどといえるであろうか。(第3部 質問10)

「国民の富全体が実は国立銀行の資産にほかならないことを理解するのに、何らかの困難があろうか。しかも、国立銀行の信用にかんしてすべての人々を安心させるのに、この点を正確に理解させることほど必要なことがあるであろうか。(第3部質問84)」

「それゆえ、国立銀行は金鉱にもまして有益なものではないだろうか。(第2部質問22) 「だがもし、(国立銀行の設立により)ペンを一走り走らせるだけで100ポンドもの資金を調達できるようになれば、そのことは民間人にとって大きなめぐみではなかろうか。(第2部質問27)」

「国立銀行は国家のもつ真の化金石(Philosopher's Stone 賢者の石)ではなかろうか。」第3部質問132

また、ミルが「経済学原理」1848でフィッシャーに60年先駆けて貨幣の流通速度概念に着目しているが、その100年以上前にバークリーは 「迅速に流通するより少ない貨幣は、事実上、緩慢に流通するより多い貨幣に相当するのではなかろうか。換言すれば、流通が貨幣の量と逆に動く場合に、国民が損をすることがありうるだろうか。(第1部 質問22)

と既に指摘している。ミルはバークリーの書評まで書いている(「問いただす人」邦訳解説参照)ので、バークリーの影響は明らか。  

著作

  • Philosophical Commentaries (1707–08)(『哲学的評注』)(バークリの研究ノート)
    『哲学』10号(哲学書房、1990)に抄訳あり(一ノ瀬正樹訳)
  • An Essay towards a New Theory of Vision (1709)
    下條信輔・植村恒一郎・一ノ瀬正樹訳『視覚新論』(勁草書房、1990)
  • A Treatise Concerning Principles of Human Knowledge (1710)
    大槻春彦訳『人知原理論』(岩波文庫、1958)
    宮武昭訳『人知原理論』(ちくま学芸文庫、2018)
  • Three Dialogues between Hylas and Philonous (1713)
    名越悦・名越諭訳『ハイラスとフィロナスとの三つの対話』(薩摩書館)
    戸田剛文訳『ハイラスとフィロナスの三つの対話』(岩波文庫、2008)
  • De Motu(英:On Motion)(1721)(『運動論』)
  • Alciphron: or the Minute Philosopher (1732)(『アルシフロン あるいは小粒な哲学者』)
  • The Theory of Vision or Visual Language ... Vindicated and Explained (1733)
    『視覚論弁明』、上述『視覚新論』所収
  • The Analyst (1734)(『アナリスト』)
  • The Querist (1735–37)
    川村大膳・肥前栄一訳『問いただす人』(東京大学出版会
  • Siris (1744)(『サイリス』)

脚注

  1. ^ “George Berkeley”. Stanford Encyclopedia of Philosophy. 2021年9月28日閲覧。 第3.1.1節参照。
  2. ^ 詳しくは『人知原理論』序論第6節乃至第25節参照。

参考文献

関連項目

外部リンク

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