文献学

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文献学(ぶんけんがく、英語: philologyドイツ語: philologie)は、過去文章、文献、言語を扱う学問である[注 1]

概要

文献学の歴史は古く、その淵源はホメーロスとするのが一般的である[4]。本格的な文献研究は、ルネサンスを経て近代歴史学において発達した[4]

やがて諸外国の学史において文献学という用語は、言語作品および文化的に重要な文章を理解するために不可欠な歴史的、文化的な変遷や文学的な側面としての言語を対象とする学問を意味する。すなわち文献学とは特定の言語の重要な歴史、著作物の理解、文法的および修辞的、歴史的研究を指す。いわば言語学は文献学の中で培われた学問である[5]

歴史言語学という狭い意味での文献学は、19世紀において初めての科学的な言語研究であったが、20世紀初頭には現代的な言語学にその地位を譲った。しかし、ある対象に接近する手掛かりを得ようとする時(初歩的・基礎的な取り組み)において、今もきわめて有効である[6]

諸分野

比較言語学

言語間の関係を研究するのが比較言語学である。18世紀にはじめて注目されるようになったサンスクリット語とヨーロッパ系言語の類似性は、インド・ヨーロッパ語族の考え方を生み出した。また過去の言語を解読、理解するために希少言語を研究することも19世紀に始まった。

原典考証

複数の写本を元に過去の原典の再現を対象とする学問分野。再現するに当たっての文献的問題は大いに解釈との関連があり、研究者の思想的背景や研究手法の違いなどにより異なった結論が導かれることもある。

古代文章の解読

古代の文字の解読を対象とする。古代エジプトアッシリアの古代文字の解読では、19世紀に著しい成果をあげており、とりわけ1822年シャンポリオンによるロゼッタ・ストーンの解読以来、多くの試みがなされている。例えば線文字A線文字Bは、いずれも地中海文明を知るにあたって重要な文字とされるが、線文字Bはマイケル・ヴェントリスが「古代ギリシア文字として解読した」と発表したが[注 2]、線文字Aはいまだ解読されていない。

受容

日本における文献学は、ドイツに留学した芳賀矢一が、東京帝国大学講義していたのをもって嚆矢とする[7]。芳賀は「国学者が従来やって来た事業は文献学者の事業にほかならないが、その方法において改善すべきものがあり、その性質において拡張すべきものがある」として、「日本文献学」を提唱した[8]。国学者によって形成された研究の伝統を主軸に、ドイツ文献学の方法において近代化したのである[7]

主な文献学者

詳細は「Category:文献学者」を参照

脚注

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注釈

  1. ^ 書誌学」と同じような意味で使われることが多い[1]。これは訳語および原語 philologie に照らすと、曲解もしくは誤用である[2]。もちろん、書物が文学研究の根底を形成する要素である以上、技術的な問題として書誌学に対する一定の理解は必要といえる[3]
  2. ^ いくつかの異論もある[要出典]

出典

参考文献

著書
論文
  • 岡田希雄「國語學國語學史の書誌學的研究」『立命館文學』第1巻第7号、1934年7月、71-101頁。 
  • 池田亀鑑「古典文献学の方法論について」『國語と國文學』第20巻第1号、1943年1月、1-22頁。 
  • 松田武夫「文献学的研究の批判と推進:古典本文への伝承主体の投影」『國語と國文學』第38巻第5号、1961年5月、56-65頁。 
  • 久曾神昇「文献学的方法」『國語と國文學』第42巻第10号、1965年10月、66-76頁。 
  • 大久保正「文献学の方法」『解釈と教材の研究』第12巻第13号、学燈社、1967年10月、39-43頁。 
  • 松村博司「文献学と文献学的方法」『日本文学研究の諸問題』三省堂〈講座日本文学12〉、1969年6月、163-185頁。 
  • 池田利夫「文献学的方法とは何か」『解釈と鑑賞』第44巻第12号、至文堂、1979年11月、14-31頁。 
  • 南不二男「現代の文献学」『言語生活』第405号、筑摩書房、1985年8月、27頁。 

関連文献

  • 佐佐木信綱國文學の文獻學的研究』岩波書店、1935年7月。ISBN 4000091182
  • 山脇毅『源氏物語の文獻學的研究』創元社、1944年10月
  • 鈴木一成『日蓮聖人遺文の文献学的研究』山喜房佛書林、1965年4月
  • 安本美典神武東遷:数理文献学的アプローチ』中央公論社中公新書178〉、1968年11月
  • 辻直四郎『現存ヤジュル・ヴェーダ文献:古代インドの祭式に関する根本資料の文献学的研究』東洋文庫〈東洋文庫論叢52〉、1970年3月。
  • 村山七郎『北千島アイヌ語:文献学的研究』吉川弘文館、1971年3月。ISBN 4642085076
  • 重見一行『教行信証の研究:その成立過程の文献学的考察』法藏館、1981年7月
  • 村山七郎『クリル諸島の文献学的研究』三一書房、1987年8月
  • 鈴木佳秀『申命記の文献学的研究』日本基督教団出版局、1987年12月
  • 池田利夫『源氏物語の文献学的研究序説』笠間書院〈笠間叢書222〉、1988年12月
  • 武井和人『中世和歌の文献学的研究』笠間書院〈笠間叢書221〉、1989年7月
  • 望月郁子『類聚名義抄の文献学的研究』笠間書院、1992年2月
  • 村上征勝『真贋の科学:計量文献学入門』朝倉書店〈行動計量学シリーズ6〉、1994年9月。ISBN 4254126468
  • 小野田光雄『古事記釋日本紀風土記ノ文獻學的研究』続群書類従完成会、1996年2月。ISBN 4797107758
  • 伊藤瑞叡『なぜいま三大秘法抄か:計量文献学入門』隆文館〈三大秘法抄の研究 三部作 その1〉、1997年8月。ISBN 4897473330
  • 伊藤瑞叡『三大秘法抄なぜ真作か:計量文献学序説』隆文館〈三大秘法抄の研究 三部作 その2〉、1997年11月。ISBN 4897473349
  • 荊木美行『風土記逸文の文献学的研究』皇學館出版部、2002年3月。ISBN 4876441073
  • 林忠鵬『和名類聚抄の文献学的研究』勉誠出版、2002年4月。ISBN 4585030883
  • 村上征勝『シェークスピアは誰ですか?:計量文献学の世界』文藝春秋文春新書〉、2004年10月。ISBN 4166604066
  • 飯謙『旧約詩編の文献学的研究』新教出版社、2006年2月。ISBN 4400127672
  • 永冨青地『王守仁著作の文献学的研究』汲古書院、2007年2月。ISBN 9784762928093
  • 庄垣内正弘『ウイグル文アビダルマ論書の文獻學的研究』松香堂、2008年2月。ISBN 9784879746115
  • 今野真二『文献日本語学』港の人、2009年11月。ISBN 9784896292145
  • 王招國『敦煌本『御註金剛般若經宣演』の文獻學的研究』大東出版社、2013年6月。ISBN 9784500007554
  • 久保木哲夫『うたと文献学』笠間書院、2013年11月。ISBN 9784305707062
  • 浦山きか『中國醫書の文獻學的研究』汲古書院、2014年2月。ISBN 9784762965234
  • 村上征勝・金明哲・土山玄・上阪彩香『計量文献学の射程』勉誠出版、2016年3月。ISBN 9784585240075
  • 秋山陽一郎『劉向本戰國策の文献学的研究』朋友書店、2018年7月。ISBN 9784892811722
  • 長谷部剛『杜甫詩文集の形成に関する文献学的研究』関西大学出版部、2019年3月。ISBN 9784873546940
  • 藪敏裕『『毛詩』の文獻學的研究』汲古書院、2020年2月。ISBN 9784762966583
  • 望月海慧・金炳坤編著『妙法蓮華経優波提舎の文献学的研究』身延山大学国際日蓮学研究所〈法華経研究叢書2〉、2020年4月。ISBN 9784905331131
  • 青木佳伶『『注大般涅槃経』の文献学的研究』法藏館、2022年2月。ISBN 9784831863928
  • 家入葉子・堀田隆一『文献学と英語史研究』開拓社〈最新英語学・言語学シリーズ21〉、2023年1月。ISBN 9784758914215

関連項目

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