リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド

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リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
ジョージ・ハリスンスタジオ・アルバム
リリース
録音 1971年2月1972年10月-1973年3月 Apple Studio London,
FPSHOT, Oxfordshire
Abbey Road Studio London
ジャンル ロック
時間
レーベル Apple(UK&US)/アップル/東芝音楽工業(初発)
アップル/パーロフォン/東芝EMI(現行盤)(JPN)
プロデュース ジョージ・ハリスン. フィル・スペクター(一曲のみ参加)
専門評論家によるレビュー
  • All Music Guide link
ジョージ・ハリスン アルバム 年表
バングラデシュ・コンサート
(1971年)
リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
(1973年)
ダーク・ホース
(1974年)
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リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』(Living in the Material World)は、1973年6月22日に発表されたジョージ・ハリスンオリジナル・アルバム。日本では同年7月22日に東芝音楽工業(現:EMIミュージック・ジャパン)からリリースされた。

ビルボード・アルバム・チャートで5週連続1位、1973年度年間ランキング第43位、『キャッシュボックス』誌では4週連続1位を獲得し、1973年度年間ランキング47位だった。全英では最高位第8位。また、「トライ・サム・バイ・サム」は、2003年に、デヴィッド・ボウイのアルバム『リアリティ』にてカヴァーされた。

概要

ハリスンは1971年、自身が主催したチャリティー・コンサート『バングラデシュ難民救済コンサート』の準備や、自身の師匠であるラヴィ・シャンカルのドキュメンタリー映画の為のプロモーション等で、自身のレコーディングに使う時間が無かったとのこと[1]。この空白の時期を通し、ハリスンのヒンドゥー教の精神性、クリシュナの意識の傾倒が更なる高さに到達したとされている[2]

1972年8月、ドキュメンタリー映画『コンサート・フォー・バングラデシュ』が全世界で公開。ハリスンはその後、ヨーロッパへ休暇に出かけ、一日中ハレ・クリシュナのマントラを唱えていたと後に語っている[3]。ハレ・クリシュナの信者を公表している宗教学者のジョシュア・グリーンは、このハリスンの休暇をハリソンが本アルバムを録音するための「準備」と述べている[4]

楽曲

楽曲は前作のセッションで残された曲ではなく、「トライ・サム・バイ・サム」以外の楽曲は1971年から1972年にかけて作られた[5]

また、バガヴァッド・ギーターの一節を取り入れた楽曲等、神に対する思いが綴られた楽曲が多く存在する[4]

録音

前作でプロデュースを務めていたフィル・スペクターは、本作では1曲のみのプロデュースを行っている。元々、ハリスンはスペクターをプロデューサーに迎えアルバムを制作していたが、スペクターの不安定な行動と飲酒が目立つようになり遅れが生じたため、自身でプロデュースを行うことに決定した[6]

一部では、本アルバムは1973年の1月か2月に発売、タイトルは『ザ・ライト・ザット・ハズ・ライティッド・ザ・ワールド』、ローリングストーン誌はエリック・クラプトンが共同プロデューサーを務め、1972年12月20日に発売決定すると誤報を伝えた[6]

レコーディング

レコーディング・セッションはクラウス・フォアマン によると、ハリスンの自宅スタジオであるFPSHOTで行われたが、一部はロンドンのアップル・スタジオで行われたと語っている[6]。 また、ジム・ケルトナーによると、ハリスンは本作のレコーディング中、「肉体的にピークに達していた」と述べており、禁煙し、ヒンドゥー教の数珠を付けていたと語っている[7]

レコーディングでハリスンはアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターのパートを主に担当。前作に引き続き、フォアマンとゲイリー・ライトが参加し、ジョン・バーハムがストリングスとコーラスのアレンジを行った[6]。また、『バングラデシュ難民救済コンサート』にも参加したケルトナーとニッキー・ホプキンス、ジム・ホーンが新たに参加した[6]

オーバーダブ&ミキシング

自宅にボブ・ディランと妻を招いたハリスンは、1973年1月より再びアルバム制作を開始した[8]。その後、1月下旬からボーカル、パーカッション、ハリスンのスライド・ギター、ホーンからなるアルバムのベーシック・トラックに大規模なオーバーダビングが行われる[8]

バーハムによるオーケストラとコーラスは3月上旬にオーバーダビングが終了した[4]

アートワーク

ハリスンは前作同様、アルバムのアートデザインをデザイナーのトム・ウィルクス、新たにウィルクスのビジネスパートナーであるクレイグ・バウンに依頼[6]、歌詞カードを挿入するシートには、アルジュナとともに馬車に乗ったクリシュナが、魔法の七頭馬であるウチャイ・シュラヴァスに引かれている姿が描かれている[6]

アルバム・ジャケットは、ヒンドゥー教のメダルを持ったハリスンの手のキルリアン写真が使用されている[9]。写真はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の超心理学学部で撮影された[6]

ダブルジャケットの左側には、ハリスン、スター、ホーン、フォアマン、ホプキンス、ケルトナー、ライトといったレコーディングに参加したミュージシャン達が、長いテーブルにつき、食事とワインを楽しんでいる様子が描かれている[6]レオナルド・ダ・ヴィンチの代表的な作品である『最後の晩餐』の意図的なパロディーであり[10]、撮影は写真家のケン・マーカスにより、カリフォルニアの芸能弁護士であるエイブ・サマーの自宅で撮影された[6]

このジャケットのテーブルの横に乳母車と看護師が写されているのは、当時のハリスンの妻であるパティ・ボイドが子供を持てないこと、無人の車椅子は、1970年に死去したハリスンの母親であるルイーズ・ハリスンを偲んでいるのではないかと考察されている[6]

リイシュー

2006年

2006年9月25日、本作のリイシュー盤が発売された。2006年最新のデジタル・リマスタリングが施され、新たに2曲がボーナス・トラックとして追加。フルカラーのブックレットが付属し、新たな写真やライナーノーツ、ハリスンの手書きの歌詞と楽曲解説、DVDが新たに追加された[11]

DVDには、1991年にハリスンがクラプトンと共に行った日本公演での「ギヴ・ミー・ラヴ」の映像、アーカイブ映像のスライドショーと共に「ミス・オーデル」らが流れる映像、1973年の映像をバックに「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」が流れる映像が収録されている[12]

2014年

2014年9月22日には、2014年最新のリマスタリングを施し再発売された[13]。内容は基本2006年盤と同様であるが、新たにボーナス・トラックとして「バングラデシュ」が追加されているほか、日本盤のみSHM-CDで発売されている[14]

収録曲

  • All Songs by George Harrison

Side A

  1. ギヴ・ミー・ラヴ - Give Me Love (Give Me Peace on Earth) (3:36)
    本作唯一のシングル・カット曲。全米1位。
  2. スー・ミー、スー・ユー・ブルース - Sue Me, Sue You Blues (4:48)
    ジェシ・エド・デイヴィスへの提供曲のセルフ・カバー
  3. ザ・ライト・ザット・ハッド・ライテッド・ザ・ワールド - The Light That Had Lighted The World (3:31)
  4. ドント・レット・ミー・ウェイト・トゥー・ロング - Don't Let Me Wait Too Long (2:57)
  5. フー・キャン・シー・イット - Who Can See It (3:52)
  6. リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド - Living in the Material World (5:31)

Side B

  1. ザ・ロード・ラヴス・ザ・ワン - The Lord Loves the One (That Loves the Lord) (4:34)
  2. ビー・ヒア・ナウ - Be Here Now (4:09)
  3. トライ・サム・バイ・サム - Try Some, Buy Some (4:08)
    ロニー・スペクターへの提供曲のセルフ・カバー(バッキング・トラックは同一)
  4. ザ・デイ・ザ・ワールド・ゲッツ・ラウンド - The Day the World Gets 'Round (2:53)
  5. ザット・イズ・オール - That is All (3:43)

Additional Track

2006年にEMIから再発された際に追加されたボーナス・トラック

  • ディープ・ブルー - Deep Blue (3:47)
    1971年にリリースされたシングル「バングラデシュ」のB面に収録されていた。
  • ミス・オーデル - Miss O'Dell (2:33)
    本作から唯一のシングル「ギヴ・ミー・ラヴ」のB面に収録されていた。

Bonus DVD

2006年にEMIから再発された際のスペシャル・エディション版付属DVD。

  • ギヴ・ミー・ラヴ - Give Me Love(Give Me Peace on Earth) (Recorded at Tokyo Dome December 15th 1991)
    ライブ・ビデオ(未発表)
  • ミス・オーデル - Miss O'Dell (Alternative version) (2:29)
    ヴォーカル・トラックの別バージョン(未発表)
  • スー・ミー、スー・ユー・ブルース - Sue Me, Sue You Blues (Acoustic Demo version) (4:48)
    デモ・バージョン(未発表)
  • リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド - Living in the Material World
    ビデオ・クリップ(未発表)

クレジット

チャート

ウィークリーチャート

Original release
Chart (1973–74) Position
Australian Go-Set Top 20 Albums[15] 1
Australian Kent Music Report[16] 2
Belgian Albums Chart[17] 1
Canadian RPM 100 Albums[18] 1
Dutch MegaChart Albums[19] 5
French SNICOP Albums Chart[20] 10
Japanese Oricon LPs Chart[21] 9
Norwegian VG-lista Albums[22] 4
Spanish Albums Chart[23] 1
Swedish Kvällstoppen Chart[17][24] 2
UK Albums Chart[25] 2
UK Melody Maker Pop 30 Albums[26] 5
US Billboard Top LPs & Tape[27] 1
US Cash Box Top 100 Albums[28] 1
US Record World Album Chart[29] 1
West German Media Control Albums[30] 20

リイシュー
Chart (2006) Position
French SNEP Albums Chart[20] 14
Japanese Oricon Albums Chart[31] 33
US Billboard Top Pop Catalog[32] 36

年末チャート

Chart (1973) Position
Australian Albums Chart[33] 24
Dutch Albums Chart[34] 39
French Albums Chart[35] 16
US Billboard Year-End[36][37] 43

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Chip Madinger & Mark Easter, Eight Arms to Hold You: The Solo Beatles Compendium, 44.1 Productions pp. 439–40.
  2. ^ Simon Leng, While My Guitar Gently Weeps: The Music of George Harrison, Hal Leonard
  3. ^ Alan Clayson, George Harrison, Sanctuary
  4. ^ a b c Joshua M. Greene, Here Comes the Sun: The Spiritual and Musical Journey of George Harrison, John Wiley & Sons
  5. ^ Chip Madinger & Mark Easter, Eight Arms to Hold You: The Solo Beatles Compendium, 44.1 Productions pp. 439.
  6. ^ a b c d e f g h i j k Bruce Spizer, The Beatles Solo on Apple Records, 498 Productions
  7. ^ Mat Snow, "George Harrison: Quiet Storm", Mojo, November 2014, pp. 66–73
  8. ^ a b Keith Badman, The Beatles Diary Volume 2: After the Break-Up 1970–2001, Omnibus Press
  9. ^ Gary Tillery, Working Class Mystic: A Spiritual Biography of George Harrison, Quest Books
  10. ^ Dale C. Allison Jr., The Love There That's Sleeping: The Art and Spirituality of George Harrison, Continuum
  11. ^ リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド ブックレットより pp. 33, 36.
  12. ^ "Living in the Material World Re-Issue"Archived 20 September 2020 at the Wayback Machine., georgeharrison.com, 22 June 2006 (retrieved 4 January 2023).
  13. ^ “リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド [SHM-CD]”. UNIVERSAL MUSIC JAPAN. 2023年1月4日閲覧。
  14. ^ “リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド [SHM-CD]”. UNIVERSAL MUSIC JAPAN. 2023年1月4日閲覧。
  15. ^ "Billboard Hits of the World", Billboard, 25 August 1973, p. 50 (retrieved 11 April 2014).
  16. ^ David Kent, Australian Chart Book 1970–1992, Australian Chart Book (St Ives, NSW, 1993; ISBN 978-0-646-11917-5).
  17. ^ a b "Billboard Hits of the World", Billboard, 11 August 1973, p. 65 (retrieved 9 April 2014).
  18. ^ "RPM 100 Albums, June 30, 1973" Archived 6 April 2014 at the Wayback Machine., Library and Archives Canada (retrieved 9 April 2014).
  19. ^ "George Harrison – Living in the Material World" Archived 14 March 2020 at the Wayback Machine., dutchcharts.nl (retrieved 9 April 2014).
  20. ^ a b "InfoDisc: Tous les Albums classés par Artiste > Choisir un Artiste dans la Liste" Archived 9 May 2015 at the Wayback Machine. (in French), infodisc.fr (retrieved 13 April 2014).
  21. ^ Oricon Album Chart Book: Complete Edition 1970–2005. Roppongi, Tokyo: Oricon Entertainment. (2006). ISBN 4-87131-077-9 
  22. ^ "George Harrison – Living in the Material World" Archived 27 February 2020 at the Wayback Machine., norwegiancharts.com (retrieved 9 April 2014).
  23. ^ Salaverri, Fernando (September 2005). Sólo éxitos: año a año, 1959–2002 (1st ed.). Spain: Fundación Autor-SGAE. ISBN 84-8048-639-2 
  24. ^ "Swedish Charts 1972–1975/Kvällstoppen – Listresultaten vecka för vecka" > Juli 1973 > 17 & 24 Juli Archived 23 March 2012 at the Wayback Machine. (in Swedish), hitsallertijden.nl (retrieved 13 February 2013).
  25. ^ "Artist: George Harrison" > Albums Archived 4 January 2013 at the Wayback Machine., Official Charts Company (retrieved 28 October 2013).
  26. ^ Castleman & Podrazik, p. 342.
  27. ^ Tony Lanzetta (dir.), "Billboard Top LP's & Tape" Archived 22 February 2017 at the Wayback Machine., Billboard, 14 July 1973, p. 64 (retrieved 21 February 2017).
  28. ^ "Cash Box Top 100 Albums", Cash Box, 14 July 1973, p. 37.
  29. ^ Lenny Beer (ed.), "The Album Chart", Record World, 14 July 1973, p. 28.
  30. ^ "Album – George Harrison, Living in the Material World" Archived 7 October 2014 at the Wayback Machine., charts.de (retrieved 3 January 2013).
  31. ^ “Highest position and charting weeks of Living in the Material World (reissue) by George Harrison”. oricon.co.jp. 2012年10月24日時点のジョージ・ハリスン-リリース-ORICON STYLE-ミュージック オリジナルよりアーカイブ。2011年9月13日閲覧。 Oricon Style (retrieved 11 February 2012).
  32. ^ "Billboard Albums", Billboard, 14 October 2006, p. 76 (retrieved 25 November 2014).
  33. ^ David Kent, Australian Chart Book 1970–1992, Australian Chart Book (St Ives, NSW, 1993; ISBN 0-646-11917-6).
  34. ^ “Dutch charts jaaroverzichten 1973” (ASP) (オランダ語). 2014年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月2日閲覧。
  35. ^ “Les Albums (CD) de 1973 par InfoDisc” (PHP) (フランス語). 2012年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。 infodisc.fr (retrieved 13 April 2014).
  36. ^ "Billboard 1970's Album Top 50 (Part 1) > 1973" Archived 6 March 2012 at the Wayback Machine., 7 December 2007 (retrieved 13 April 2014).
  37. ^ "Top Pop Albums of 1973" Archived 4 December 2012 at Archive.is, billboard.biz (retrieved 11 February 2012).

外部リンク

  • Album Lyrics - アルバム収録曲の歌詞
シングル
1970年
1971年
1973年
  • ギヴ・ミー・ラヴ
1974年
1975年
1976年
1977年
1979年
1981年
1982年
1985年
1987年
1988年
1989年
2003年
スタジオ・アルバム
ライブ・アルバム
ベスト・アルバム
ボックス・セット
  • ダーク・ホース・イヤーズ 1976-92
  • アップル・イヤーズ 1968-75
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