中期三畳紀

中期三畳紀(ちゅうきさんじょうき、Middle Triassic)は、中生代三畳紀を三分したうちの2番目の地質時代。約2億4720万年前から2億3700万年にあたり、古い順にアニシアン期・ラディニアン期に分けられる[1]恐竜はまだ出現していないが基盤的な恐竜様類が各地に分布し、魚竜も多様化していた時代であった。

地理と環境

約2億4000万年前(ラディニアン期)のパンゲア大陸

当時はパンゲア大陸が存在しており、全ての大陸が陸続きになっていた。中期 - 後期三畳紀前期三畳紀と比較して気温が低下したが、それでも平均地球気温は約25℃と高温であり、当時の陸上動物は乾燥気候への適応を余儀なくされた[2]。前期三畳紀は特にその初期においてペルム紀末の大量絶滅の爪痕が残っていた[3]が、中期三畳紀の海洋生態系は後述するように回復していたことが示唆されている。

動物相

海洋には既に魚竜が進出し多様化を遂げていた。中期三畳紀に出現したミクソサウルス下目は他の魚竜のグループと比べ小型であり、全長70 - 90センチメートル程度のミクソサウルスや全長1.5メートル程度のクダノハマギョリュウがいた[4]。これらとは別に、大型化を遂げたグループもいた。約2億4500万年前のタラットアルコンは不完全な頭骨の長さが60センチメートルに達し、全長は8.6メートルと現生のシャチに匹敵する大きさであったと推定されている。その体躯や大きく鋭い歯からタラットアルコンは当時の海洋生態系における頂点捕食者であったと考えられている。また、このような頂点捕食者の存在は、約2億5200万年前のペルム紀末の大量絶滅から海洋生態系が回復し、生態系の上位の生物を支えられるだけの生産量を取り戻していたことを意味する[5]

基盤的恐竜様類は中期三畳紀に出現していたことが確実視されており、ラゴスクスシレサウルスなどが知られている[3]。主な系統にはラゲルペトン科マラスクスシレサウルス科がおり、後者ほど恐竜に近縁な系統である。また約2億4300万年前(後期アニシアン期)のニアササウルス(英語版)はシレサウルス科よりも恐竜に近い可能性があり、最初期の恐竜そのものであったと考える研究者もいる。いずれにせよ、恐竜様類はこの時代に高い多様性を持っていたことになる[2]

同じく2億4300万年前にあたる地層のモエンコピ層(英語版)からは、アリゾナサウルスが産出している。これは偽鰐類の最古の化石記録であり、この時代までに偽鰐類が出現していたことが分かっている。それから300万年後の2億4000万年前の地層からは、ラウィスクス上科という偽鰐類の化石が産出している。ラウィスクス上科はティラノサウルス科にも似た強靭な顎を持つ動物食性動物で、当時の陸上生態系における頂点捕食者であったと考えられている。ラウィスクス上科は続く後期三畳紀末まで生息し、それまで恐竜の大型化を妨げていた可能性が高い[6]

出典

  1. ^ “INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART(国際年代層序表)”. 日本地質学会. 2021年3月10日閲覧。
  2. ^ a b ダレン・ナイシュ、ポール・バレット 著、吉田三知世 訳『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』小林快次・久保田克博・千葉謙太郎・田中康平監訳、創元社、2019年2月20日、32-34,40-41頁。ISBN 978-4-422-43028-7。 
  3. ^ a b グレゴリー・ポール 著、東洋一、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀 訳『グレゴリー・ポール恐竜辞典 原著第2版』共立出版、2020年8月30日、12-13頁。ISBN 978-4-320-04738-9。 
  4. ^ 佐々木理「レスキューとしての企画展 「復興、南三陸町・歌津魚竜館」─世界最古の魚竜のふるさと」『東北大学総合学術博物館ニュースレターOmnividens』第41巻、東北大学総合学術博物館、2012年、2-3頁、 オリジナルの2018年12月30日時点におけるアーカイブ、2020年3月18日閲覧 
  5. ^ 土屋健『サメ帝国の逆襲 海洋生命5億年史』田中源吾・冨田武照・小西卓哉・田中嘉寛(監修)、文藝春秋、2018年7月20日、99-101頁。ISBN 978-4-16-390874-8。 
  6. ^ 小林快次『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、8-11頁。ISBN 978-4-8329-1398-1。 
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