天と地と SOUNDTRACK

天と地と
小室哲哉サウンドトラック
リリース
録音 1989年5月30日 -
1990年4月21日[1]
Studio AVR
ジャンル サウンドトラック
アンビエント
純邦楽
レーベル EPIC/SONY RECORDS
プロデュース 小室哲哉
日向大介
小室哲哉 アルバム 年表
Digitalian is eating breakfast
1989年
天と地と
1990年
マドモアゼル・モーツァルト
(1991年)
『天と地と』収録のシングル
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天と地と』(てんとちと)は、小室哲哉1990年6月1日EPIC・ソニーレコードよりリリースした、同年6月23日公開角川映画天と地とサウンドトラック・アルバム。規格品番はESCB-1057。

背景

Digitalian is eating breakfast』制作時「広大なプロモーションビデオを見ているような感じ」をコンセプトとしたオリジナル・フル・インストゥルメンタル・ソロ・アルバム制作に取り掛かろうとした小室の元に劇伴制作のオファーが舞い込み、そのコンセプトを本作にスライドした。収録曲の「炎」は『Digitalian is eating breakfast』発売後のツアーにて一足早く披露されていた。小室は「この(劇伴制作の)仕事の依頼がなかったら、アルバム『Digitalian is eating breakfast』にインストの楽曲がもっと多く収録されていた」と答えている[2][3]

小室は正式に依頼を受けた際、新しい大作志向映画向けの音楽の制作手法として「典型的な生のオーケストラによるクラシック」に対抗し、「全てをシンセサイザーで作る」と決めた[4]

角川春樹には普段の「メロディラインだけ」のデモテープではなく「まだまだ荒さは残るけど、完成品が見える様な音色の広がりや迫力がわかる」組曲で構成されたデモテープを聞いてもらうことで、小室の意向を角川が汲んだ[4]

角川は「色々な楽曲を使わず、リプレイでやってくれ」と注文した。それに対し小室は「シンプル且つ、印象に残る強い曲」を第一に考えた[4]

録音

1989年4月から作曲作業に入り、その作業だけでも1年かけた。全体像が見えたのが1990年4月だった。「試写を繰り返して、小室が『いやだ』と感じたら、全てやり直して、気になる素材があったらストックしておく」という方法論は、これまでのTM・プロデュースでの提供作曲作業での「スケジュールを守るために、無駄な素材はほとんど出さない」方針をとっていた小室にとっては異例の作業だった[5]

小室・日向大介の間で「全ての音を鳴りも含めシンクラヴィアで録音・再現する」「相手の気配を感じる時の音無き音を録音する」という意向の元で大宮ソニックシティを借り切る形でレコーディングされ、別の日に「ホール内で大勢の観客が声を出さない状態の音」をサンプリングした[6]

楽器の響きをより厚く再現、且つ和楽器では出せない迫力を演出。その音源を映像と合わせるため、敢えて西洋楽器の生音をサンプリング。残響音の付け方を編集して、琴の音色に近づける等の工夫を凝らした。フルオーケストラに聞こえる音も、録った生音を一つひとつ最低25回はキーボードの手弾きで重ねて厚みを再現、そのトラック数は200を越えた。後に小室は「オーケストラでやった方が何十倍も楽だったね」と語っている[6][7]

和太鼓のパートもそのまま再生すると、SEとしての馬の蹄の音と被ってしまうため、一度和太鼓の音を録音した後、キーボードで和太鼓独自の強烈な厚みを引き出せる様に加工した[6]

シンセサイザーの音色の人工的な感触を除き、臨場感を持たせるため、1990年2月20日に1000人のファンを招待した大宮ソニックシティで公開録音を行い、あらかじめレコーディングを終えた音源をコンサートの要領で流し、ファンのざわめきから出来上がる空気感を拾った[8][1]

スケジュールを守るために割り切り、スタッフに聞かせる「完全版」・サラウンドに対応させるため、「この音色でないとダメ」という技術上の規制に対応。もし対応していない環境の映画館でもまずまず聞くことができる様に配慮した音色作りの「劇場公開用」・フレーズは同じだけど音色を全て変え、どの様に自分のアーティスティックなソロアルバムとして独立させるか拘り、仕上げに1990年4月上旬から1週間かけ録り直した「CD用」と3タイプのトラック・ダウンが行われた[9][10][2]

音楽性

戦国時代を表す音楽が中々思い浮かばなかったため、サイエンス・フィクションの雰囲気で作曲した[5]

制作スケジュールに比較的余裕があったので、映像編集アフレコ・映画館の音響システムのチェックまで深く関わった[11]

始めに小室が脚本を読み込んで、シーン毎にテーマを決めて[6]、事前に映像を見ないでラフな楽曲を作る[5]。仮編集のときに角川が撮影した映像を付けて、そのデモ映像を見ながら角川と意見交換して、メロディの方向性をつかんだ後[5]、同じ曲を2,3回作り直した。メインテーマ以外での細かく短い曲もあり、未収録楽曲・海外公開版のみで使用された楽曲も含めると制作した楽曲は40曲以上になる[2][6][12]。このやりとりを通じて、小室が抱いたイメージは「性格が激しく、外に外れた“動”のタイプの武田信玄が曲として表現しやすいけど、今回は心を内に秘める“静”のタイプの上杉謙信が主人公。それだけに描きにくいけど、平面的な音楽にだけはしたくない」と気を引き締め挑んだ[13]

小室は本作の制作を通して「もともと映像に音楽を付けることが好きだから楽しかった。今回は作品にチラッと加わるのではなく、一人ひとりの役割分担がハッキリしていて、それぞれに責任が『一人がダメだと映画の全てがダメになる』っていう位にとても重い。『成功か、失敗かがかかっているんだ』という緊張感がやりがいに感じられて嬉しかった」[14]「みんなが『絵と音がきれい』だと言ってくれる。やった甲斐があった」「これからの映画と音楽の一つのポイントになってくれたら」[5]「それ以前はリズム主体でないと音楽を作れず、ミキシングの段階で消したとしてもリズムがあったという痕跡が残ってしまったが、リズム以外の発想でも音楽が作れるようになった」[15]「音の入り方が1フレームずれるだけで全然違う」[11]と語っている。

収録曲

全曲 作詞・作曲・編曲:小室哲哉

#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「滝」  
2.「落花」  
3.「標」  
4.「疾風」  
5.「黎明」  
6.「響」  
7.「躑躅」  
8.「文」  
9.「炎」  
10.「宇宙」  
11.「雫」  
12.天と地と  

クレジット

レコーディングメンバー

スタッフ

  • Producer:小室哲哉
  • Co-Produce, Recorded:日向大介(A.V.R.CORPORATION)
  • Mixed:伊東俊郎
  • Assisted : 深尾浩太郎, 香椎茂樹
  • Mastered:田中三一
  • Executive Producer:小坂洋二
  • A&R:山口三平(EPIC/SONY RECORDS)
  • A&R(London):大竹健
  • Art-direction, Design:高橋伸明(bahaty)
  • Artist photography : 大川直人
  • Supervisor:角川春樹

脚注

  1. ^ a b ソニー・マガジンズ刊 『ギターブック』 1990年7月号「小室哲哉 アルバム『天と地と』、ついに完成!!」112Pより。
  2. ^ a b c ソニー・マガジンズ刊『ギターブック』1990年6月号「天と地と CONCERNING HEAVEN AND EARTH Tetsuya Komuro Long Interview」9P-10Pより。
  3. ^ ソニー・マガジンズ刊「WHAT's IN?」1991年2月号「TMN 小室哲哉 過去の記憶と現在をアクセスするテクノロジー」53Pより。
  4. ^ a b c 角川書店刊「月刊カドカワ」1990年9月号「特別対談 映画と音楽 渡辺美里 VS 小室哲哉」pp.136-137より。
  5. ^ a b c d e 小学館刊「GORO」1990年6月28日号「人気グループTMネットワークを率いる小室哲哉 映画音楽に本格進出、第2の坂本龍一をめざしてる?」p.176より。
  6. ^ a b c d e 小学館刊「FMレコパル」1990年5月28日号「映画『天と地と』音楽監督 小室哲哉・CO-PRODUCER 日向大介インタビュー シンクラビアが映画音楽を変える」16P-17Pより。
  7. ^ TKが日向大介氏のラジオ番組にゲスト出演!より。
  8. ^ 角川書店刊「YOUNG ROSE」1990年6月号「小室哲哉 in 『天と地と』」188Pより。
  9. ^ ソニー・マガジンズ刊『WHAT's IN?』1990年4月号「TOP BOARD 100」9Pより。
  10. ^ ソニー・マガジンズ刊『WHAT's IN?』1990年6月号「RHIZOME OF TM NETWORK [ネットワーキングをつづけるTMの現在]」72Pより。
  11. ^ a b 集英社刊『週刊プレイボーイ』1991年4月9日号「小室哲哉(TMN) 『'92年春には映画を公開したい』」210Pより。
  12. ^ キネマ旬報社刊「キネマ旬報」1990年6月下旬号「特集 天と地と 小室哲哉インタビュー」20-21Pより。
  13. ^ 毎日新聞社刊「毎日グラフ」1990年5月20日号「魅力の周辺 映画『天と地と』の音楽監督 小室哲哉 映像と音楽によるダイナミックな世界を…」p.25より。
  14. ^ 講談社刊「with」1990年6月号「ピープル TM NETWORK 小室哲哉」p.35より。
  15. ^ ソニー・マガジンズ刊 『ギターブック』 1992年2月号「Mademoiselle Mozart Tetsuya Komuro」23Pより。
シングル
  1. RUNNING TO HORIZON
  2. GRAVITY OF LOVE
  3. CHRISTMAS CHORUS
  4. 天と地と〜HEAVEN AND EARTH〜
  5. 永遠と名づけてデイドリーム
  6. Magic
  7. Pure (Hyper Mix)
  8. SPEED TK RE-MIX
  9. Blue Fantasy - Love & Chill Out
  10. SPEED TK RE-MIX〜炎のコマ
  11. Blue Fantasy - DJ KRUSH Remix
  12. Embryo
  13. Someday mF remix
  14. If you like it or not
  15. @Buddha Bar
  16. SOMEDAY 2006
  17. Arashiyama
  18. I WANT YOU BACK (mF247 remix)
  19. アンジェリーナ mF Prepromix
  20. アンジェリーナ mF Prepromix Inst.
  21. ガッツだぜ!! DJ TK MIX
  22. Arashiyama
  23. HAPPY ENDING
アルバム
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リミックス
ライブ
セルフカバー
その他
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  • Kiss Destination
カテゴリ カテゴリ
小室哲哉 - 宇都宮隆 - 木根尚登
シングル
  1. 金曜日のライオン (Take it to the lucky)
  2. 1974 (16光年の訪問者)
  3. アクシデント (ACCIDENT)
  4. DRAGON THE FESTIVAL (ZOO MIX)
  5. YOUR SONG ("D"Mix)
  6. Come on Let's Dance (This is the FANKS DYNA-MIX)
  7. GIRL
  8. All-Right All-Night (No Tears No Blood)
  9. Self Control (方舟に曳かれて)
  10. Get Wild
  11. KISS YOU 〜世界は宇宙と恋におちる〜
  12. RESISTANCE
  13. BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)
  14. SEVEN DAYS WAR
  15. COME ON EVERYBODY
  16. JUST ONE VICTORY (たったひとつの勝利)
  17. COME ON EVERYBODY (with Nile Rodgers)
  18. KISS YOU (KISS JAPAN)
  19. GET WILD '89
  20. DIVE INTO YOUR BODY
  21. THE POINT OF LOVERS' NIGHT
  22. TIME TO COUNT DOWN
  23. RHYTHM RED BEAT BLACK
  24. RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 2.0)
  25. Love Train/We love the EARTH
  26. WILD HEAVEN
  27. 一途な恋
  28. Nights of The Knife
  29. GET WILD DECADE RUN
  30. 10 YEARS AFTER
  31. Happiness×3 Loneliness×3/80's
  32. MESSaGE
  33. IGNITION, SEQUENCE, START
  34. We Are Starting Over
  35. CASTLE IN THE CLOUDS
  36. NETWORK™
  37. WELCOME BACK 2
  38. I am
  39. Green days 2013
  40. LOUD
  41. Get Wild 2015
  42. GET WILD 2017 TK REMIX / GET WILD (Takkyu Ishino Latino Remix)
  43. GET WILD (Takkyu Ishino Remix)
  44. How Crash?
  45. Whatever Comes
  46. Angie
  47. Get Wild Continual
楽曲
アルバム
オリジナル
ミニ
リミックス
ライブ
ベスト
コンピレーション
蔵出し音源集
ボックス
映像作品
  1. VISION FESTIVAL
  2. FANKS "FANTASY" DYNA-MIX
  3. Self Control and the Scenes from “the Shooting”
  4. Gift for Fanks Video since 1985-1988
  5. FANKS the LIVE 1 FANKS CRY-MAX
  6. FANKS the LIVE 2 KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX
  7. FANKS the LIVE 3 CAMP FANKS!! '89
  8. FANKS the LIVE 4 FANKS
  9. RHYTHM RED BEAT BLACK
  10. WORLD'S END I
  11. WORLD'S END II
  12. EXPO ARENA FINAL
  13. DECADE
  14. final live LAST GROOVE 5.18
  15. final live LAST GROOVE 5.19
  16. LIVE TOUR Major Turn-Round 01 -Turn-Round Edition-
  17. LIVE TOUR Major Turn-Round 02 -Encore+D.Harada V-Mix Edition-
  18. LIVE TOUR Major Turn-Round 03 -Premium Edition-
  19. LIVE IN NAEBA'03 -FORMATION LAP-
  20. “BEE” presents TM VISIONS
  21. CAROL the LIVE
  22. TM NETWORK DOUBLE-DECADE TOUR "NETWORK"
  23. All the Clips
  24. TM NETWORK tribute LIVE 2003
  25. SPIN OFF from TM -tribute LIVE 2005-
  26. SPIN OFF from TM -8songs,and more.-
  27. SPIN OFF from TM 2007-tribute LIVE III-
  28. -REMASTER- at NIPPON BUDOKAN 2007
  29. -Incubation Period-
  30. FINAL MISSION -START investigation-
  31. TM NETWORK 30th 1984〜 the beginning of the end
  32. TM NETWORK THE MOVIE 1984〜
  33. TM NETWORK 30th 1984〜 QUIT30 HUGE DATA
  34. TM NETWORK 30th FINAL
  35. TM NETWORK 2012-2015
  36. TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994
  37. tribute live SPIN OFF T-Mue-needs
  38. TM NETWORK How Do You Crash It?
  39. TM NETWORK LIVE HISTORIA VISUALIZED T
  40. TM NETWORK LIVE HISTORIA VISUALIZED M
  41. “FANKS intelligence Days” at PIA ARENA MM
  42. 40th FANKS intelligence Days 〜DEVOTION〜
コンサート
1980年代
1990年代
2000年代
  • TM NETWORK Log-on to 21st Century
  • TM NETWORK TOUR MAJOR TURN-ROUND
  • TM NETWORK DOUBLE-DECADE "NETWORK"
  • TM NETWORK DOUBLE-DECADE TOUR NETWORK
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  • TM NETWORK REMASTER
2010年代
  • TM NETWORK CONCERT Incubation Period
  • TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation
  • TM NETWORK the beginning of the end
  • TM NETWORK 30th 1984〜QUIT30 - TM NETWORK 30th 1984〜QUIT30 HUGE DATA
  • TM NETWORK 30th FINAL
2020年代
  • TM NETWORK How Do You Crash It?
  • TM NETWORK FANKS intelligence Days
  • TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜DEVOTION〜
  • TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜STAND 3 FINAL〜
  • TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~
ゲーム
関連項目
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