石原発言捏造テロップ事件

石原発言捏造テロップ事件(いしはらはつげんねつぞうテロップじけん)は、2003年平成15年)11月2日に放映されたTBSテレビ報道情報番組サンデーモーニング』で、石原慎太郎東京都知事(当時)の韓国併合に関する発言が正反対の意味に改変された上で報道されたとされる事件である。

石原はこれを捏造と主張したが、TBSは意図的な捏造ではないと主張している[1][2]

事件の経過

問題となった放送

2003年(平成15年)10月28日、石原は東京国際フォーラムで開催された「救う会東京」の集会で基調講演を行った際、「私は日韓合併を100%正当化するつもりはない」「彼らの感情からすれば、そりゃやっぱり忌々しいし、屈辱でもありましょう。しかし、どちらかといえば彼らの先祖の責任であってね」と発言した[3][4]

ところが、『サンデーモーニング』2003年(平成15年)11月2日の放送では、この発言に「『日韓併合を正当化』石原都知事がまた問題発言」と見出しが付けられ、「私は日韓併合を100%正当化するつもりぁ・・・」と発言の最後の部分が聞き取りづらくなっており(石原の本来の発言は『「私は日韓併合を100%正当化するつもりゃ無いがね・・・』であり、石原はTBSが意図的に聞き取りづらく編集したと主張している。)、その上で「私は日韓併合の歴史を100%正当化するつもりだ」と、全く正反対のテロップを付けて報じられた。[1]。その後、朝鮮総聯幹部の抗議のコメントが伝えられ、更に東京都の定例会見での石原の「あまり騒ぎにならなかったな、残念ながら。世間ではやっぱり良識がなってるよ」との発言でVTRが終了した[5]

辺真一は、「何を言いたいのかわからないですね。過去の問題については韓国よりもむしろ日本の政治家の方がしつこいなって感じしますね。今年でこの某政治家の創氏改名発言は4回目でしょ? もう私からしますとね、過去を蒸し返すのはもうやめにしましょうと、こう言いたいですね」と発言した[6]

続いて岸井成格は、「ちょうどこの発言の翌日知事とお会いする機会あってね、いろいろな話しましたけどね。やっぱり、確信犯的ですよね、石原さんこの問題についてはずーっと。ある種戦後日本が教育で歪められて過去のことについていろいろ謝罪して、それを歴史を正しく見ないっていう、いわゆる新しい教科書的な発想。そういう国民世論を変えたいっていう気持ちがものすごいあるんでしょうね。だけどそれが事実かどうかってことが最大の問題なんですから、こういう発言をするたびにね、いろんな問題がぎくしゃくしておかしくなるわけですよね」と発言し、辺と岸井は石原を批判した[6]

11月5日、『ジャスト』で訂正放送

TBSは11月5日午後の情報番組『ジャスト』で、アナウンサー安住紳一郎が「取材テープの当該発言部分の語尾が聞きづらかったため、番組スタッフが誤解してしまいました」と、2日のサンデーモーニングの放送での誤りを認め、訂正放送を行った。また、「石原都知事をはじめ、視聴者の皆さま、関係者の皆さまにご迷惑をかけたことをおわび申し上げます」との謝罪文をTBS公式ウェブサイトに掲載した[7][8]

11月9日の釈明放送

翌週の11月9日『サンデーモーニング』で関口宏は「テロップミス」を認めたが、「音声を故意に絞ったり、加工したりした事実はない」と主張し、「全くの初歩的なミスで、石原都知事はじめ視聴者の皆様、関係者の皆様にご迷惑かけたことを深くお詫びいたします」と謝罪した。一方、捏造とされた編集に基づいた都知事批判に対する謝罪はなかった[9]

刑事・民事訴訟

2004年(平成16年)2月9日、石原は警視庁名誉棄損刑事告訴し、受理された。同年12月14日、番組制作にかかわったプロデューサーら4人が東京地方検察庁書類送検されたが、その後刑事処分は不起訴となった[9][10]

続いて石原は、TBSを相手に8000万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こしたが、2006年(平成18年)6月22日東京地方裁判所和解が成立。TBSが石原に和解金を支払った[9]

石原の実際の発言

私たちは決して武力で侵犯したんじゃない、これは、むしろ朝鮮半島の国々が分裂してきてまとまらないから結局彼らの総意で、ロシアを選ぶか支那を選ぶか日本にするかということで、近代化の著しい同じ顔色をした日本人のですね、要するに手助けを得ようということで、世界中の国が合意した中で、合併が行われた。

アメリカフィリピンや、スペインがフィリピンを獲得しました。オランダインドネシアや、フランスドイツもそれぞれアジアに植民地を構えた。(それらとは)全然違う形で日韓の合併が行われたんだ。それをもってね、私は日韓合併を100パーセント正当化するつもりはない。彼らの感情からすれば、そりゃ、やっぱり忌々しいし、屈辱でもありましょう。しかし、どちらかといえばこれは彼らの先祖の責任であってね。

しかも、このごろ、日本人を評価するべきであるとの日本の植民地政策についての正当な評価を書いた本も、向こうでは発禁ですけど、日本では発行されました。しかも、アメリカの大学の教授は、植民地主義を考えるなら、君らの受けた植民地主義は最も秩序があり、最も人間的だったということを相対的に悟るべきだと言っている[11] — 救う会東京での石原都知事(当時)の基調講演(抜粋、一部略)

脚注

[脚注の使い方]

注釈

出典

  1. ^ a b “TBS「サンデーモーニング」の捏造報道について”. 2005年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月3日閲覧。
  2. ^ “石原知事、TBS報道は「捏造」 「日韓合併」発言問題”. 朝日新聞. オリジナルの2003年11月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20031118222326/http://www.asahi.com/culture/update/1111/005.html 2020年12月4日閲覧。 
  3. ^ 桜井誠 2007, pp. 20–21.
  4. ^ “【北朝鮮拉致事件】発火物事件は「同情引くためとのうわさ」 石原知事発言”. 朝日新聞. (2003年10月29日). オリジナルの2003年12月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20031205075144/http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200310280421.html 
  5. ^ 桜井誠 2007, p. 23.
  6. ^ a b 桜井誠 2007, pp. 21–23.
  7. ^ “石原発言でTBSが字幕ミス 2日放送の情報番組で”. 産経新聞. (2003年11月6日). オリジナルの2003年11月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20031107055821/http://www.sankei.co.jp/news/031106/1106bun006.htm 
  8. ^ “TBS 都知事の日韓併合発言で謝罪”. スポニチアネックス. (2003年11月6日). オリジナルの2003年11月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20031108035137/http://www.sponichi.co.jp/entertainment/kiji/2003/11/06/03.html 
  9. ^ a b c 桜井誠 2007, p. 26.
  10. ^ “石原知事の告訴状を警視庁受理 TBS誤報問題”. 朝日新聞. (2004年2月9日). オリジナルの2004年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20040209183048/http://www.asahi.com/national/update/0209/027.html 
  11. ^ 桜井誠 2007, p. 21.

参考文献

  • 桜井誠「前代未聞のメディアテロはなぜ起こったのか? 石原都知事の失脚を狙った「捏造テロップ事件」」『TBS「報道テロ」全記録―反日放送局の事業免許取り消しを!』晋遊舎〈晋遊舎MOOK〉、2007年2月1日、20-27頁。ISBN 9784883805914。 

関連項目

外部リンク

公式サイト

  • “和解に関するTBS記者発表文”. 宣戦布告 NETで配信石原慎太郎. 2007年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月28日閲覧。
TBSグループ / TBSホールディングス
放送持株会社
テレビ放送
ラジオ放送
衛星放送
ネット配信
番組制作事業
技術・美術事業
コンテンツ事業
音楽出版事業
小売事業
その他事業
関連施設
送信所
賞・イベント
人物
マスコット
海外提携局
歴史・事件
関連項目
1朝日放送テレビが旧JNN系列局、朝日放送ラジオは現在もJRN系列局であるため、相互に株式の持ち合い関係にある。
22001年末から2011年12月まで同社が筆頭株主としてプロ野球球団を運営(横浜ベイスターズとして)。
31968年の一時期、TBSプロレスに改称。
4旧称・TBSカンガルー募金
5旧称・TBSカンガルー災害募金
カテゴリ カテゴリ
1950年代の著書

灰色の教室 - 太陽の季節 - 処刑の部屋 - 日蝕の夏 - 理由なき復讐(改題前:喪失)- 黒い水 – 北壁 – 透きとおった時間 – 婚約指輪 - 狂った果実 - 青春にあるものとして - 若い獣 - 完全な遊戯 - 海の地図 - 価値紊乱者の光栄 - 月蝕 - 亀裂 - 夜を探がせ – 乾いた花(改題前:渇いた花) - 男の掟 – 鱶女 - ファンキー・ジャンプ - 殺人教室

1960年代の著書

青年の樹 - これが恋愛だ - 南米横断一万キロ - 挑戦 - 見知らぬ顔 - 青い糧 - 汚れた夜 - 死んでいく男の肖像 - 雲に向かって起つ - 禁断 - 断崖 - 狼生きろ豚は死ね・幻影の城 - 日本零年 - 密航 - てっぺん野郎青雲編 - 死の博物誌 - 石原慎太郎文庫 - 行為と死 - てっぺん野郎昇竜編 - 銀色の牙 - 傷のある羽根 - 終幕 - 青春とはなんだ - 命の森 - 星と舵 - おゝい、雲! - 砂の花 - 人魚と野郎 - 大いなる海へ - 還らぬ海 - 飛べ、狼 - 孤独なる戴冠 - 青い殺人者 - 野性の庭 - 黒い環 - 青春との対話 - 巷の神々 – 待伏せ - 怒りの像 - 祖国のための白書 - 野蛮人のネクタイ - プレイボーイ哲学 - 鎖のついた椅子 - スパルタ教育

1970年代の著書

慎太郎の政治調書 – 化石の森 - 慎太郎の第二政治調書 - 男の世界 - 野蛮人の大学 - 真実の性教育 - 信長記 - 酒盃と真剣 - 石原慎太郎短編全集 - 新和漢朗詠集 - 男の海 - 対極の河へ - 息子をサラリーマンにしない法 - 風の神との黙約 - 真の革新とはなにか - 伯爵夫人物語 - 大いなる手との黙約 - 情熱のための航海 - 光より速きわれら - 刃鋼 - 暗闇の声 - 嫌悪の狙撃者 - 型破りで勝つ! - 戦士の羽飾り - 一点鐘

1980年代の著書

亡国 - 大いなる海へ - 秘祭 - バカでスウェルな男たち - 暗殺の壁画 - 流砂の世紀に - 現代史の分水嶺 - 拝啓息子たちへ - 生還

1990年代の著書

不思議な不思議な航海 - わが人生の時の時 - 時の潮騒 - 光速の時代に - 十代のエスキース - 来世紀の余韻 - 三島由紀夫の日蝕 - 禁断の島へ - 遭難者 - かくあれ祖国 - 風についての記憶 - わが人生の時の会話 - 亡国の徒に問う - 肉体の天使 – 弟 - “父”なくして国立たず - 法華経を生きる - 国家なる幻影 - 聖餐

2000年代の著書

この日本をどうする - いま魂の教育 - 生きるという航海 - 僕は結婚しない - 東京の窓から日本を - わが人生の時の人々 - 老いてこそ人生 - 日本よ - 惰眠を貪る国へ - 息子たちと私 - 日本よ、再び - 石原愼太郎の文学 - 東京の窓から世界を - オンリー・イエスタディ - 私の好きな日本人 - 火の島 - 生死刻々

2010年代の著書

声に出して詠もう和漢朗詠集 - 真の指導者とは - 再生 - 新・堕落論 我欲と天罰 - 平和の毒、日本よ - 石原愼太郎の思想と行為

共著

新旧の対決か調和か - 人間の原点 - いかに国を守るか - エベレスト - 闘論 - 「NO」と言える日本 - それでも「NO」と言える日本 - 断固「NO」と言える日本 - 「No」と言えるアジア - 宣戦布告「NO」と言える日本経済 - 「アメリカ信仰」を捨てよ - 勝つ日本 - 永遠なれ、日本 - 人生への恋文 - 日本の力 - 生きる自信

映画

太陽の季節 - 処刑の部屋 - 狂った果実 - 日蝕の夏 - 婚約指輪 - 月蝕 - 危険な英雄 - 穴 - 俺は待ってるぜ - 錆びたナイフ - 霧の中の男 - 死の壁の脱出 - 若い獣 - 完全な遊戯 - 海は狂っている - 海の地図 - 海底から来た女 - 夜を探がせ - 青年の樹 - 接吻泥棒 - トップ屋を殺せ - 愛と炎と - 青い狩人 - 雲に向かって起つ - 禁断 - 二十歳の恋 - 素晴らしい悪女 - 狼の王子 - 小さな冒険旅行 - 乾いた花 - 敗れざるもの - おゝい雲! - 青春とはなんだ - 処刑の島 - これが青春だ! - 男なら振りむくな - 復讐の歌が聞える - 狂戀詩 Summer Heat - 野蛮人のネクタイ - スパルタ教育 くたばれ親父 - 化石の森 - 青年の樹 - 秘祭 - 俺は、君のためにこそ死ににいく - 宇宙戦艦ヤマト 復活篇

テレビドラマ

深夜のメス - 幽霊と宝石と恋 - 見知らぬ顔 - この情報を買ってくれ - 分身 - 降霊 - 怒りの果実 - これが恋愛だ - 密航 - 殺人キッド - 青年の樹 - 死んでゆく男の物語 - 喪われた街 - 夜を探せ - 闇から来る - アラスカ物語 - 青い糧 - 断崖 - 雲に向って起つ - 夜の道 - 喪われた街 - 小さき斗い - 有馬稲子アワー 喪われた街 - てっぺん野郎 - 青春とはなんだ - おゝい雲! - 人魚と野郎 - おおい雲 - 恐怖の人喰い鱶 鱶女 - 太陽の季節 - 狂った果実2002 - 弟

政治
活動・事件
政治組織
家族

石原裕次郎(弟) - 石原まき子(義妹) - 石原典子(妻) - 石原伸晃(長男) - 石原良純(次男) - 石原宏高(三男) - 石原延啓(四男)

カテゴリ

石原慎太郎 - 作品 - 芥川賞受賞者 - 芥川龍之介賞