MGローバー

曖昧さ回避 この項目では、2000年から2005年まで存在していた自動車会社について説明しています。イギリスの自動車「ローバー」の概要については「ローバー (自動車)」を、その他のローバーについては「ローバー」をご覧ください。

MG ローバーMG Rover Group)は、2000年に設立されたイギリス自動車会社である。2005年に倒産し、自動車の製造・販売も終了、これにてイギリス資本の自動車メーカー・ブランドは消滅した。

経営破綻後、MGブランドを含む資産の大部分は、中国の自動車会社・南京汽車に売却された。ローバー・ブランドは現在、インドのタタ・モーターズが所有している。

歴史

2000年まで及び2006年以降のMGの歴史については、MG (自動車)を参照
2000年までのローバーの歴史については、ローバー (自動車)を参照

1994年、ドイツのBMWは、それまで日本の本田技研工業(ホンダ)との提携関係にあったローバー・グループを突如として買収した。

その後ローバー・グループの経営に失敗したBMWは、2000年、グループのうちミニ部門、および商標権としてのトライアンフとライレーを手元に残し、ランドローバー部門をアメリカフォードに売却した。残りの全ては、元ローバー会長のジョン・タワーズ(John Towers)が中心となって設立したイギリスの投資グループ・フェニックス・コンソーシアム(Phoenix Consortium )に対してマネジメント・バイアウト(MBO)により、僅か10ポンド(当時の日本円で約1660円)で売却された。こうして、ブリティッシュ・レイランド時代からの、ローバー、ランドローバー、ミニ、トライアンフなどのブランドは、それぞれ別個の会社の元に分散することとなった。

ローバー部門等を手にしたフェニックス・コンソーシアムが設立したのが、MGローバーMG Rover Group )である。同社は資本不足から、BBCの報道でも、経営陣の年金不正問題、工場稼働率の問題、資本力の問題などが盛んに報道されるなどしていた。新型車の開発力の低さを補うために、インドタタ・モーターズと技術・資本提携、その後、中国の光輝自動車と資本提携を行った。タタとの提携は実際に新車発売(タタ・インディカを参照)に結びついたが、光輝との提携はうまくいかず、2004年には中国の上海汽車との資本・技術提携を発表した。中国でアジア向けローバー車の生産を委託する可能性もあるといわれていた。資本提携後、上海汽車がMGローバーを買収するとの噂も報道されたが、当事者は否定した。

2005年4月には上海汽車との提携交渉が決裂し、また英国政府の救済措置は実施されなかったため最終的に倒産。破産管財人としてプライスウォーターハウスクーパースPrice Waterhouse Coopers )の管理下に入り経営破綻した。業者も部品供給を停止し、バーミンガム近郊、ロングブリッジの工場も操業停止した。数日後、MGローバー社は解体され、まず5000人の従業員の内の4000人を解雇した。この直後、英国内外から200社余り企業が経営権獲得に名乗りを上げ、前記の上海汽車もその中にあった。一方でイランロシアの企業の動向も取り沙汰されていた。7月になり、ローバー及びローバーの知的財産を含まないMGを最終的に中国の南京汽車が買収総額最高1億ポンド(約200億円)で経営権を獲得した。上海汽車が渋っていたロングブリッジ工場改修や研究開発センター新設、従業員再雇用等の案を提示したことが決め手となった。

MGの意匠権を引き継いだ南京汽車は、Nac MGとして中国でMG5/MG7の名称でMG ZR及びMG ZTをリファインして製造開始し、イギリスのロングブリッジにおいてはNac MG UKとしてMG TFの再生産を行った。ローバーの知的財産権は上海汽車が主張しており、ROEWE750の名でローバー75を生産、販売した。上海汽車は2007年末に南京汽車を買収し傘下に収め[1]、MGとROEWEの設計共通化を進めている。

ローバーブランドそのものはフォード・モーター(PAG)が買取り[2]、2008年にはフォードからインドのタタ・モーターズへ売却され、以後タタが保有している。

キャタピラー社のグループ企業「キャタピラーアンドロジスティクス」が全世界を含めた修理部品供給を行っていたが、2009年3月末でキャタピラー社がローバーのパーツ流通から撤退すると発表した。現在日本国内においては、ローバーの正規輸入パーツは存在しないこととなる。

車種一覧

ローバー

MG

  • MG・ZT
  • MG・ZR - 3/5ドアハッチバック
  • MG・ZS - 4ドアサルーン、BTCC参戦の原型車
  • MG・EXPRESS - ZRのパネルバン

2003年の末には、フォード製のV8エンジンを搭載しイタリアで生産されるスポーツカーMG X-power SV(英語版)が発表された。販売価格が65,000ポンドを超える高額モデルであり、合計63台が生産された。

日本での販売

2000年以前におけるローバー・グループ車の日本での販売については、ローバージャパンを参照

MGローバー発足以降、同社製乗用車の日本への正規輸入・販売は中止されていた。

2003年7月、オートトレーディングルフトジャパンが日本における正規輸入・販売者となり、ディーラー網「MGローバー・ニッポン」を開業したものの、2005年のMGローバー経営破綻に伴いその事業は終了した。

関連会社

MGローバー社の親会社である持ち株会社フェニックス・ベンチャー・ホールディングス(Phoenix Venture Holdings Limited )では、自動車生産のMGローバーに加え、複数の関連会社を所有し、レースカー制作開発のMGスポーツ・アンド・レーシング(MG Sports&Racing )、エンジン及び変速機製造のパワートレーン(Powertrain Ltd ) があった。

  • MGスポーツ・アンド・レーシングでは、「MG」のサブブランドとして「X-power」を創設し、ル・マン24時間レースを始めイギリスツーリングカー選手権(BTCC)などのレース活動と、イギリスでの地方ラリーへの参戦もおこなった。また、市販車・チューニング部門で "MG X-power" ブランドでの高級スポーツカーの製造、個人向け競技用車両の製作を行った。上記レース活動用の専用車両には、MG伝統の開発コード"EX"が使用されている。(例:EX257) 2005年からはドイツツーリングカー選手権(DTM)へ参戦する予定だったが、MGローバーの経営破綻により中止されている。
  • パワートレーンでは、ケータハムロータスへのエンジン供給などもおこなった。

関連会社製品

パワートレーン

パワートレーン
  • KV6 - V型6気筒エンジン
  • K4[要曖昧さ回避]、K-VVC、K-ターボ - 直列4気筒エンジン
  • Lシリーズ - ディーゼルエンジン
  • PG1 - 5速ギアボックス

MGスポーツ・アンド・レーシング

X power

(親会社フェニックス傘下の子会社が保有)

  • 上記車種のレース/ラリーカー・チューニングカー制作、プロトタイプの制作。ローラとも協力。
  • MG X-power SV:日本での発売計画があったとも言われるが、実現しなかった。
  • MG X-power SV-R - SVのバリエーション

関連項目

  • MG
  • ローバー

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ “上海汽車と南京汽車、合併を発表”. ロイター (2007年12月26日). 2023年6月25日閲覧。
  2. ^ “Ford beats Chinese to Rover brand name”. The Guardian (2006年9月19日). 2023年6月25日閲覧。
  3. ^ https://www.mplafer.net/2021/06/japan.html
  4. ^ https://www.mplafer.net/2021/02/alex.html
  5. ^ http://autoworld.com.my/news/2002/06/25/TD2000-Heads-for-Japan/
  6. ^ https://www.wapcar.my/news/anyone-remembers-the-td-2000-the-malaysianmade-retro-car-5866

外部リンク

  • MG Rover Group (UK) (英語)
(← 1980年代以前) 英国ブランド車種年表 日本市場 1990年以降
種類 1990年代 2000年代 2010年代
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2
シティ・カー ミニ
スーパーミニ 100 ミニ ミニ
スモール・ファミリー・カー 200/400 200/400
ミッドサイズ・カー 600 Xタイプ
75 75/ZT
エグゼクティヴ・カー 800 800
Sタイプ XF
ラグジュアリー・カー XJ XJ XJ XJ
ミュルザンヌ/コンチネンタル/エイト シルバースピリット/シルバースパー/シルバードーン コンチネンタル・フライング・スパー
シルバーセラフ ゴースト
ターボ アルナージ ミュルザンヌ
パークウォード ファントム
ステーションワゴン 400ツアラー Xタイプエステート
800エステート 75ツアラー/ZT-T
クーペ/オープン 200クーペ/カブリオレ ミニコンバーチブル ミニコンバーチブル
F TF
エラン エリーゼ
800クーペ エキシージ
エスプリ ヨーロッパ
RV8 エヴォーラ
XJ-Sクーペ/XJコンバーチブル XKクーペ/XKコンバーチブル XKクーペ/XKコンバーチブル
DB7/DB7ヴォランテ V8/V8ヴァンテージロードスター
V8 DB9/DB9ヴォランテ
ヴァンテージ V12ヴァンキッシュ DBS
コンチネンタルクーペ/シルバースパー/コーニッシュ コンチネンタルクーペ/コンチネンタルコンバーチブル/ブルックランズ コンチネンタルクーペ コンチネンタルGT/コンチネンタルGTC
コーニッシュ アズール アズール/コーニッシュ ファントムドロップヘッドクーペ
クロスオーバー イヴォーク
フリーランダー フリーランダー 2
SUV ディフェンダー ディフェンダー
ディスカバリー ディスカバリーII ディスカバリー 3 ディスカバリー 4
レンジローバースポーツ
レンジローバー レンジローバー レンジローバー/ヴォーグ
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2
ブリティッシュ・レイランド の盛衰 - 自動車会社とブランド
ブランド 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2008~
ジャガー SSカーズ ジャガー ジャガー BMH ブリティッシュ・レイランド ジャガー フォード タタ
デイムラー デイムラー BSA BSA
ランチェスター ランチェスター
ミニ BMC[1] オースチン・ローバー BAe BMW ミニ/BMW
ライレー ライレー ナッフィールド・オーガニゼーション BMW
MG モーリス・ガレージ (MG) BMW MGR/PVH 南京汽車
モーリス モーリス モーリス
ウーズレー ウーズレー[2]
オースチン オースチン オースチン
バンデン・プラ バンデン・プラ MGR/PVH、フォード [3] 南京汽車フォード
ローバー ローバー ローバー ローバー MGR /PVH、BMW[4] フォード タタ
ランドローバー フォード
アルヴィス アルヴィス[5] BAEシステムズ
スタンダード スタンダード スタンダード・トライアンフ レイランド BMH
トライアンフ ドーソン トライアンフ トライアンフBMW[6]
                                                                                                                                                                    

[1] The BMCの英国での商標権はその後MGローバーグループが所有していた(1564704, E1118348)。BMCの子会社がトルコにあったことからトルコの商用車メーカー名にもなっている。

[2] ウーズレーの商標権は自動車に関してのみ南京汽車が所有している。英国の建築資材メーカーであるウーズレー社(Wolseley plc)がウーズレーのその他すべての商標権を保持している。Wolseley plcはウーズレー自動車の生みの親である。

[3] バンデン・プラの商標権はフォードが米国とカナダでの使用権を所有し、その他の地域ではデイムラーのブランドで「ジャガー XJ バンデン・プラ」というモデルがあるため、MGローバーグループがその使用権を所有していた(UK 1133528, E2654481)。その後、MGローバーグループはバンデン・プラ・ブランドを南京汽車に売却した。ローバーが最後にバンデン・プラを使用したのはローバー75・バンデン・プラで、これはリムジンモデルだった。

[4] この時期、ローバーの商標権はBMWが保持しており、MGローバー・グループにライセンス供与されていたのみ。BMWは2006年9月にローバー・ブランドをフォードに売却した。

[5] アルヴィスはブリティッシュ・レイランドからUnited Scientific Holdings plcが1981年に購入している。2002年にはビッカーズ(Vickers Defence Systems)と合併し、アルヴィス・ビッカーズとなった。2004年、アルヴィス・ヴィッカーズはBAEシステムズに買収されている。BAEシステムズは1990年代初頭のオースチン・ローバー・グループ/ローバー・グループを所有した際にはアルヴィスははずされていた。アルヴィス・ブランドの車は1967年から生産されていないが、そのブランド商標権は、BAEに買収されるまでアルヴィス plc傘下のアルヴィス・ヴィークル社(Alvis Vehicles Ltd)が所有していた。

[6] 車両に関する商標としてのトライアンフの使用はBMWとトライアンフ・モーターサイクル社が共有している。BMWが自動車、トライアンフ社がモーターサイクルに対してのもの。トライアンフでの事業は1930年代からすでに分離されていた。

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