グルーヴ

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グルーヴgroove)とは音楽用語のひとつ。形容詞グルーヴィーgroovy)。

ある種の高揚感を指す言葉であるが、具体的な定義は決まっていない。語源は(アナログ)レコード盤の音楽を記録した溝を指す言葉で[1]うねりの感じからジャズファンクソウルR&Bなどブラックミュージック音楽演奏に関する表現に転じた言葉である。現在は、素晴らしい演奏を表す言葉の1つとして、ポピュラー音楽全般で用いられる。

構成する要素

グルーヴを構成する要素としてはリズムテンポシンコペーション、アーティキュレーションなどが挙げられ、主にリズム体(ベース、ドラムスパーカッションなど)を対象とした概念である(例:グルーヴィーなドラミング、など)。「ノリ」(乗り)を表す言葉である。ジャンルによって感じるグルーヴは様々で、グルーヴ感の会得は、演奏者にとって必要不可欠な要素のひとつである。

音楽理論でリズムの基礎を学ぶ際はまず、4/4拍子の場合は、一小節全てを占める音符全音符と言い、その半分が二分音符、そのさらに半分が四分音符、といったように数学的に割り切れるものを拍子と考える。多くのポピュラー音楽の4/4拍子の楽曲では、2拍目と4拍目にスネアドラムによってアクセントがおかれることが一般的だが、例えばこの際、曲調や演奏時のノリによってスネアドラムの2、4拍目のアクセントが数学的なその位置よりも微かに前や後に置かれる事がある。どの程度先走るか、遅らせるかは楽曲により、ジャンルにより、ミュージシャンにより、またその場の状況によって違ってくる。遅れ方が大きいほど、ミュージシャンの間では「重い」などと表現する。演奏家同士がアンサンブルを行う際は、お互いにこのズレを読み合ってバンドとしての「ノリ」を作り出すのである[2]

この2、4拍目のスネアの微妙な位置というのも、グルーヴと言う漠然とした概念の構成要素のごく一部に過ぎない。打点のズレ、時間差だけでなく、等差でも、刻んだリズムのどこにアクセントを置くか、音の大小の違いでも、グルーヴは生まれる。このように、数学だけでは割り切れないリズムの要素、リズムの感覚全体を指してグルーヴと呼ぶ[2]

日本におけるグルーヴの研究には、Kawase and Eguchi (2010)[3]や河瀬他(2001)、河瀬他(2003)の例がある。彼らの論文は、グルーヴの概念の総括と、グルーヴの定量的測定を、聴取実験と演奏実験を通して行っている。以下の4点が彼らの研究の主な結果である。1.用語としてのグルーヴは、2000年頃から広く使われ始めた。2.日本におけるグルーヴの概念や語義を、アンケート先行研究を元に探った。その結果、体の動きやテンポ、低音の強調、一体感などと関係していた。3.音楽聴取の実験を通じて、グルーヴがどのような感覚と近いか調べた。その結果、関係が深かったのは「ノリ」や「一体感」、「心が弾む」「テンポが速い」「体でリズムを感じられる」などであった。4.ドラム演奏の実験では、楽譜からの数ミリ秒程度のずれと特定のテンポによって、グルーヴが感じられるとされた。なお、近年はグルーヴ研究が国際誌を中心に盛んに行われている。最新の研究動向をふまえた先行研究は、グルーヴ感についての資料(論文)等[4]に網羅されている。

脚注

  1. ^ 研究社 新英和中辞典 groove/プログレッシブ英和中辞典(第4版) groove なお原義は轍や水路などの「溝」であり、旧来のイメージは「決まりきった型」「定型的な順調さ」といったものである。
  2. ^ a b 『音楽スコラ』 NHK ドラムズ&ベース編(2010年5月29日、6月5日、6月12日、6月19日放送)
  3. ^ http://www2.hu-berlin.de/fpm/popscrip/themen/pst11/pst11_kawase-eguchi.html
  4. ^ https://satoshikawase.wixsite.com/satoshikawase#!groove/c1mrh

参照情報

  • 『schola 坂本龍一 音楽の学校』 NHK 2010年放送.
  • グルーヴ感についての資料(論文)等(大阪大学大学院人間科学研究科招聘研究員・河瀬諭)
  • Kawase, S. and Eguchi, K. (2010). The Concepts and Acoustical Characteristics of 'Groove' in Japan. PopScriptum 11 - The Groove Issue, 1-45.

関連項目

  • ビート (音楽)
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