タウ数

曖昧さ回避 「数学定数のタウ」とは異なります。
クイゼネール・ロッド(英語版)による、1、2、8、9、および12がタウ数であることの例示

タウ数(タウすう、 Refactorable number[定訳なし]) とは、約数の個数で割り切れるような整数、すなわち、τ(n) | n を満たす自然数 n である (τ(n)約数関数の一種で、n の約数の個数を返す関数)。例えば、18は6個の約数 (1, 2, 3, 6, 9, 18) を持ち、さらに18は約数の個数6で割り切れるためrefactorableである。

タウ数を小さいものから並べると

1, 2, 8, 9, 12, 18, 24, 36, 40, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A033950)

となる。

歴史

タウ数は約数関数 τ(n) に関連して研究され、例えばクラウディア・スピロ (Claudia Spiro) は与えられた数より小さいタウ数の個数や、関連した集合の個数についていくつか上界を与えている[1]

1982年のスピロの論文では特に名称などは与えられておらず、1990年にカーティス・クーパー (Curtis Cooperとロバート・E・ケネディ (Robert E. Kennedy) によってタウ数と命名され、その後サイモン・コルトン (Simon Coltonによって、コンピュータープログラムによって発見された数列として[2]再発見された[3]。“Refactorable number” の名称はコルトンによるものである。

コルトンが行ったタウ数の基本的な性質についての予想は、そのうちいくつかはジョシュア・ゼリンスキー (Joshua Zelinsky) によって証明された[3]。ゼリンスキーはタウ数およびタウ数の類似について数多くの定理と予想を示している。

性質

存在性

タウ数は無限に存在し、複数の方法でタウ数の無限列 (または無限集合) を得ることができる:

  • 素数 p に対して pp-1となる数 (2, 9, 625, 117649, ... (A036878))
  • n の素因数分解を p 1 m 1 p k m k {\displaystyle p_{1}^{m_{1}}\cdots p_{k}^{m_{k}}} としたとき、 p 1 p 1 m 1 1 p k p k m k 1 {\displaystyle p_{1}^{p_{1}^{m_{1}}-1}\cdots p_{k}^{p_{k}^{m_{k}}-1}} で表される数 (1, 2, 9, 8, 625, 18, 117649, 128, ... (A036879))
  • 任意の奇素数 p に対して 8p (24, 40, 56, 88, 104, ...)
  • 任意の相異なる3より大きい素数 p, q に対して 36 pq (1260, 1980, 2340, 2772, ...)

奇数のタウ数は全て平方数である。そのような数を小さい順に並べると

1, 9, 225, 441, 625, 1089, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A036896)

となる。

間隔

任意の連続した3つの整数がすべてタウ数となることはない。これはコルトンによって予想され、ゼリンスキーによってより強い形の命題が証明された。

  • もし n および n+1 がいずれもタウ数かつ n が奇数であるならば、n=1 が成り立つ。

タウ数の個数

正整数 n に対して、n 以下のタウ数の個数を T(n) で表す。このとき、T(n)素数計数関数 π(n) の間に以下の関係が成り立つ:

  • 任意の実数 (正実数としてよい) k に対して、n が十分大きいならば T(n) > kπ(n) が成り立つ[3]

ゼリンスキーによって証明されたこの定理は、コルトンが k = 1/2 について予想したものについて、部分的に証明したものである。ゼリンスキーは k = 1/2 の場合について、反例の上限が 7.42×1013となることも示している。

クラウディア・スピロは T(n) に対して、漸近的な近似値として

T ( n ) = n log n ( log log n ) 1 + o ( 1 ) {\displaystyle T(n)={\frac {n}{{\sqrt {\log {n}}}(\log {\log {n}})^{1+o(1)}}}}
を与えた[1]。ただしここで o(1)o記法である。すなわち、ある関数 ε(n) が存在して
T ( n ) = n log n ( log log n ) 1 + ε ( n ) {\displaystyle T(n)={\frac {n}{{\sqrt {\log {n}}}(\log {\log {n}})^{1+\varepsilon (n)}}}}
であり、ε(n) は任意の正定数 K について、十分大きい n に対して | ε(n) | < K が成り立つ。

その他

  • ゴールドバッハ予想に関連して、次の事実が言える:
    • 弱いゴールドバッハ予想が真ならば、任意の正整数は6個かそれ以下のタウ数の和として表せる。
    • 強いゴールドバッハ予想が真ならば、任意の正整数は5個かそれ以下のタウ数の和として表せる。
  • タウ数の自然密度(英語版)は0である[4]

関連項目

  • en:HR (software)

参考文献

  1. ^ a b Spiro, Claudia (1985-08-01). “How often is the number of divisors of n a divisor of n?” (英語). Journal of Number Theory 21 (1): 81–100. doi:10.1016/0022-314X(85)90012-5. ISSN 0022-314X. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0022314X85900125. 
  2. ^ a b Simon Colton (1999). “Refactorable Numbers - A Machine Invention”. Journal of Integer Sequences 2. https://cs.uwaterloo.ca/journals/JIS/colton/joisol.html 2022年1月20日閲覧。. 
  3. ^ a b c Joshua Zelinsky (2002). “Tau Numbers: A Partial Proof of a Conjecture and Other Results”. Journal of Integer Sequences 5 (2). https://cs.uwaterloo.ca/journals/JIS/VOL5/Zelinsky/zelinsky9.html 2022年1月20日閲覧。. 
  4. ^ Kennedy, Robert E.; Cooper, Curtis N. (1990). “Tau numbers, natural density, and Hardy and Wright's theorem 437” (英語). International Journal of Mathematics and Mathematical Sciences 13 (2): 383–386. doi:10.1155/S0161171290000576. ISSN 0161-1712. https://www.hindawi.com/journals/ijmms/1990/717323/. 
被整除性に基づいた整数の集合
概要
Divisibility of 60
因数分解による分類
約数和による分類
約数が多いもの
アリコット数列関連
位取り記法に基づくもの
  • Equidigital number(英語版)
  • Extravagant number(英語版)
  • Frugal number(英語版)
  • ハーシャッド数
  • Polydivisible number(英語版)
  • スミス数
その他