リベンジ

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リベンジ雪辱

リベンジ(: revenge: revencher)とは、(第一の意味、本来の意味)ある人が傷つけられたり不当に扱われたことへの仕返しで、そうされた当人が自分自身の手で、相手を傷つけたり危害をあたえること(Oxford辞典での説明)[1]。また、派生的な用法としてスポーツの文脈である対戦で自分(や自チーム)を打ち負かした相手を、その次の対戦で打ち負かしてやること[1](Oxford辞典での説明)。

概要

英語でリベンジ(: revenge)というのは、アベンジ (: avenge)という語・概念と対比されて使われている。「リベンジ」は、あくまで自分に焦点を当てた心情で行われていることを指しており、(自分のことだけ考えていて)「やられた当人がやりかえす」ということであるのに対して、アベンジのほうは、自分にであれ他者にであれ、傷つけることや害をおよぼすような人がいれば、その「お返し」に傷つけてやること[2]。つまりアベンジというのは、リベンジよりも、もっと広く他者を想うような心のはたらき、いわば「公共の正義」を重んじるような心に基づいた行為を指す傾向がある。[3]

日本語では(もともとの英語のように「avenge アベンジ」との対比まで感じさせるような、かつ短い翻訳語は無いわけであるが)日本の国語辞書では、英語の1の意味では、復讐報復や「仇討ち(あだうち)」[4]といった訳語が当てられ、2.の意味に関しては、「競技で一度敗れたことのある相手を打ち負かすこと」「借りを返すこと」と説明されている[4]

漢字表現では「雪辱する」とか短く「雪辱」とも。「雪辱」とは、「侮辱」された(はずかしめを受けた)場合に、そのはずかしめをきれいに拭い去る、ということで、(「」や「面子(めんつ)」や「プライド」という感覚が含まれているが)これも翻訳としては妥当な範囲である。

リベンジの本来の意味は個人的な報復、個人的な仕返しであり、英語を使える日本人は、カタカナで表記する場合でも、その意味通りに使っている。また英語通りに、派生的な意味で、競技やスポーツの文脈でも使っている。両方の意味で使っている。

一般

報復」および「復讐」も参照

文学

リベンジに意識がゆくのは古今東西かわらず、セネカの時代からリベンジを扱った作品がある。

リベンジを題材として扱った演劇作品を英語圏で昔から「revenge play リベンジプレイ」(復讐劇)と言う。

英語圏に限らず、世界各地で復讐をテーマにした作品はあり人気である。たとえばフランスのデュマの作品『モンテクリスト伯』(岩窟王)も、無実で投獄された主人公エドモン・ダンテスの復讐劇である。この作品は刊行当時、ベストセラーになり、現在でも世界各国でリメイクが頻繁に行われている。

競技全般やスポーツ

競技全般、スポーツなどの文脈でリベンジと言う場合、ある対戦で自分を負かした相手を 次の対戦で打ち負かしてやることである。

日本語で言う場合、単純にカタカナで「リベンジ」としてしまえば済む。もしあえてカタカナを避ける場合は「借りを返す」とか、短く言う場合は「雪辱」などと表現している。「revenge match リベンジ・マッチ」は日本語では「雪辱戦」などと表現している。

なお競技の世界では、「(あきらめて、何度も)やられっぱなし」というのは競技者当人も、また(競技者に感情移入する)観客も気分が暗くなってしまいがちだが、それに対して競技の世界でリベンジ、つまり「やられたら、やりかえす」ということを目指せば、競技者当人もモチベーションがあがりトレーニングにも熱が入るし、観客も物語性を感じて大いに盛り上がる。そして見事「リベンジ」を実現すると、競技者当人も観客も、物語がハッピーエンドになったように感じて「スッキリ」する。

現実の世界でリベンジして肉体的に他者を傷つけたりすると陰惨なことになりがちで、リベンジした当人やそれを見ている人にも、嫌な後味(あとあじ)が残りがちだが、競技の世界で、公正なルールを遵守して、フェアプレーをまもって、正々堂々とリベンジしているならば、当人も観客も「スッキリ」して楽しめる、ということになる。

リベンジされたほうは、大抵は「次の回に、もう一度たたきのめす」ことなどを目指してモチベーションを高めてゆくことになる。いずれにせよ、競技というものは「やったり、やられたり」ということがあると、競技者当人も観客も、ハラハラドキドキして盛り上がる。

アメリカ

アメリカ合衆国プロボクシング興行では「リベンジ・マッチ(revenge-match)」が組まれ、大々的に宣伝が行われ、その結果観客も盛り上がり、商業的に成功してきた歴史がある。

1970年代のアメリカのプロボクシング界は、モハメド・アリジョー・フレージャージョージ・フォアマンレオン・スピンクスらが名勝負を繰り広げ、ヘビー級の世界戦が隆盛を極めた。特にモハメド・アリ陣営は劇的な展開になるようなプロモーションを積極的に行い、興行的価値においてリベンジ・マッチが絶大な効力を発揮するという認識がプロボクシング界で形成された。

モハメド・アリ引退後の1980年代は、多くのボクシングファンは中量級の世界戦に熱狂した。これは、長期間ヘビー級王座に君臨したラリー・ホームズの試合が概して退屈と評され、よりスピーディな試合展開を好むボクシングファンが多かったためである。1980年代の中量級は、ロベルト・デュランシュガー・レイ・レナードトーマス・ハーンズマービン・ハグラーなどが多階級制覇をめぐって激戦を繰り広げ、プロモーションの中心もヘビー級から中量級の世界戦へシフトした。

この時期になると、プロモーターのみならず多くのボクシングファンもリベンジ・マッチの醍醐味を認識するようになり、1988年11月7日ネバダ州ラスベガスシーザーズ・パレスに於いて行われたシュガー・レイ・レナード対ドン・ラロンデWBC世界スーパーミドル級ライトヘビー級タイトルマッチにおいては、revengeの名称を使用して大々的にプロモーションが行われた。

格闘技系の競技では現在も「リベンジ」という言葉は頻繁に使われる。1度敗れたとしてもリターンマッチ(return match)・リマッチ(rematch)として再度試合が組まれることが多い格闘技の試合では、再戦に勝利すれば「リベンジを果たした」として再評価されるばかりでなく、観客側にとっても劇的な展開に感情移入が高まる場合が多い。逆にリベンジに失敗すると「負けっぱなし」と感じられて、観客も気分が沈む。

日本

日本で最初に「リベンジ」というカタカナ語として使われたのは1994年9月に開催されたK-1の格闘技興行「K-1 REVENGE」においてである。この興行が成功を収めたことから、日本でも「リベンジ」という言葉は格闘技やプロレスの世界で一般化していった。[要出典]

ただ直接的にK-1で使われるキッカケとなったのは、1993年当時日本のエースであった佐竹雅昭がオーストラリアの王者で世界のヘビー級屈指の強豪ファイターだったスタン・ザ・マンとの一戦で予想を覆し勝利を上げ、その後のリターンマッチを敵地オーストラリアで行ったのだが、その興行の名が「The・Revenge」というものだった(オーストラリアのプロモーターの命名)。[要出典]

カタカナ語による言い換えによる宣伝は広告業ではよくあるが、当時のK-1興行プロモーター石井和義が前述の「K-1 REVENGE」ほか、K-1イベントでも多く喧伝するようになり他の格闘技・プロレスマスコミにも使われるようになった。また格闘技好きでカタカナ語好きの芸能人、スポーツ選手などにも浸透しさらに広がりを見せるようになった。

「リベンジ」を格闘技・プロレス界の用語以上のものにしたのは、当時西武ライオンズ松坂大輔である。K-1好きでもあった松坂は1999年4月21日の対ロッテ戦では黒木知宏と投げ合い、0-2で敗北したが、その後に「リベンジします」と宣言した松坂は4月27日の対ロッテ戦で再び黒木と投げ合い、1-0でプロ初完封を記録し見事にリベンジを果たした。松坂が「リベンジ」を使った時期は、まだリベンジの意味を知らない日本人が多かったと思われるが、松坂が用語としての「リベンジ」を広く一般に認識させたことから、1999年の新語・流行語大賞(年間大賞)の受賞者に選定された。また同時に日本語の語彙があるのに英語を使う事にも批判が出た。

「リベンジ」は1999年の新語・流行語大賞(年間大賞)に選定された(#日本を参照)。

スポーツの主なリベンジ・マッチ

※「リベンジ」という言葉が生まれる前のものも含む。

初顔合わせで69連勝を止められた「世紀の一番」の後は双葉の9連勝。「誰に対しても変わらない相撲を取る双葉関が、自分に対してだけは特別な感情があるようだった」と安藝ノ海の言葉が残る。
水原の監督就任のために巨人を追われた三原は福岡の地で西鉄ライオンズパシフィック・リーグの王者にきたえあげ、日本シリーズで水原巨人に3連勝(1956年から1958年)、さらに1960年には大洋ホエールズ監督として同じセントラル・リーグで巨人をおさえて優勝を果たした。
学生野球時代から数々の因縁を持つ両者の争いは、「野球版巌流島の決闘」と称された。

将棋

将棋の世界も「勝負」「勝ち負け」の世界であり、有名な棋士どうしの対局などに関して、「リベンジ成功」「リベンジ失敗」などと、将棋ファンたちやマスコミは盛り上がっている。 [5]

脚注

  1. ^ a b Oxford Lexico, revenge. 1. The action of hurting or harming someone in return for an injury or wrong suffered at their hands. 1.2 the defeat of a person or team by whom one was beaten in a previous encounter.
  2. ^ Oxford Lexico, avenge 1.Inflict harm in return for (an injury or wrong done to oneself or another) 2. Inflict harm in return for an injury or wrong on behalf of (oneself or another)
  3. ^ ちなみに、分かりやすい例を挙げると、米国の「アベンジャーズ」も、公共の正義のために、個人的な動機は脇に置いておいて(「自分事」は後回しにしてでも)、社会に横行する悪を打ち負かすから「アベンジャーズ」であり、「ヒーロー」なのである。
  4. ^ a b 大辞泉「リベンジ」
  5. ^ たとえば、最近では藤井聡太棋士の大局などでも「リベンジ」というとらえかたで盛り上がっている。Yahoo!ニュース

関連項目

<< 歴代の新語・流行語大賞の受賞者 (年間大賞選定以後・1991-2010) >>
第8回(1991年)

…じゃあ〜りませんか チャーリー浜

第9回(1992年)

「うれしいような、かなしいような」「はだかのおつきあい」 きんさんぎんさん

第10回(1993年)

Jリーグ 川淵三郎(Jリーグチェアマン)

第11回(1994年)

すったもんだがありました 宮沢りえ / イチロー(効果) イチローオリックス・ブルーウェーブ) / 同情するならカネをくれ 安達祐実

第12回(1995年)

無党派 青島幸男東京都知事) / NOMO 野茂英雄ロサンゼルス・ドジャース) / がんばろうKOBE 仰木彬(オリックス・ブルーウェーブ監督)

第13回(1996年)

自分で自分をほめたい 有森裕子(マラソン選手) / 友愛 / 排除の論理 鳩山由紀夫(民主党代表) / メークドラマ 長嶋茂雄読売ジャイアンツ監督)

第14回(1997年)

失楽園(する) 渡辺淳一黒木瞳

第15回(1998年)

ハマの大魔神 佐々木主浩横浜ベイスターズ) / だっちゅーの パイレーツ(お笑い芸人)

第16回(1999年)

ブッチホン 小渕恵三内閣総理大臣) / リベンジ 松坂大輔西武ライオンズ) / 雑草魂 上原浩治読売ジャイアンツ

第17回(2000年)

おっはー 慎吾ママ / IT革命 木下斉(商店街ネットワーク社長・早稲田大学高等学院三年)

第18回(2001年)

「小泉語録」(米百俵・聖域なき構造改革・恐れず怯まず捉われず・骨太の方針・ワイドショー内閣・改革の「痛み」) 小泉純一郎(内閣総理大臣)

第19回(2002年)

タマちゃん 佐々木裕司(川崎市民)、黒住祐子フジテレビレポーター) / W杯中津江村 坂本休(中津江村・村長)

第20回(2003年)

毒まんじゅう 野中広務(元衆議院議員) / なんでだろ〜 テツandトモ(お笑いグループ) / マニフェスト 北川正恭早稲田大学教授)

第21回(2004年)

チョー気持ちいい 北島康介(競泳選手)

第22回(2005年)

小泉劇場 武部勤自由民主党幹事長)ほか / 想定内(外) 堀江貴文(ライブドア社長)

第23回(2006年)

イナバウアー 荒川静香(プロスケーター) / 品格 藤原正彦(数学者)

第24回(2007年)

(宮崎を)どげんかせんといかん 東国原英夫宮崎県知事) / ハニカミ王子 石川遼(アマチュアゴルフ選手)

第25回(2008年)
第26回(2009年)

政権交代 鳩山由紀夫(内閣総理大臣)

第27回(2010年)

ゲゲゲの -  武良布枝(『ゲゲゲの女房』作者)

※受賞者の役職は当時のもの。