ラヴリン

手前の赤い屋根の建物が建つ3角状の島がラヴリン。五稜郭。
シモン・ステヴィンによって設計されたメールスの要塞, ここではラヴリンは3角形(状)の島として示されている。外側に面してのみ壁(深緑色で示す)を設け、内側に壁はない
16世紀のドゥブロブニクの城壁(英語版)のラヴリン。クロアチア
北緯42度38分32秒 東経18度06分46秒 / 北緯42.642208度 東経18.112674度 / 42.642208; 18.112674

ラヴリン: ravelin)は、分離されたアウトワークで、カーテンウォールの前、主たるより外側に建設され、凸角をなす2正面から構成される[1][2]。別名はデミルーン(demi-lune: 半月)でフランスで使われる。元々のルネット (要塞)(英語版)(lunette)から発達したことを示唆した名称である。

三角堡(さんかくほ)、または半月堡(はんげつほ)と訳される。

軍事的機能

ラヴリンの外側の辺は敵の攻撃力を分断するように形成され、ラヴリン内の火砲はカーテンウォールに接近して来る攻撃軍を砲撃可能である。また、攻囲側が火砲を用いてカーテンウォールを打破するのを阻止する役割を担う。本塁(主たる要塞)に面したラヴリンの側面は最適な低い壁を持ち、したがって、攻撃を受けて制圧され(または防衛側が放棄し)ても攻撃軍のための避難所(または攻撃拠点)になる事は無い。しばしばラヴリンはカーテンウォール側に兵員の移動と火砲の搬入を容易にするための傾斜路(あるいは階段)をもつ。

小史

ラヴリンの最初の例は1497年イタリアの町サルザーナサルザネッロ要塞(イタリア語版)(イタリア語: Fortezza di Sarzanello)で出現した。最初のラヴリンは煉瓦造だったが、後の16世紀を通じてオランダでは砲弾の衝撃を吸収するのに適した土造(おそらく石か煉瓦で覆った)であった。イタリア起源の要塞システム(星型要塞)の一部としてラヴリンは「イタリア式築城術(trace Italienne: トラセ・イタリアンヌ)[3]」という用語を生じさせた。17世紀フランスの軍事工学者(軍人でもある)ヴォーバンはラヴリンを大いに活用した。それはルイ14世のための要塞設計において成されたものであり、彼の着想は1761年になってもジブラルタル要塞(英語版)ウイリアム・グリーン(英語版)少佐によって、いまだに用いられていた[4]

語源

オックスフォード辞典によれば16世紀後半、フランス語 ravelin を借入[5]フランス語はイタリア語 ravellino (現在は死語)に由来、でravellinoは語源不詳としている。[6]

メリアム=ウェブスター辞典では ravellino は rivellino が変化した形で、rivellino は riva の指小形でラテン語 ripa (堤、土手)に由来するとあるので原義は「小さな堤」であった可能性がある[7]。何れにせよ語源的にもイタリア起源である。

脚注

  1. ^ 訳注: 定義についてはOxford Dictionariesより訳出引用した
  2. ^ 訳注 : ラヴリンは発音/ravlin/をカナで表した。 ラヴェリンあるいは仏語式にラヴェランとも表記される
  3. ^ 訳注: 元になった仏語ではfr:Tracé à l'italienne(トラセ・ア・リタリアンヌ) なのでトラセ・イタリアンヌとカナ表記した
  4. ^ Fa & Finlayson (2006). The Fortifications of Gibraltar 1068-1945. Osprey Publishing. p. 25. ISBN 978-1-84603-016-1. https://books.google.com/books?id=BC5QBR0oB04C&pg=PA61 2013年3月30日閲覧。 
  5. ^ 訳注: フランスではその後 demi-lune が多く使われるようになった
  6. ^ Oxford Dictionaries(on-line)
  7. ^ Merriam-Webster Dictionary(on-line)

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