2000年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第96回ワールドシリーズ(だい96かいワールドシリーズ、96th World Series)は、10月21日から26日にかけて計5試合が開催された。その結果、ニューヨーク・ヤンキース(アメリカンリーグ)がニューヨーク・メッツ(ナショナルリーグ)を4勝1敗で下し、3年連続26回目の優勝を果たした。
ニューヨーク州ニューヨーク市を本拠地とする球団どうしの対戦は、お互いの本拠地球場をニューヨーク市地下鉄(New York City Subway)で行き来できることから "サブウェイ・シリーズ"(Subway Series)と呼ばれている。ワールドシリーズにおいてサブウェイ・シリーズが実現するのは、ヤンキースとブルックリン・ドジャースが対戦した1956年以来44年ぶりであり[3]、ヤンキースとメッツの顔合わせでは初めてである。ヤンキースは初戦から2連勝のあと第3戦に敗れ、1996年第3戦から続けていた連勝記録を歴代最長の14試合で止められたものの、続く第4戦と第5戦を制して優勝した[4]。また、シリーズ3連覇は1936年〜1939年および1949年〜1953年のヤンキースと、1972年〜1974年のオークランド・アスレチックスに次ぎ、史上4例目である[5]。シリーズMVPには、連勝記録を止められた翌日の第4戦で初回表に初球先頭打者本塁打を放つなど、5試合で打率.409・2本塁打・2打点・OPS 1.344という成績を残したヤンキースのデレク・ジーターが選出された。
両チームの過去の対戦
1997年から始まったレギュラーシーズン中のインターリーグでは、4年間で計18試合が組まれており、ヤンキースが11勝7敗で勝ち越している[6]。この年は6月9日からの2日間で2試合と、7月7日からの3日間で4試合の計6試合が行われ[注 1]、ヤンキースが4勝2敗で勝ち越した。
メッツのマイク・ピアッツァは1998年5月にフロリダ・マーリンズから、ヤンキースのロジャー・クレメンスは1999年2月にトロント・ブルージェイズから、それぞれトレードで加入した。1999年以降のサブウェイ・シリーズにおいて、ピアッツァはクレメンスとの対戦を得意としており、1999年6月6日に2点本塁打→同年7月9日に3点本塁打→2000年6月9日に満塁本塁打、と3対戦試合連続で本塁打を放っていた[7]。すると2000年7月8日、4度目の対戦試合でクレメンスは、ピアッツァの第1打席に頭部死球をぶつけた。クレメンスは過去にも故意に死球を与えたことがあるため、今回の頭部死球も狙ってやった "ビーンボール" ではないか、という疑いが浮上した[8]。クレメンスは「必要に応じて内角を突くつもりではいたけど、頭にぶつかるのは望んでいなかった」と否定したが[9]、ピアッツァは「あいつに敬意があるなんてとてもじゃないが言えない」「あれは明らかにわざとだと思う。内角攻め、あるいは体にぶつけるくらいなら尊重もできるが」と怒りを露わにした[10]。
今シリーズでメッツとヤンキースの対戦が決まると、ヤンキースはクレメンスを第2戦の先発投手にすると決めた。第2戦はヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアムで開催されるため、指名打者制度が採用され、クレメンスが打席に立つことはない。これに対し、メッツのターク・ウェンデルは「なんであいつはシェイ・スタジアムで投げないんだ? 報復死球が怖いのか?」と挑発した[11]。
試合結果
2000年のワールドシリーズは10月21日に開幕し、途中に移動日を挟んで6日間で5試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 | 試合 | ビジター球団(先攻) | スコア | ホーム球団(後攻) | 開催球場 |
10月21日(土) | 第1戦 | ニューヨーク・メッツ | 3-4x | ニューヨーク・ヤンキース | ヤンキー・スタジアム | |
10月22日(日) | 第2戦 | ニューヨーク・メッツ | 5-6 | ニューヨーク・ヤンキース |
10月23日(月) | | 移動日 | |
10月24日(火) | 第3戦 | ニューヨーク・ヤンキース | 2-4 | ニューヨーク・メッツ | シェイ・スタジアム |
10月25日(水) | 第4戦 | ニューヨーク・ヤンキース | 3-2 | ニューヨーク・メッツ |
10月26日(木) | 第5戦 | ニューヨーク・ヤンキース | 4-2 | ニューヨーク・メッツ |
優勝:ニューヨーク・ヤンキース(4勝1敗 / 3年連続26度目) |
第1戦 10月21日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
ビリー・ジョエルによる試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』独唱(2分1秒) |
6回表二死一塁、トッド・ジールの二塁打で一塁走者ティモ・ペレスが生還を狙うも、ヤンキースの中継プレイが阻止し本塁タッチアウト(1分36秒) |
7回表、メッツが代打バッバ・トランメルの2点適時打で同点に追いつく(49秒) |
9回裏、ヤンキースのポール・オニールが10球目を選び四球で出塁(5分18秒) |
そのあと一死満塁からチャック・ノブロックが犠牲フライを放ち、ヤンキースが土壇場で同点に(53秒) |
ヤンキースの4番手投手マイク・スタントンが延長11回表・12回表の2イニングを無失点に封じる(1分17秒) |
12回裏二死満塁、ホセ・ビスカイーノが初球を左前へ運びヤンキースがサヨナラ勝利(48秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | R | H | E |
ニューヨーク・メッツ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 10 | 0 |
ニューヨーク・ヤンキース | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1x | 4 | 12 | 0 |
- 勝:マイク・スタントン(1勝) 敗:ターク・ウェンデル(1敗)
- 審判
[球審]エド・モンタギュー
[塁審]一塁: チャーリー・レリフォード、二塁: ジェフ・ケロッグ、三塁: ティム・ウェルキー
[外審]左翼: ティム・マクレランド、右翼: ジェリー・クロフォード - 試合開始時刻: 東部夏時間(UTC-4)午後8時13分 試合時間: 4時間51分 観客: 5万5913人 気温: 68°F(20°C)
詳細: Baseball-Reference.com
第2戦 10月22日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
初回表、マイク・ピアッツァのファウルで折れたバットを、ロジャー・クレメンスがピアッツァの足元に投げつける。両軍ベンチが総出となり、一触即発の雰囲気に(2分26秒) |
2回裏、先頭打者スコット・ブロシアスの本塁打でヤンキースが点差を3点に広げる(52秒) |
5回裏、ポール・オニールの適時打でヤンキースが4点目を挙げる(45秒) |
クレメンスは8イニングを9奪三振で無失点に抑える(3分22秒) |
9回表、ピアッツァが2点本塁打を放ちメッツが4点差に詰め寄る(1分4秒) |
2打者後、トッド・ジールの本塁打性の打球を左翼手クレイ・ベリンジャーがフェンス際で捕球(1分9秒) |
二死二・三塁となり、ジェイ・ペイトンがマリアノ・リベラに3点本塁打を浴びせてメッツが1点差に詰め寄る(1分13秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ニューヨーク・メッツ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 5 | 7 | 3 |
ニューヨーク・ヤンキース | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | X | 6 | 12 | 1 |
- 勝:ロジャー・クレメンス(1勝) 敗:マイク・ハンプトン(1敗)
- 本塁打
NYM:マイク・ピアッツァ1号2ラン、ジェイ・ペイトン1号3ラン
NYY:スコット・ブロシアス1号ソロ - 審判
[球審]チャーリー・レリフォード
[塁審]一塁: ジェフ・ケロッグ、二塁: ティム・ウェルキー、三塁: ティム・マクレランド
[外審]左翼: ジェリー・クロフォード、右翼: エド・モンタギュー - 試合開始時刻: 東部夏時間(UTC-4)午後8時5分 試合時間: 3時間30分 観客: 5万6059人 気温: 49°F(9.4°C)
詳細: Baseball-Reference.com
第3戦 10月24日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
イン・シンクによる試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』合唱(2分15秒) |
8回裏、ベニー・アグバヤニの適時二塁打でメッツが1点を勝ち越し(56秒) |
9回表、アーマンド・ベニテスがデビッド・ジャスティスを二飛に打ち取り試合終了、メッツが今シリーズ初勝利(1分21秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ニューヨーク・ヤンキース | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 8 | 0 |
ニューヨーク・メッツ | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | X | 4 | 9 | 0 |
- 勝:ジョン・フランコ(1勝) 敗:オーランド・ヘルナンデス(1敗) S:アーマンド・ベニテス(1S)
- 本塁打
NYM:ロビン・ベンチュラ1号ソロ - 審判
[球審]ジェフ・ケロッグ
[塁審]一塁: ティム・ウェルキー、二塁: ティム・マクレランド、三塁: ジェリー・クロフォード
[外審]左翼: エド・モンタギュー、右翼: チャーリー・レリフォード - 試合開始時刻: 東部夏時間(UTC-4)午後8時37分 試合時間: 3時間39分 観客: 5万5299人 気温: 62°F(16.7°C)
詳細: Baseball-Reference.com
第4戦 10月25日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
初回表、デレク・ジーターの先頭打者本塁打でヤンキースが先制(1分31秒) |
3回裏、マイク・ピアッツァの2点本塁打でメッツが1点差に迫る(1分2秒) |
5回裏二死無走者でデビッド・コーンが救援登板、ピアッツァを二飛に打ち取る(2分26秒) |
マリアノ・リベラが8回裏・9回裏の2イニングを無失点に抑えて試合を締め、ヤンキースが優勝に王手をかける(1分33秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ニューヨーク・ヤンキース | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 8 | 0 |
ニューヨーク・メッツ | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 | 1 |
- 勝:ジェフ・ネルソン(1勝) 敗:ボビー・ジョーンズ(1敗) S:マリアノ・リベラ(1S)
- 本塁打
NYY:デレク・ジーター1号ソロ
NYM:マイク・ピアッツァ2号2ラン - 審判
[球審]ティム・ウェルキー
[塁審]一塁: ティム・マクレランド、二塁: ジェリー・クロフォード、三塁: エド・モンタギュー
[外審]左翼: チャーリー・レリフォード、右翼: ジェフ・ケロッグ - 夜間試合 試合時間: 3時間20分 観客: 5万5290人 気温: 61°F(16.1°C)
詳細: Baseball-Reference.com
第5戦 10月26日
映像外部リンク |
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MLB.comによる動画(英語) |
2回表、先頭打者バーニー・ウィリアムスの本塁打でヤンキースが先制(54秒) |
6回表、デレク・ジーターのソロ本塁打でヤンキースが同点に追いつく(38秒) |
同点の8回裏、ヤンキースの2番手投手マイク・スタントンがメッツ打線を三者凡退に抑える(35秒) |
9回表、ルイス・ソーホーの適時中前打に悪送球も絡み、ヤンキースが2点を勝ち越し(2分) |
その裏、マリアノ・リベラがマイク・ピアッツァを中飛に打ち取り試合終了、ヤンキースの3連覇が決定(1分45秒) |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
ニューヨーク・ヤンキース | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 4 | 7 | 1 |
ニューヨーク・メッツ | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 8 | 1 |
- 勝:マイク・スタントン(2勝) 敗:アル・ライター(1敗) S:マリアノ・リベラ(2S)
- 本塁打
NYY:バーニー・ウィリアムス1号ソロ、デレク・ジーター2号ソロ
- 審判
[球審]ティム・マクレランド
[塁審]一塁: ジェリー・クロフォード、二塁: エド・モンタギュー、三塁: チャーリー・レリフォード
[外審]左翼: ジェフ・ケロッグ、右翼: ティム・ウェルキー - 試合開始時刻: 東部夏時間(UTC-4)午後8時28分 試合時間: 3時間32分 観客: 5万5292人 気温: 61°F(16.1°C)
詳細: Baseball-Reference.com
脚注
注釈
- ^ 元々は6月9日から11日にかけて、ヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアムで3連戦が予定されていた。しかし11日の試合が雨天順延となった。そのため、メッツの本拠地シェイ・スタジアムで7月7日から行われる3連戦のなかに、6月11日の順延分がダブルヘッダーで組み込まれることになった。7月8日は第1戦がシェイ・スタジアムで、第2戦がヤンキー・スタジアムで開催された。
出典
- ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2020年2月9日閲覧。
- ^ "After 44 Years, Another Subway Series," The New York Times, October 18, 2000. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Barry M. Bloom, "Red Sox rolling with nine straight World Series wins / Streak started with 2004 sweep of Cards, continued with '07 win vs. Rockies," MLB.com, October 24, 2013. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Sam McPherson, "Great Moments In Baseball History: The 1974 A’s Beat Dodgers To Win Third Straight World Series Title," CBS Sacramento, May 21, 2015. 2020年2月9日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年5月16日閲覧。
- ^ The Hartford Courant, "CLEMENS-PIAZZA WITH A TWIST," Hartford Courant, July 13, 2004. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Dave Anderson, "Sports of The Times; Beanballs, Clemens, Piazza and Medwick," The New York Times, July 11, 2000. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Dan Martin, "CLEMENS: I WASN’T HEAD-HUNTING PIAZZA," New York Post, July 9, 2000. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Andrew Marchand, "PIAZZA RIPS ‘COWARD’ ROGER ; SAYS BEANING WAS INTENTIONAL," New York Post, July 10, 2000. 2020年2月9日閲覧。
- ^ Tyler Kepner, "BASEBALL: SUBWAY SERIES; Piazza Ready To Move Past Head Games," The New York Times, October 19, 2000. 2020年2月9日閲覧。
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、2000年のワールドシリーズに関連するカテゴリがあります。
- MLB.com Postseason History(英語)
- Baseball Almanac(英語)
- Baseball-Reference.com(英語)
- 動画共有サイト "YouTube" にMLB公式アカウントが投稿した試合映像
- 第2戦:2000 World Series, Game 2: Mets @ Yankees
- 第5戦:2000 World Series, Game 5: Yankees @ Mets
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