SARSコロナウイルス2-イータ株

2021年7月1日時点でイータ株の症例が確認されている国・地域(GISAID発表)

凡例:
  確認症例数 1,000+
  確認症例数 500–999
  確認症例数 100–499
  確認症例数 10–99
  確認症例数 2–9
  確認症例数 1
  確認症例数 0 / またはデータなし

SARSコロナウイルス2-イータ株(サーズコロナウイルスツー イータかぶ、英語: SARS-CoV-2 Eta variant、別名: 系統 B.1.525VUI-21FEB-03〈旧表記: VUI-202102/03〉、UK118821D20A/S:484KG/484K.V3)は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスとして知られるSARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) の変異株である。2020年12月にイギリスナイジェリアで最初に検出された。

世界保健機関 (WHO) は注目すべき変異株 (VOI) に指定し、WHOラベルではイータ株 (Eta variant) に分類していた[1]が、2021年9月にVOIから除外された[1][2][3]

2021年3月5日時点で、ヨーロッパアメリカオーストラリアシンガポールなど23ヶ国で検出されている[4][5][6]。同年2月15日時点で、ナイジェリアではサンプル中で最も高い頻度で発生しており[6]、2月24日時点でイギリスでは56症例が見つかっている。また、フランスの海外県・地域であるマヨットでも報告されている[4]。すべてのCOVID-19症例をシーケンスしているデンマークでは、同年1月14日から2月21日までに113症例が発見されており、そのうち7件はナイジェリアへの旅行と直接の関係がある[5]

イギリスの専門家は、どの程度のリスクになる可能性があるかを理解するために研究を続けている。現在はイングランド公衆衛生庁(英語版) (PHE) により、調査中の変異株 (VUI) と見なされているが、さらなる調査が行われれば、懸念される変異株 (VOC) になる可能性がある。ケンブリッジ大学Prof Ravi Gupt(英語版)BBCのインタビューで、系統 B.1.525は他の新しい変異株の一部ですでに見られた「重要な突然変異を持っているように見えるが、それらの効果はある程度予測可能であるため、部分的には安心出来るものだと答えている。

分類

命名

2020年12月、この系統がイギリスやナイジェリアなど複数国で初めて記録され、後に系統 B.1.525 (lineage B.1.525) と命名された[1][7]。2021年5月末、WHOは懸念される変異株 (VOC) や注目すべき変異株 (VOI) にギリシャ文字を使用する新しい方針を導入した後、系統 B.1.525に対しイータ (η:Eta) のラベルを割り当てた[1][7]

変異

イータ株はアルファベータガンマ変異株で見つかったN501Y変異を持っていないが、ベータ、ガンマ、ゼータ変異株で見つかったE484K変異を持ち、さらにアルファ、 N439K(系統 B.1.141およびB.1.258)、Y453F (Cluster 5) 変異株で見つかったΔH69/ΔV70(69位と70位のアミノ酸ヒスチジンバリンの欠失)欠失を持っている[8]

イータ株が他の変異株と異なる点は、E484K変異とF888L変異(スパイクタンパク質のS2ドメインにおけるフェニルアラニン (F) のロイシン (L) への置換)の両方を持っていることである。

  • スパイクタンパク質に焦点を当てたSARS-CoV-2のゲノムマップ上にプロットされたイータ株のアミノ酸変異[9]。
    スパイクタンパク質に焦点を当てたSARS-CoV-2のゲノムマップ上にプロットされたイータ株のアミノ酸変異[9]

 

日本での感染確認

厚生労働省は2021年9月9日、2020年12月以降の日本入国時における検疫でイータ株の感染者が18人確認されていたことを明らかにした[10]

統計

国別の感染者数(2021年8月27日時点/GISAID[11]
感染者数 最新報告ケース
カナダの旗 カナダ 1,403
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1,184 2021年6月11日
ドイツの旗 ドイツ 738 2021年6月23日
フランスの旗 フランス 686 2021年6月8日
デンマークの旗 デンマーク 613 2021年5月24日
イギリスの旗 イギリス 517 2021年5月31日
イタリアの旗 イタリア 397 2021年6月22日
ナイジェリアの旗 ナイジェリア 255 2021年5月21日
インドの旗 インド 221 2021年5月31日
スペインの旗 スペイン 174 2021年6月18日
ノルウェーの旗 ノルウェー 81 2021年5月9日
ベルギーの旗 ベルギー 74 2021年6月22日
アイルランドの旗 アイルランド 71 2021年5月29日
スイスの旗 スイス 55 2021年6月13日
オランダの旗 オランダ 54 2021年5月31日
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 52 2021年5月20日
スロベニアの旗 スロベニア 52 2021年4月8日
トルコの旗 トルコ 47 2021年3月31日
ガーナの旗 ガーナ 38 2021年4月4日
ウガンダの旗 ウガンダ 37 2021年5月12日
南スーダンの旗 南スーダン 36 2021年4月3日
フィンランドの旗 フィンランド 25 2021年4月9日
トーゴの旗 トーゴ 25 2021年2月25日
ポルトガルの旗 ポルトガル 24 2021年6月11日
バングラデシュの旗 バングラデシュ 18 2021年6月15日
オーストリアの旗 オーストリア 17 2021年4月30日
イスラエルの旗 イスラエル 17 2021年5月18日
日本の旗 日本 17 2021年6月2日
オーストラリアの旗 オーストラリア 15 2021年5月31日
ケニアの旗 ケニア 13 2021年4月30日
マルタの旗 マルタ 13 2021年6月21日
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 13 2021年5月26日
コートジボワールの旗 コートジボワール 10 2021年2月25日
ポーランドの旗 ポーランド 10 2021年3月14日
シンガポールの旗 シンガポール 10 2021年4月27日
スウェーデンの旗 スウェーデン 8 2021年4月14日
アンゴラの旗 アンゴラ 7 2021年4月16日
カメルーンの旗 カメルーン 7 2021年3月2日
ニジェールの旗 ニジェール 6 2021年4月1日
フィリピンの旗 フィリピン 6 2021年3月24日
ギニアの旗 ギニア 5
インドネシアの旗 インドネシア 5 2021年5月5日
クウェートの旗 クウェート 5 2021年6月5日
ルワンダの旗 ルワンダ 5 2021年1月28日
コスタリカの旗 コスタリカ 4 2021年3月28日
レユニオン 4 2021年5月25日
マレーシアの旗 マレーシア 3 2021年3月27日
マリ共和国の旗 マリ 3 2021年4月4日
ギリシャの旗 ギリシャ 2 2021年4月9日
グアドループの旗 グアドループ 2 2021年3月11日
ヨルダンの旗 ヨルダン 2 2021年1月7日
マヨット島の旗 マヨット島 2 2021年3月29日
カタールの旗 カタール 2 2021年4月15日
ロシアの旗 ロシア 2 2021年5月11日
大韓民国の旗 韓国 2 2021年2月26日
タイ王国の旗 タイ 2 2021年3月1日
アルゼンチンの旗 アルゼンチン 1 2021年5月4日
ベラルーシの旗 ベラルーシ 1 2021年3月22日
ブラジルの旗 ブラジル 1 2021年2月15日
エストニアの旗 エストニア 1 2021年3月29日
ガボンの旗 ガボン 1 2021年3月30日
ガンビアの旗 ガンビア 1
ラトビアの旗 ラトビア 1 2021年4月26日
モロッコの旗 モロッコ 1 2021年3月2日
セネガルの旗 セネガル 1 2021年5月11日
スリランカの旗 スリランカ 1 2021年4月28日
チュニジアの旗 チュニジア 1 2021年3月5日
アルメニアの旗 アルメニア 3 2021年8月5日
ブータンの旗 ブータン 1
ジブラルタルの旗 ジブラルタル 2
キルギスの旗 キルギス 16 2021年6月17日
世界(71カ国) 合計:7,129 2021年8月27日現在の合計

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d “Tracking SARS-CoV-2 variants” (英語). who.int. World Health Organization. 2021年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月29日閲覧。
  2. ^ 新型コロナウイルス感染症(変異株)の患者等の発生について - 厚生労働省 (2021年9⽉24⽇) 、2021年9月29日閲覧。
  3. ^ “当センターにおける新型コロナウイルス変異株のスクリーニング検査結果について(2021年10月12日更新)”. 東京都健康安全研究センター. 2021年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月13日閲覧。
  4. ^ a b “GISAID hCOV19 Variants (see menu option 'G/484K.V3 (B.1.525)')”. gisaid.org. GISAID. 2021年3月4日閲覧。
  5. ^ a b “Status for udvikling af SARS-CoV-2 Variants of Concern (VOC) i Danmark” (Danish). Statens Serum Institut (2021年2月27日). 2021年2月27日閲覧。
  6. ^ a b “B.1.525”. cov-lineages.org. Pango team. 2021年3月22日閲覧。
  7. ^ a b “新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告”. 厚生労働省. (2021年6月8日). https://www.forth.go.jp/topics/20210611.html 2021年10月2日閲覧。 
  8. ^ “Delta-PCR-testen” (Danish). Statens Serum Institut (2021年2月25日). 2021年2月27日閲覧。
  9. ^ “Spike Variants: Eta variant, aka B.1.525”. covdb.stanford.edu. Stanford University Coronavirus Antiviral & Resistance Database (2021年7月1日). 2021年7月5日閲覧。
  10. ^ “変異ウイルス「イータ株」、入国検疫で18人確認…「カッパ株」も19人”. 読売新聞オンライン. (2021年9月10日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20210910-OYT1T50031/ 2021年9月12日閲覧。 
  11. ^ “GISAID - hCov19 Variants”. gisaid.org. GISAID. 2021年7月2日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • Tracking SARS-CoV-2 variants(英語) - 世界保健機関 (WHO)
  • Variants of the Virus(英語) - アメリカ疾病予防管理センター (CDC)
  • Lineage B.1.525/Global Lineage Reports B.1.525(英語) - Cov-Lineages
  • Eta Variant Report(英語) - outbreak.info
  • 新型コロナウイルス感染症について - 厚生労働省
    • 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料 変異株 - 厚生労働省
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報 - 国立感染症研究所
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)
SARSコロナウイルス2
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