名鉄スカーレット

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名鉄スカーレット
 
16進表記 #C00029
RGB (192, 0, 41)
マンセル値 5.7R 3.9/14.9
出典 「名鉄車両 -音と色-」 p.233
名鉄スカーレット色の6000系電車

名鉄スカーレット(めいてつスカーレット)は、名古屋鉄道(名鉄)が保有する鉄道車両の車体塗色として用いられる通称である。スカーレットレッドとも称される[1]

マンセル値は 5.7R 3.9/14.9 で[2]日本国有鉄道制定色赤11号や、JIS慣用色のスカーレットに対して、明度彩度は類似しているが、赤11号のマンセル値である7.5R 4.3/13.5と比較すると、やや赤紫に寄った色相である。

当初は1961年昭和36年)に導入された7000系「パノラマカー」の専用塗装として採用され、1970年代中盤以降に名鉄保有車両の標準塗装として一時は全車に普及、「名鉄=赤い電車」と印象付けるイメージカラーとなった。

沿革

名鉄スカーレットは、日本国内向けの鉄道車両において初めて本格的な前面展望席を設けた7000系「パノラマカー」の設計に際して考案された塗色である[3]。考案者は名古屋市在住の洋画家である杉本健吉とされるが[4]、元名鉄社員で鉄道研究家の清水武によると、杉本による7000系車体塗色案は「若草色」と呼ばれる薄緑色であり[3][* 1]、名鉄スカーレットは名鉄車両部より発案されたものであったとする[3]。若草色案と名鉄スカーレット案は平行して稟議され、最終的に名鉄スカーレット案が7000系の車体塗色として本採用となり、杉本も落成した7000系の現車を見て「これはいいね」と評したという[3]。当初はスカーレットの塗料が日本国内で調達できなかったため、フランスデュポン社より塗料を輸入して7000系の車体塗装に用いた[3]。なお、後に塗料は国内での生産開始に伴って国産品に切り替えられている[3]

名鉄スカーレットは7000系および派生形式である7500系の専用塗装であったが、1968年(昭和43年)より「SR車」と通称されるカルダン駆動車各形式(初代5000系・5200系・5500系)が名鉄スカーレット1色塗装へ順次塗装変更され[5]、その後導入された他形式にも順次普及した[6]。さらに、1975年(昭和50年)の3880系導入を機に[7]、それまでの名鉄においては用途・車内設備の別によって複数の車体塗装が併用されていたのを改め[* 2]、名鉄スカーレットを名鉄の保有する鉄軌道車両の標準塗装とする方針が策定され[7]、1979年(昭和53年)までに電気機関車など一部の例外を除いて全車が名鉄スカーレット1色塗装で統一された[10][* 3]

1980年代中盤以降、8800系「パノラマDX」1000系「パノラマスーパー」など、車体の基調色をアイボリー系ないしホワイト系とした優等列車用各形式が導入されたが[2]、帯色には引き続き名鉄スカーレットが用いられた[2]2000年代以降、一般列車用車両の車体が従来の普通鋼製から無塗装ステンレス鋼製に設計変更された後も、名鉄スカーレットは帯色として採用され[2]2009年平成21年)現在、中部国際空港へのアクセス特急「ミュースカイ」専用車両として青系の特別塗装が採用された2000系[2]を除く全車両[* 4]に広く用いられている[2]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 若草色案について、清水は「(杉本の案は)戦前の名鉄における代表形式である3400系「流線」に採用された、緑の濃淡塗装を念頭に置いたものではなかったか」と推測している[3]
  2. ^ 統一以前の名鉄保有車両は、パノラマカーおよびSR車の名鉄スカーレット1色塗装[6]のほか、ロングシート仕様のAL車がダークグリーン1色塗装[8]、クロスシート仕様のAL車とHL更新車(3700系列)がストロークリーム地に赤帯[8][9]、直流600 V電化区間用車両がグリーン1色塗装[9]といった具合に、複数の塗り分けが混在していた。
  3. ^ 電気機関車各形式のほか、モノレール車両のMRM100形高山本線直通の特急「北アルプス」気動車キハ8000系などが名鉄スカーレット1色塗装化の対象外とされた[10]。ただし、MRM100形は車体をアルミ合金製とした無塗装車であり[11]、落成当初から帯色には名鉄スカーレットが用いられた[2]
  4. ^ その他、2000年(平成12年)から2006年(平成18年)にかけて在籍した美濃町線用低床車両のモ800形(2代)が、車体塗色に名鉄スカーレットを用いない専用塗装を採用した[12]

出典

  1. ^ 「名古屋鉄道9500系」 (2020) p.114
  2. ^ a b c d e f g 「名鉄車両 -音と色-」 (2009) pp.232 - 233
  3. ^ a b c d e f g 「パノラマカーに思うこと」 (2008) pp.10 - 11
  4. ^ 「パノラマカーの誕生まで -試行錯誤の前面形状-」 (2008) p.41
  5. ^ 「名車の軌跡 ラビットランナー5000系物語」 (1986) p.163
  6. ^ a b 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 1」(1971) p.77
  7. ^ a b 『RM LIBRARY130 名鉄岐阜線の電車 -美濃電の終焉(下)』 p.33
  8. ^ a b 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 1」(1971) p.80
  9. ^ a b 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 2」(1971) pp.58 - 59
  10. ^ a b 「私鉄車両めぐり(115) 名古屋鉄道」 (1979) p.92
  11. ^ 「私鉄車両めぐり(133) 名古屋鉄道」 (1986) p.198
  12. ^ 「名古屋鉄道 現有車両プロフィール2005」 (2006) pp.250 - 251

参考文献

書籍

雑誌記事

  • 鉄道ピクトリアル鉄道図書刊行会
    • 渡辺肇・加藤久爾夫 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 1」 1971年1月号(通巻246号) pp.77 - 84
    • 渡辺肇・加藤久爾夫 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 2」 1971年2月号(通巻247号) pp.58 - 65
    • 藤野政明・渡辺英彦 「私鉄車両めぐり(115) 名古屋鉄道」 1979年12月臨時増刊号(通巻370号) pp.92 - 106
    • 徳田耕一 「名車の軌跡 ラビットランナー5000系物語」 1986年12月臨時増刊号(通巻473号) pp.157 - 165
    • 吉田文人 「私鉄車両めぐり(133) 名古屋鉄道」 1986年12月臨時増刊号(通巻473号) pp.185 - 198
    • 外山勝彦 「名古屋鉄道 現有車両プロフィール2005」 2006年1月臨時増刊号(通巻771号) pp.203 - 252
    • 清水武 「パノラマカーに思うこと」 2008年12月号(通巻812号) pp.10 - 17
    • 白井昭 「パノラマカーの誕生まで -試行錯誤の前面形状-」 2008年12月号(通巻812号) p.41
    • 中山嘉彦 「名鉄車両 -音と色-」2009年3月臨時増刊号(通巻816号) pp.230 - 233
    • 中井祐輔 「名古屋鉄道9500系」2020年2月号(通巻969号) pp.114 - 119

関連項目

  • スカーレット (スキマスイッチの曲) - この色名に因んだタイトルの楽曲
名古屋鉄道のロゴマーク 名古屋鉄道車両
  • 現有車両
特急型電車
VVVF車
SR系高性能電車
通勤型電車
VVVF車
SR系高性能電車
新造車
機器流用車
  • 5000系II
地下鉄
乗入用電車
鶴舞線
上飯田線
機関車
電気機関車
貨車
長物車
ホッパ車
  • 過去の車両
特急型電車
VVVF車
新造車
機器流用車
SR系
高性能電車
新造車
機器流用車
1500V線区
鉄道線用電車
SR系
高性能電車
新造車
機器流用車
AL系
吊り掛け駆動車
引継・新造車
機器流用車
譲受車
HL系
吊り掛け駆動車
引継・新造車
機器流用車
譲受車
600V線区
鉄道線用電車
4輪単車
引継・新造車
機器流用車
2軸ボギー車
引継・新造車
機器流用車
譲受車
連接車
改造車
600V線区
軌道線用電車
4輪単車
引継・新造車
機器流用車
譲受車
  • モ90形II
2軸ボギー車
引継・新造車
譲受車
連接車
新造車
譲受車
気動車
蒸気動車
譲受車
ガソリンカー
引継車
ディーゼルカー
優等列車用
軽快気動車
機関車
電気機関車
ディーゼル機関車
ガソリン機関車
蒸気機関車
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有蓋車
荷物車
貨車
有蓋車
有蓋緩急車
通風車
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ホッパ車
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散水車
モノレール
  • 関連項目
1941年改番以降の形式称号を掲載。「引継車」は名岐鉄道および被合併会社から継承した車両。「譲受車」は被合併会社以外から購入・譲受した車両。