北口榛花

北口 榛花 Portal:陸上競技
セイコーゴールデングランプリ陸上2015
選手情報
ラテン文字 Haruka Kitaguchi
国籍 日本の旗 日本
競技 陸上競技
種目 やり投砲丸投
所属 日本航空
大学 日本大学
生年月日 (1998-03-16) 1998年3月16日(26歳)
出身地 北海道旭川市
居住地 東京都
身長 179cm
体重 86kg
成績
オリンピック やり投げ:12位(2021年)
世界選手権 やり投:優勝(2023年
国内大会決勝 日本選手権
やり投:優勝(2019年2021年2022年
最高世界ランク 1位(2022年8月14日時点)
自己ベスト
砲丸投 14m06
やり投 67m38 日本記録
獲得メダル
世界陸上
2023 ブダペスト やり投
2022 オレゴン やり投
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北口 榛花(きたぐち はるか、1998年〈平成10年〉3月16日 - )は、日本の女子陸上競技選手。専門種目はやり投

やり投の女子日本記録保持者。オリンピック及び世界陸上競技選手権の陸上女子フィールド種目における日本人唯一のメダル獲得者。

来歴

2023年世界選手権において金メダルを獲得した北口

北海道旭川市生まれ。3歳の時に水泳を始め、北海道教育大学附属旭川小学校時代には全国小学生バドミントン選手権大会で団体優勝を飾った[1](山口茜との対戦経験もある)。北海道教育大学附属旭川中学校時代までは競泳バドミントンの二足のわらじであり、競泳では全国大会にも出場した[2]北海道旭川東高等学校進学とともにクラブ顧問の松橋昌巳(現:北翔大学コーチ)に誘われて陸上競技を始める。やり投を始めてわずか2か月で北海道大会を制覇し、2年生の時には全国高等学校総合体育大会陸上競技大会で優勝した[3]

2015年1月には、2020年東京オリンピック代表選手候補に期待される日本陸上競技連盟の「ダイヤモンドアスリート」に認定された[4]。2015年7月、コロンビアカリで開催された第9回世界ユース陸上競技選手権大会では女子主将をつとめ[5]、女子やり投(500g)で60m35を投げて金メダルを獲得した。

2016年4月、日本大学スポーツ科学部競技スポーツ学科に入学。大学生として迎えた同年5月8日のゴールデングランプリ川崎(川崎市 等々力陸上競技場)では、日本歴代2位となる61m38を記録して3位。6月の日本選手権直前に右肘靱帯を損傷するも、翌年には痛みがなくなるまで回復した[6]

2017年9月の第86回日本学生陸上競技対校選手権大会福井運動公園陸上競技場)では、最終6投目で60m49を投げて大会新記録を樹立して優勝した[7]

コーチがいない状態が続いていたが、2018年11月、フィンランドでのやり投の国際講習会の際にチェコのジュニアコーチをしていたデイビッド・セケラックの指導方法に興味を持ち、英語が不慣れながらもメール等で交渉[8]。熱意が通じ、2019年2月から1か月間、単身チェコへ渡って指導を受けた[9]。以降もセケラックから指導を受けるため、北口はチェコ語を勉強している[8][10]

2019年5月の第6回木南道孝記念陸上競技大会(ヤンマースタジアム長居)では、4投目に63m58を投げて日本歴代2位を記録すると、続く5投目には海老原有希が保持していた63m80を50cmもオーバーする日本新記録・アジア歴代5位となる64m36を投げて優勝した[11]。この記録でオリンピック参加標準記録である64m00を突破した。同年6月の日本選手権では大会記録を更新する63m68を投げ、初優勝を飾った。秋には世界選手権に出場するも、ここではわずか6cm差で予選落ちに終わった。10月の北九州陸上カーニバル(北九州市立本城陸上競技場)で66m00を投げ日本記録を更新した。

2020年4月、日本航空に入社[12]同年の日本選手権ではコロナ禍の調整不足もあって連覇を果たせず、優勝を佐藤友佳に譲った[13]。しかし、東京オリンピック代表の最終選考会を兼ねた翌年の日本選手権では、61m49を投げて2年ぶりに優勝し、日本代表に内定した[14]

2021年8月3日、東京オリンピックの陸上競技・女子やり投予選の1投目で62m06を記録し、6位で決勝進出を決める。オリンピックでの女子日本選手による60m超えの投てきは北口が初めて記録したものであり、同種目の日本選手決勝進出は1964年の東京オリンピック佐藤弘子片山美佐子以来57年ぶりの快挙であった[3]。また、好記録を出したことによって、笑顔で走りながら飛び跳ねて大喜びする様を見せ、「こちらも笑顔になる」「チャーミング」などとSNS上で反響を呼んだ[15]。しかし、予選終了後から左脇腹に痛みが出て練習もままならず、痛みを押して6日の決勝に出場するも55m42の記録で12人中12位[16]。佐藤以来の入賞とはならず[8]、決勝後は笑顔の代わりに涙を見せた[16]

2022年6月18日、万達ダイヤモンドリーグ第7戦「Meeting Paris」女子やり投げにて優勝した。ダイヤモンドリーグでの優勝は日本史上初の快挙である[17]

2022年7月21日に行われたオレゴン世界選手権大会で女子やり投げ予選Bグループに登場した北口は1投目に64m32の大投てきを見せ全体トップで決勝進出を果たすと、続く22日の決勝では最終投てきで63m27を投げて第3位に入り、日本の陸上女子フィールド種目で戦前戦後を通してオリンピック・世界選手権で史上初となる銅メダルを獲得した[18]

さらに、翌年の2023年8月23日に行われたブダペスト世界選手権大会では、女子やり投げ予選Aグループに登場し、2投目に63m27を投げて第2位で決勝に進出すると、8月26日の決勝の最終投てきで66m73の大投てきを見せ、日本の陸上女子フィールド種目でオリンピック・世界選手権を通して史上初となる金メダル[注 1]を獲得したと同時に、昨年のオレゴン大会の銅メダルに続き、2大会連続メダルを獲得した。世界陸上で2大会連続でメダルを獲得したのは、男子ではハンマー投室伏広治、20km競歩山西利和、4×100m・桐生祥秀&多田修平、35km競歩・川野将虎に次ぐ、6人目かつ女子では史上初となった[19][20]

また北口は2023年世界選手権の優勝で日本陸上競技連盟(JAAF)の規定により2024年パリオリンピック日本代表選手に内定した[19]

エピソード

父はアートホテル旭川で製菓料理長を務めるパティシエで、娘が誕生した際、先に決めた「はるか」の読みに合う字を探し、ヘーゼルナッツを指す「榛(ハシバミ)」の字を使い「榛花」と名付けた[21]。 2019年に66m00を投げ日本記録を更新した際には、父が名前の由来となったヘーゼルナッツを使ったケーキを作り祝っている[22]

母は女子バスケットボールの強豪である実業団の共同石油(現・ENEOSサンフラワーズ)の選手だった[23]

プライベートで観戦に訪れるほどのバスケットボール女子日本リーグ「Wリーグ」の大ファンで、特に母の古巣チームでもあるENEOSサンフラワーズを応援し、中学生の頃から試合では必ずサンフラワーズのタオルを使っている。2022年10月には「Wリーグ」の開幕戦トヨタ自動車アンテロープス対ENEOSサンフラワーズ戦(代々木第二体育館)にゲストとして招かれ、試合前のTIP OFFセレモニーに登場した[24]

甘党で、好物はカステラ大福[25]

クイズ番組が好きで、QuizKnockの人気企画「朝からそれ正解![26]」の「『や』で始まる参考になるものといえば?」のお題で「やり投げ」という答えが出たことに感動し、「ほんとに感動です。ありがとうございます。」とツイートしている[27]

自己ベスト

種目 記録 年月日 場所 備考
やり投 67m38 2023年9月8日 ベルギーの旗ブリュッセル 日本記録
やり投(500g) 60m35 2015年7月16日 コロンビアの旗 カリ
砲丸投 14m20 2015年5月5日 日本の旗 旭川市
円盤投 40m93 2015年9月5日 日本の旗 旭川市

主な競技会での記録

やり投

  • 第67回全国高等学校総合体育大会(山梨)(600g)52m16 優勝(2014年7月31日)
  • 第8回日本ユース選手権大会(愛知瑞穂)(600g)52m16 優勝(2014年10月3日)
  • 第69回国民体育大会(長崎)(600g)53m15 優勝(2014年10月21日)
  • 第9回世界ユース陸上競技選手権大会(コロンビア カリ)(500g)60m35 優勝(2015年7月16日)
  • 第68回全国高等学校総合体育大会(和歌山)(600g)56m59 優勝(2015年7月30日)
  • 第70回国民体育大会(和歌山)(600g)57m02 大会新 優勝(2015年10月4日)
  • 第31回日本ジュニア陸上競技選手権大会(愛知瑞穂)(600g)58m90 大会新・日本高校新 優勝(2015年10月16日)
  • 第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(福井県営)(600g)60m49 大会新 優勝(2017年9月8日)
  • 第72回国民体育大会(愛媛)(600g)61m07 大会新 優勝(2017年10月8日)
  • 第87回日本学生陸上競技対校選手権大会(神奈川)(600g)60m48 優勝(2018年9月8日)
  • 第73回国民体育大会(福井)(600g)58m83 優勝(2018年10月7日)
  • 第41回北九州陸上カーニバル(福岡)(600g)66m00 優勝(2019年10月27日)
  • 第18回世界陸上競技選手権大会(オレゴン)63m27 第3位(2022年7月23日)
  • 第19回世界陸上競技選手権大会(ブダペスト)66m73 優勝(2023年8月26日)

砲丸投

  • 第67回全国高等学校総合体育大会(山梨)12m20(2014年8月3日)
  • 第69回国民体育大会(長崎)13m02(2014年10月20日)
  • 第68回全国高等学校総合体育大会(和歌山)13m46(2015年8月2日)

受賞

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 尚、世界陸上競技選手権大会に於いて女子マラソンで浅利純子ダイハツ)が1993年大会を、鈴木博美が1997年大会をそれぞれ制覇して金メダルを獲得している。

出典

  1. ^ “文武両道かつスポーツ万能。やり投・北口が世界に挑む。~バドミントンでは全国優勝も~(矢内由美子)”. Number Web - ナンバー. 2022年7月22日閲覧。
  2. ^ 【コラム】やり投金メダリスト・北口榛花 水泳、バドミントン、リレー…高校時代までに培った運動神経と順応力、試合の経験値
  3. ^ a b “北口榛花が決勝進出!「大はしゃぎして反省してます」女子やり投げで57年ぶり快挙”. デイリースポーツ online. (2021年8月3日). https://www.daily.co.jp/olympic/tokyo2020/2021/08/03/0014559437.shtml 2021年8月4日閲覧。 
  4. ^ 2020東京オリンピック「ダイヤモンドアスリート」を認定! - 日本陸上競技連盟公式ホームページ
  5. ^ 2020年東京オリピックの主役たちが世界に挑みます! - 日本陸上競技連盟Facebook
  6. ^ “やり投げ北口榛花6位 昨年靱帯損傷も「痛みない」”. 日刊スポーツ. (2017年4月30日). https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/1815719.html 2021年8月23日閲覧。 
  7. ^ 女子やり投決勝 天皇賜盃 第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本学生陸上競技連合)
  8. ^ a b c “やり投げ北口榛花12位、57年ぶり決勝も上位8人の4回目以降に進めず”. 日刊スポーツ. (2021年8月6日). https://www.nikkansports.com/olympic/tokyo2020/athletics/news/202108060000898.html 2021年8月23日閲覧。 
  9. ^ “北口榛花がドーハ世陸で見せた涙。チェコ修行と、届かなかった6cm。”. Number. 2020年3月11日閲覧。
  10. ^ 2023年ブダペスト世界選手権ではインタビューで日本語、英語と併せてチェコ語でも応対している。
  11. ^ “北口榛花やり投げ日本新 衝撃の一投50㎝超更新”. ニッカンスポーツ・コム. 日刊スポーツ新聞社. (2019年5月6日). https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/201905060000247.html 2019年5月6日閲覧。 
  12. ^ “女子やり投げ北口榛花「プロ意識を持ち」社会人生活”. nikansports.com. (2020年4月12日). https://www.nikkansports.com/olympic/tokyo2020/athletics/news/202004110000356.html 
  13. ^ “女子やり投 決勝”. jaaf. 2021年4月4日閲覧。
  14. ^ “やり投げ・23歳北口榛花、五輪内定大会1号! 60m超え3連発Vに笑顔満開「ホッとした」”. THE ANSWER. (2021年6月25日). https://the-ans.jp/news/168988/ 2021年8月4日閲覧。 
  15. ^ “やり投げ北口榛花の笑顔にSNS反響「かわいい」「元気をもらえる」”. 日刊スポーツ. (2021年8月3日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202108030001292.html 2021年8月4日閲覧。 
  16. ^ a b “北口榛花、左脇腹痛で涙 女子やり投げ決勝で12位/陸上”. サンスポ. (2021年8月6日). https://www.sanspo.com/article/20210806-NTQSB63Y4NNEJKCFXQ6NCKQAKA/?outputType=theme_tokyo2020 2021年8月23日閲覧。 
  17. ^ "【陸上】やり投げ北口榛花、最高峰DLで初出場V「日本人初のようでうれしい」". Sponichi Annex. スポーツニッポン新聞社. 19 June 2022. 2022年6月19日閲覧
  18. ^ "【世界陸上】やり投げ北口榛花が銅メダル!最終6投目で逆転 投てき種目で日本女子初メダル快挙". ニッカンスポーツ・コム. 日刊スポーツ新聞社. 23 July 2022. 2022年7月23日閲覧
  19. ^ a b "北口榛花が金メダル 世界陸上女子やり投げ パリ五輪代表第1号". 産経ニュース. 産経デジタル. 26 August 2023. 2023年8月26日閲覧
  20. ^ “世界陸上、北口榛花が女子やり投げ「金」…最終6投目のビッグスローで逆転”. 読売新聞オンライン (2023年8月26日). 2023年8月25日閲覧。
  21. ^ 【世界陸上】銅メダル獲得の北口榛花 パティシエの父も感激「何か好きなもの、ケーキでも作ってあげたい」
  22. ^ 北口榛花 Twitter
  23. ^ 女子やり投げ・北口 今大会五輪切符1号!日本記録保持者が貫禄、2年ぶり優勝
  24. ^ 北口榛花「大ファン」バスケWリーグ開幕戦に登場「アピールしてきてよかった」
  25. ^ 【世界陸上】女子やり投げ北口榛花が銅メダル!高校入学後1年間は競泳と二刀流/アラカルト
  26. ^ 東大生1人で朝からそれ正解!【#23】
  27. ^ 北口榛花 Twitter
  28. ^ “侍ジャパンが大賞を獲得 大谷翔平 殊勲賞受賞 、WBCのMVPに始まりMLBで11冠、2023年ラストも表彰締め”. TBS NEWS DIG (2023年12月21日). 2023年12月21日閲覧。

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、北口榛花に関連するカテゴリがあります。
日本の旗日本陸上競技選手権大会 女子やり投優勝者
1920年代
  • 29 吉田艶子
1930年代
1940年代
1950年代
1960年代
  • 60 阿部藤江
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